FIFAは巨大な権力を握る帝国だ

ブラジルで開催されている2014年FIFAワールドカップ。世界中が釘付けになっているが、サッカーをよく知らない人にとっては首を傾げることも少なくない。
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Flags of the World Soccer Association FIFA are seen in front of it's headquarter in Zurich, on October 20, 2010. FIFA has summoned senior Nigerian and Oceanian officials Amos Adamu and Reynald Temarii to a committee meeting on Wednesday which is investigating allegations of votes being sold in World Cup bidding. AFP PHOTO / SEBASTIAN DERUNGS (Photo credit should read SEBASTIAN DERUNGS/AFP/Getty Images)
SEBASTIAN DERUNGS via Getty Images

ブラジルで開催されている2014年FIFAワールドカップ。世界中が釘付けになっているが、サッカーをよく知らない人にとっては首を傾げることも少なくない。

たとえば、サッカーには特有の慣例がある。試合の終了時間を知っているのは審判だけだし、選手はケガをすると、時間を稼いでひと休みできるよう大げさなリアクションを示す場合がある

それに加えて、サッカーの主要大会を運営する「国際サッカー連盟」(FIFA)という組織も独特だ。いまから110年前の1904年、ごく小さなボランティア組織として誕生したFIFAは、その後、巨大な複合的組織へと成長した。財務報告書(PDF)を見る限り、その規模は国家並みだ。以下に詳細を紹介しよう。

1)FIFAが2014年ワールドカップで得る収益は、マルタ共和国の歳入より大きい

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マルタ共和国の港。 (Sascha Steinbach/Getty Images)

FIFAは2014年ワールドカップで、テレビの放映権ならびに販売権で45億ドルの売上を得ると見られている。世界銀行のデータを参考にすれば、この額は、地中海の小国であるマルタ共和国(人口約40万人)の2012年歳入総額を10億ドルも上回っている。

これだけの収益をあげながら、FIFAは、ワールドカップ開催国から寛大な税優遇措置も受けている。CNNの記事によれば、こうした税優遇措置の結果、ブラジルの国税局は2億4870万ドルの税収減になると発表したという。

2)FIFA会長は、アルジェリアやロシアの大統領よりも長く権力の座に居座っている

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FIFAのゼップ・ブラッター会長は今年78歳。会長に就任したのは1998年6月8日で、第16回ワールドカップ・フランス大会が開幕する数日前だった。

2011年の会長選では対立候補がおらず、信任投票で4度目の再選を果たし、4期目を最後に引退すると公言していた。ところが同氏はその後考えを変え、2015年には5期目を目指して立候補する考えを示している。

今回のワールドカップ直前に開催されたFIFA年次総会では、「FIFA幹部に対する定年ならびに任期期限の導入」という改革案が提案されたが、否決された。つまり、ブラッター氏は理論上、永遠にFIFAの会長職にとどまれるわけだ。

ブラッター会長は、アラブの春を生き抜いた77歳のアルジェリアの独裁者、アブデルアズィーズ・ブーテフリカ大統領よりも長い間、権力の座についている。また、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領よりも在任期間が長い。プーチン大統領は2000年に初当選したが、ロシアの憲法では3期連続で大統領職を務めることができないため、大統領職を4年間離れて首相となり、2012年に再び大統領に返り咲いている。

3)FIFA女性理事の数は、ソマリアの女性閣僚の数より少ない

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2013年12月2日、ソマリアの首都モガディシュの国会で決議がとられる様子(Mohamed Abdiwahab/AFP/Getty Images)

FIFAは2013年5月、初の女性理事として、(ブルンジのサッカー協会会長である)リディア・ヌセケラ氏を選出した。同年にはほかにも2名の女性が臨時理事として選出されたが、議決権は持たなかった。ヌセケラ氏は、絶大な権力を持つ25名のFIFA理事の中で唯一の女性メンバーだ。

一方、国連ウィメン(ジェンダーフリーと女性のエンパワーメントのための国連機関)と列国議会同盟が共同発表した2014年の報告(英文PDF)によると、内紛が続くソマリアでは、政府の全閣僚25名中、女性は2名だけだという。オマーンとバングラデシュも、全閣僚30名のうち女性は2名だけだ。

4)FIFAはオーストラリアより3歳若い

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1901年1月、シドニーで開催された建国の儀式。(Hulton Archive/Getty Images)

イギリス国会は1901年、オーストラリアの6つの植民地が、イギリスを君主国としたオーストラリア連邦を建国することを認めた。パリでFIFAが創立されたのはそれからわずか3年後だ。

当初の加盟国は、ヨーロッパ7カ国(フランス、ベルギー、デンマーク、オランダ、スペイン、スウェーデン、スイス)だった(ドイツは創立当日に電報で加盟の意思を伝えた)。

5)FIFA加盟国の数は、国連加盟国より多い

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2012年11月の国連総会の様子 (Spencer Platt/Getty Images)

「サッカーの国連」を自認するFIFAの加盟国数は208カ国。国連に加盟する193カ国より多い。BBCの報道によると、国連加盟国のうちFIFAに所属していないのは、バチカン市国やモナコ公国などの8カ国のみだ。

6)FIFAの幹部は、ベルルスコーニ元首相よりも多額の賄賂を使ったと報道されている

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FIFAの元理事モハメド・ビン・ハマム(写真左)と、イタリアのベルルスコーニ元首相(Getty Images)

英紙「サンデー・タイムズ」が入手した資料によると、FIFAの元理事でアジアサッカー連盟会長も務めていたカタール人、モハメド・ビン・ハマム氏は、2022年ワールドカップのカタール招致に向けた票固めのため、2010年に総額500万ドルを国際サッカー関係者に贈っていたとされる(ハマム氏は、2011年FIFA会長選でも買収嫌疑があり、2011年6月から職務停止処分。スポーツ仲裁裁判所で争われたが、2012年に改めて永久活動停止処分となった)。

カタール招致のための一連の買収事件で動いたお金の総額は、イタリアで裁判が進行中のシルヴィオ・ベルルスコーニ元首相が払った賄賂の額よりも大きい。

ベルルスコーニ元首相は昨年、脱税で有罪判決を受けたほか、2006年に自分の政党に入党させるために政治家1名に対し300万ユーロ(およそ400万ドル)の賄賂を渡した容疑などで、3つの訴訟が進行中だ。

[Charlotte Alfred(English) 日本語版:遠藤康子、合原弘子/ガリレオ]

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