東京レインボープライド、初のオンライン開催へ。「2020年はSNSを虹色に染めたい」

新型コロナの影響で中止になっていた日本最大級のLGBTQイベントが、オンラインで開催されます。パレードは誰でも参加可能。イベントには水原希子さんやりゅうちぇるさんも出演します
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2019年のパレード
Takashi Aoyama via Getty Images

新型コロナウイルスの影響で中止が発表されてから約1カ月。日本最大級のLGBTQイベント「東京レインボープライド(TRP)2020」が、オンラインで開催されることが発表された。        

毎年GW期間中に、東京・代々木公園で開催されてきたイベントが、2020年は場所をオンラインに変えて人々をつなげる。 

TRP共同代表理事の杉山文野さんと山田なつみさんは「大勢の人たちからの、開催して欲しいという言葉に背中を押された」と話す。 

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山田なつみさん(左)と杉山文野さん
東京レインボープライド提供

「愛されているイベントだ」と改めて実感した

イベントはオンラインパレードとトークライブで、4月25日と26日に開催する。

■パレード🏳️‍🌈

・4月26日(日)13:00~16:00

SNSで開催、誰でも参加可能。

参加方法:好きなSNS(Twitter、Instagram、Facebook)に、「#TRP2020」「#おうちでプライド」を付け、メッセージとあなたが思うレインボーの画像を付けて投稿する

■トークライブ🎤

・4月25日(土) 14:00~18:00
・4月26日(日) 12:00~16:00

TRPの公式Twitterで配信される。

<ゲスト>

25日:秋元才加さん、⼄武洋匡さん、さかいゆうさん、為末⼤さん、天道清貴さん、中村 中さん、八方不美人さん、広海深海さん、古⽥大輔さん、ミッツ・マングローブさん、MEGUMIさん
26日:菅大介さん、長谷部健さん、MISIAさん、水原希子さん、りゅうちぇるさん

TRPの中止が発表されたのは、3月19日。その直後から、中止を残念がる声がたくさん届いたと山田さんは話す。  

「発表後すぐに、みなさんから落胆する声や残念ですという声を、たくさんいただきました。予想をはるかに超えるリアクションの量だったのでびっくりすると同時に、このイベントがたくさんの人に必要とされ、愛されていたんだなと改めて実感しました」

中止発表後は、TRP主催者チームはショックでしばらく「放心状態だった」と山田さんは振り返る。

しかし次々と寄せられる「こういうことをやりたい」「TRPを応援するためにこんなキャンペーンをやりたい」といった参加者からの提案に後押しされた、と話す。 

「皆さんから『こういうのやりたいね』と逆に提案をいただいて、背中を押されました。そこから2週間という短い期間ではありましたが、本来のチームワークを発揮してオンラインイベントの企画、開催にこぎつけました」

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初のオンライン開催について話してくれた、山田さんと杉山さん

オンラインだからこそ、できることもある

代々木公園でのイベントが中止になったことを残念に思う一方で「オンラインだからこそできることがある」と、杉山さんは感じている。  

TRPの参加者は年々増えており、2019年には約20万人が参加した。その一方で、会場のキャパシティを考えると参加できる人数には限りがある。

「だけどオンラインであれば、100万人、200万人の方にアプローチできるかもしれません」と杉山さんは話す。 

またオンラインであれば、これまで様々な事情から代々木公園に来れなかった人たちにも、参加の可能性が広がる。

杉山さんたちの元には「東京まで足を運ぶのが難しいけれど、オンラインだったら車椅子でもベッドの上からでも、どこからでも参加できるというのがすごく嬉しい」という声も届いているという。

「これまでオフラインのイベントは結構やってきた自負はあるのですが、その一方でオンラインになかなか手が回っていませんでした。なので、2020年のオンラインイベントはTRPにとって、すごく良い機会だとも思っています」 

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2018年のプライドパレード
HuffPost Japan

“笑顔”や“幸せ”の発信を続けていいのだろうか…

企画にあたって悩んだのが、従来の東京レインボープライドで大切にしてきた「笑顔で祝福する」というコンセプトを、続けるかどうかだったという。

東京レインボープライドが目指すのは、すべての人が自分らしく、誇りをもって、前向きに楽しく生きていくことができる社会。

パレードでは、参加者たちが「ハッピープライド」と声を掛け合い、ハイタッチしたりハグをかわしたりして、お互いの存在を笑顔で祝福する。

ただ、新型コロナウイルスで感染者が広がり緊迫している2020年に、これまでのようにハッピーな感情を出すイベントにしていいのだろうか。大変な時に自分たちの権利を主張していいのだろうか。そう悩んだと杉山さんたちは話す。

最終的に、笑顔を届ける内容のイベントにしたのは「参加してくれる人たちが、何を求めているのだろう」と考えた末の結論だったという。

「すごく悩んだのですが、どんな状況下でも自分が自分らしくあるのは大事だ、と考えました。そしてこういう時だからこそ、つながりを持つことや一人じゃないということを伝える必要がある、とも思ったんです」と、杉山さんは説明する。

「人は、希望がないと生きていけないと思います。今、世界中の人たちが明日が見えない状況にあり、大変な思いをしています。そういう時にこそ、希望を見出して『TRPがあってよかった』と少しでも前向きになってもらえるような機会にしたいと思いました」 

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2019年のパレード
NurPhoto via Getty Images

 「#おうちでプライド」に込められた思い

パレードでは、参加者に「#TRP2020」に加えて「#おうちでプライド」というハッシュタグを付けて投稿してもらう。

しかし「stay at home(家にいよう)」と求められる今、必ずしもすべての人が家にいられるわけではない。家にいられない人も入れば、家がない人もいる。

杉山さんは、LGBTQ当事者の中には、家が安心できる場所ではない人もいると説明する。「#おうちでプライド」には、そんな家にいられない人や家で安心できない人たちへのエールも込められているという。

「LGBTQの人たちの中には、お家にいい思い出がない人たちもいます。カミングアウトしたら親に否定されて家を追い出された人や、カミングアウトした家族と関係性がうまくいかなくて、苦しんでいる子どもたちもいます」

「そういった子どもたちの中には、親がインターネットのアクセスを管理しているために情報につながれず、助けを求められない人もいる。かなり深刻な問題だと思っています」 

「だから、#おうちでプライドというハッシュタグには、そういったいろんな状況にいる人やお家にいられない人にもエールを送れるような企画にしたい、という気持ちが込められているんです」 

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2018年のパレード
Huffpost Japan

 また、苦しい状況に置かれている人たちの中には、多くの飲食店の経営者やそこで働く人たちもいる。山田さんは、今までTRPをサポートしてくれたお店の人のことも考えると、今回の「おうちでプライド」企画を足踏みする部分があったと語る。

「TRPは今まで、お店をやっていらっしゃる方たちにたくさんサポートしていただきました。今、お店をやっている方たちは、本当はお店に来て欲しいけれど開けない状態です。そんな時にお家で盛り上げようと言ってしまっていいのか……というジレンマもありました」

そこで、そういったお店の人たちをサポートするためにも、これまでやってきた「プライドウィーク」の広報協力は引き続き2020年も継続。4月25日〜5月6日の期間中に開かれるオンラインイベントを、ウェブサイト上で募集・紹介している。

「今、色々なお店がオンライン飲み会やオンライントークイベントを開催しています。そういったオンラインイベントをTRPのウェブサイト上で告知しています。今も募集していて、ここにイベントがどんどん追加されていきます」

「GW期間中はお家で過ごされる方も多いと思います。なので25、26日だけじゃなくて、プライドウィーク中もオンラインイベントで繋がって、楽しんでいただきたいです」

■プライドウィーク(4月25日〜5月6日)🌈
期間中ののイベント案内はこちら

SNSを虹色に染めたい

 オンラインでの開催を発表してから、多くの人から「本当に嬉しい」「どんな写真やメッセージをあげようかと考えている」といった喜びのメッセージが、たくさん届いているという。

山田さんは、一人一人の発信が実は誰かの助けになっているということを参加者に知って欲しい、と語る。

「もしかしたら、自分のやっているのは写真とメッセージを投稿することだけ、と思っている方もいらっしゃるかもしれません。でも実は、その発信がたくさんの人の助けになるんです。『一人じゃない』というメッセージにつながります。だからぜひ多くの方に参加して欲しいです」

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2017年のパレード
Barcroft Media via Getty Images

 杉山さんはこういう時にこそ、オンラインが幸せなメッセージで溢れる1日になって欲しいと話す。

「TRP2020のテーマは“Your happiness is my happiness(あなたの幸せは、わたしの幸せ)”です。ただ、今のような状況では特に、色々な人の幸せを考えられない、むしろそういうのをつらく感じることもあるかもしれません」

「だけど幸せはシェアしていれば、それがきっといつかは自分に返ってくると思います。だから、自分のハピネスと周りのハピネスは同じなんだ、ということを伝えたい。こんな時だからこそ気づいた小さな幸せもあると思うので、それをシェアして欲しいです」 

4月25日まであと2日。山田さん、杉山さんたちは最終準備に追われながらも、TRP初となるオンラインパレードとトークライブが、どうなるかを楽しみにしている。

「皆さん思い思いの写真をあげてくださると思うので、それを見るのが楽しみです。SNSが虹色に染まったらいいなという思いでやっています」  

2020年、世界的に流行した新型コロナウイルスは、LGBTQコミュニティにも大きな影響を与えています。「東京レインボープライド」を始めとした各地のパレードはキャンセルや延期になり、仲間たちと会いに行っていた店も今や集まることができなくなりました。しかし、当事者やアライの発信は止まりません。場所はオンラインに移り、ライブ配信や新しい出会いが起きています。

「私たちはここにいる」――その声が消えることはありません。たとえ「いつもの場所」が無くなっても、SNSやビデオチャットでつながりあい、画面の向こうにいる相手に思いを馳せるはずです。私たちは、オンライン空間が虹色に染まるのを目にするでしょう。

「私たちはここにいる 2020」特集ページはこちら。