育児で自分の時間がなくなる… パパ初心者の不安への処方箋とは?

安藤哲也さんに突撃インタビュー。「育児は社会を変えるという自覚を持って」とパパたちに訴えました。
(左から)村橋ゴローさん、NPO法人『ファザーリング・ジャパン』代表理事・安藤哲也さん
(左から)村橋ゴローさん、NPO法人『ファザーリング・ジャパン』代表理事・安藤哲也さん
安藤健二

ハフポスト日本版で育児ブログを執筆中の村橋ゴローさんが、NPO法人『ファザーリング・ジャパン』代表理事・安藤哲也さんに突撃インタビュー。

パパもママも仕事をしながら子育てするのが当たり前な今の時代。パパの子育て、ママの仕事、社会、いろんな側面から「家族の笑顔の作り方」を考えてみました。

――そもそも、男はなぜ家事・育児をやりたがらないのでしょう?

安藤 それはやはり、ジェンダー意識の問題が根底にあるのではないでしょうか。明治以降の家父長制は、今のパパになっている世代の、おじいちゃんやひいおじいちゃんの時代から綿々と続いているモノ。男性だけじゃなく、家父長制のなかで育てられた女性も意外と、「育児は母親がやるべき」「男性は仕事で稼いでナンボ」という意識の人が意外と多いんですよ。

――僕は、男性は本能的に「仕事より育児のほうが大変」ってわかってるから、逃げているのではないかと思っているんです。だから仕事に逃げてしまうというか。そういうことは感じませんか?

安藤 村橋さんが育児にがっつり関わっているから、そう思うんですよ。育児をしてるからこそ、「仕事のほうがラク」と思えるわけで。

育児をしていない人は、きっと「育児の方が大変」だなんて考えていないですよ。そもそも育児は自分の仕事じゃないという意識なんだから。

でもかつては、確かにそうでした。僕の家庭もそうでしたけど、父親のネクタイを締めて会社に行くのを、母親が「いってらっしゃい」と送り出す。そして1日家事育児をやってご飯作って、夫の帰りを待つ。それが当たり前だと考えられていた時代は確かにあったんです。しかも、それで文句言う人は少なかった。

でも時代が変わって、男性の所得も増えなくなっていった中で、女性のキャリア意識も変わっていった。

そしてあなたのような、「兼業主夫」という存在も増えていきました。

――今年6月『男性の育休取得が6%に』と厚労省から発表され、話題になりました。上昇しているとはいえ、まだまだ低いですよね。

安藤 そうですね、この数字を見ると低いと思われるかもしれませんが、僕らの調査では、50%ぐらいという結果も出ています。

大企業では「配偶者特別出産休暇」というような制度を設けているところもあります。使っていない有給休暇を使って、育児に充てている人もいます。【6%】というのは国の制度を使って、雇用保険を申請してる人が、6%ということ。実態は、もう少し男性も育児のために休んでいるという印象がありますね。僕の肌感ですが、東京では7割ぐらいのパパはなんらかの休暇を使って産後3~5日くらいは休んでいるといった印象ですね。

ただ、『ファザーリング・ジャパン』の活動で全国を回っていると、東京以外の地域では、育休はまだまだというのが実感ですね。

ーーところで、安藤さんの一番上のお子さんって、今おいくつになられたんですか?

安藤 もう21歳。大学4年生になります。僕、娘とはときどき居酒屋デートしているんですよ(笑)。

――それは、いいですね!

安藤 これを僕は“イクメンのブーメラン効果”と呼んでるんです(笑)。

子育てに積極的に関わって、お父さんが好きな娘に育ったら、このように「幸せな形」で必ず戻ってきますから。だからパパたちによく「子育てガッツリやれば、大きくなってから必ずリターンがある」と言ってるんです。リターンだけを目的にして子育てに参加を! という気はもちろんありませんが、モチベーションの一つにはなるのではないでしょうか?

安藤哲也さん
安藤哲也さん
安藤健二

――子育てをされる過程で、安藤さんが一番大切にしていたことは何ですか?

安藤 やってるうちにわかったのは、「子育て」じゃなく「子育ち」なんだということです。子どもは自分で育つ力があるから、その環境さえあれば勝手に育っていくと思うんですよ。パパやママが「いい子育てをしなければ」と思うと、どうしても親のエゴが出てしまう気がします。子ども時代を思い返せば、自分も親の思ったとおりに育っていなかったろうなって。僕も学校に何回も母親が呼び出されて、いつも謝っていましたから(笑)。

ーー僕もそうでした。

安藤 でしょう?(笑) そう考えると、親がそんなに「こう育ってほしい」と願っても、子どもがその通りになるのは難しいと思うんです。そもそも、子どもの人生は子どものものですしね。

そう気づいてから僕は「子育て」をするのではなく、子どもが笑顔で育つ環境づくりしていこうと思うようになったんです。

その環境要因のなかで一番大事だなって思ったのが、ママの笑顔です。妻が育児だけでなく自分のやりたい仕事や暮らしができている、と感じる環境をつくることが大事だと思う。

だから一緒に生活する中で妻が笑顔でいられるために、自分のできることは自分でやろうと思っていました。

――そうですよね、やっぱり笑顔ですよね。灯りのともらないリビングは寂しいですし。そうなると、パパも笑ってないといけませんね。

安藤 「ファザーリング・ジャパン」でも「笑っている父親になろう」と常々言っています。仕事が忙しくても、子育てが大変でも、やっぱりパパとママが笑ってないと子どもは安心しませんから。それに親が笑顔でないと、親の姿を見て育つ子どもが「大人になっても楽しくないのかもしれない」と感じて、働くことや子どもを育てることにネガティブなイメージを持ってしまうんじゃないか、と思います。

――すごく単純なことをお聞きします。育児って、楽しかったですか?

安藤 育児自体はいろんな意味で大変でしたね。でも僕はその中の一瞬なんだけど、子どもの言葉や仕草で「ああ、成長したなぁ」と感じる。そう、子どもが育ってゆく、そのプロセスを見たり、感じたりするのがたぶん好きなんです。

多くの父親は、育休中のママが撮影した子どもの動画を見て、「かわいい」と言っているだけ。どうして自分で育休取って、その瞬間を自分の目でライブで見ないの?と感じます。

――それは本当に思いますね。「育児というすごく面白いものを、ママだけに独占させるなんてもったいない!」と、僕も世の中のパパたちに言いたいです。週末に子どもを連れて遊びに行くと、「仕方がないから、面倒見ています」という顔をして公園で子どもを遊ばせているパパも多いですし。

安藤 よく、パパたちから相談受けるんですよ。「育児をやっていると自分の時間がなくなってしまう」と。パパ・ビギナーな悩みですけれど、僕自身もそう感じたことがあるから、そういう悩みを持ってしまうこと自体は責めません。

でも、「子どもと一緒の時間も自分の時間」と捉えて欲しい。「仕事か育児か」、ではなく「仕事も育児も楽しんでやっていく」と考えて欲しいなと思います。これは、ママにも言えることだけれど「子育て」と「仕事」のハッピーバランスをどう作るか、ワークライフ・シナジー、つまり相乗効果も生まれるはずだからそれを楽しんで欲しいと。

――僕も、仕事が忙しいとき、「こんなことしてないで仕事したい!」と思ってしまうこと、あります。わかってはいるのですが、痛いトコロを突かれた気がします。

安藤 なかなかできないものですよ。僕も3年ぐらいかかりました。

たまにしか育児してないと義務感になっちゃう。スキルも上がらないし、子育てを通して視点や考え方を変えたり、それを楽しむマインドアップも起きません。何でもそうでしょう? 勉強もスポーツも同じです。

――1日30分、子どもをあやしているだけでは身につかないですよね。

安藤 パパの育児に求められるのは、「質より量」です。日々、ちょっとずつでもいいから、自分なりに子どもと触れ合い、「量」を積み上げる。それによって、子どもへの愛情や子育ての本質が見えてくると思いますよ。こんな偉そうに言っていますが、僕、妻に1回、家出されたことがあるんです。

――えっ!? どうしてですか?

安藤 育児初心者のころですよ。育児をするなかで、妻が僕に求めているものに対して上手く応えられなかったことが積もり積もったのでしょう。そうしたら妻が子ども置いて出て行ってしまい、3日間帰ってこなかったんです。たった3日間でしたけど、僕は一人で子どもの世話をして、ボロボロになってしまいましたね。

だから、妻が帰ってきたときは、玄関先で土下座です。こんな大変なことをやってくれていたなんて、ママに感謝します、と。

村橋ゴローさん
村橋ゴローさん
安藤健二

――それは大変でしたね。でも、奥さんに怒ったり、文句を言ったりしなかったのは、安藤さん、すごいです。

安藤 そんなことをしたら、家庭崩壊ですよ(笑)。

僕は、父親の育児参画は社会を変える第一手になると思っています。

男性の育児休業の義務化が進むなど、女性が育児を一手に引き受ける負担が減れば、児童虐待も離婚も減っていくのではないでしょうか。

そして、女性活躍や働き方改革にもプラスの影響を与え、企業や社会のシステムが整えば、今後増えてくる介護離職問題などの対策にも繋がっていく。

最終的に、少子化対策や次世代育成、男女共生社会の実現も…となっていくはずなんです。

だから、パパたちには「育児を前向きにすることは社会を変えることに繋がっている」という自覚を持ってほしいのです。オムツを替えることで、俺は社会を変えているんだ!と(笑う)。

だから、これからはチャンスが来たら男性も育児休業などを最大限活用して、積極的に育児に関わって、人生を楽しむ笑っているパパになって欲しいですね。なにかあったら、ファザーリング・ジャパンもついてますから!

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「笑顔ってタダじゃない」。安藤さんとお話しし子育てを突き詰めて考えていったら、そんな思いに至りました。四六時中子どもといればイライラもするし、仕事でかかるストレスもある。

それでも子どもの前で笑顔でいるためには、やはり努力が必要。

僕の妻も仕事で抱えた抱えたストレスを玄関前で呑み込み、ガチャッとドアを回し「ただいまー!」と言った瞬間、「家庭スイッチ」に切り替える努力をしているはずです。

そこで男に求められるのは、家庭内での自立なのではないでしょうか。炊事・掃除・洗濯・育児、自分のやれることは自分でやる。そうすればみんなが助かるし、笑顔になる。やはり、努力の結晶が笑顔なんだと。

男たちよ、家庭を、社会を変えるために、まずはオムツを替えよう!

(編集:榊原すずみ @_suzumi_s

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