「スーパーに行って物を買ったこともありますけれども、基本的には家内がやっておりますので…」
6月3日午後の参議院予算委員会で、参考人として出席した日本銀行・黒田東彦総裁がこう答弁する場面があった。
やりとりがあったのは、立憲民主党・白真勲参院議員が、食料品などさまざまなものの値上げが続く中、物価高をめぐる政府の対応について質問していた場面だった。
白氏は黒田氏に対し、「日本銀行は通貨および金融の調節を行うに当たっては、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもってその理念とする」と定めている日本銀行法の第2条を取り上げた上で、「最近食料品を買った際、以前と比べて価格が上がったと感じるものがあったのかどうか、ご自身がショッピングしたときの感覚、実感をお聞かせください」と尋ねた。
これに対し、黒田氏は「私自身、スーパーに行ってですね、物を買ったこともありますけれども、基本的には家内がやっておりますので、包括的にですね、物価の動向を直接買うことによって、感じているというほどではありません」と答弁。その上で、物価高の状況についてこう見解を述べた。
「日本銀行のいろいろなアンケート調査などでもですね、最近特にガソリンとか食料品など購入頻度の高い品目の価格が上昇しているということで、多くの家計が物価の上昇を実感していると。こういった体感物価の上昇というものはやはり家計の消費マインドに悪影響を及ぼす可能性がありますので十分注意してみていきたいというふうに思っております」
これを受け、白氏は「なかなかお忙しくていらっしゃるから奥様に買い物は任しているということですから、ぜひ奥様にどんな問題っていうことは聞いていただきたい」などと述べつつ、物価安定のための対策について問うた。
黒田氏は「4月の生鮮食品を除いた消費者物価の前年比は、エネルギー価格の上昇を主因としてプラス2.1%まで上昇している」とした一方で、「我が国経済は依然として感染症による落ち込みからの回復途上にあり、雇用・所得環境は全体として弱めになっている」と述べ、「家計の所得が伸び悩む中での物価の上昇というのは実質所得の減少を通じて、経済の下押し要因として作用するため望ましくない」との見解を示した。
日銀が「物価安定の目標」として掲げる「消費者物価の前年比上昇率2%」についても触れた上で、「物価安定の目標を持続的・安定的な実現を目指して金融緩和を行っているわけですけれども、『単に物価が上昇すればよい』と考えているわけではございません」と述べた。
黒田氏は、「目指しているのはあくまでも経済活動や賃金が改善する中で、物価も緩やかに上昇する好循環の形成だ」とした上で、「その実現のためには、やはり金融緩和によって賃金の上昇しやすいマクロ経済環境を作り出すことが重要である」と強調した。