南アジア出身女性、「警察官から人種差別」と訴え。原告の請求を棄却 東京地裁

原告側は、警察官が当時3歳の子どもに「日本語しゃべれねえのか」などと発言したほか、同意なしにトラブルの相手に個人情報を提供されたと主張。一方、被告の東京都は警察官たちの対応に違法行為は認められないとして、請求棄却を求めていた。
東京地裁
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時事通信社

【関連記事】「警察官は『どうせお前が蹴ったんだろ』と娘さんに言っていた」目撃者の証人尋問

警視庁の警察官に、同意なしに氏名や住所の個人情報をトラブルの相手に提供され、帰宅の意思を示したが警察署内で長時間にわたって事情聴取されるなど違法な対応を受けたとして、南アジア出身の40代女性と長女が東京都に損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁(片野正樹裁判長)は5月21日、原告の請求を棄却した。

どんな裁判なのか

原告は2021年9月、東京都を相手取り東京地裁に提訴。訴状などによると、同年6月、都内の公園にいた南アジア出身の女性と当時3歳の長女が、見知らぬ男性から「子どもが(長女に)蹴られた」などと抗議を受けトラブルになった。

原告の女性側は、長女と男性の子どもに身体的な接触はなかったと述べている。男性が110番通報し、警視庁の警察官数人が現場に駆けつけた。

原告側は、男性から「外人」「在留カード出せ」などと詰め寄られた際、警察官たちが男性の差別発言を制止しなかったと主張。公園を通りかかり、女性と警察官の間で英語通訳をした目撃者の男性は、2023年12月の証人尋問で「警察官が女性の娘さんに対し、『どうせお前が蹴ったんだろう』『本当に日本語しゃべれないのか』などと言っていました」と証言した

原告女性と長女は警察官から公園で聞き取りを受けた後、警察署への同行を求められ、署で再び聴取された。公園と警察署内での事情聴取は計約4時間半に及んだ。原告側はこの間、帰宅したいと要望しても聞き入れられなかった上、トイレの利用や長女のおむつ替え、食事も認められなかったと主張している。

さらに署内では、女性と長女が一時引き離され、長女ひとりに複数の警察官が事情聴取したと訴えている。長女は聴取中に大泣きし、その日以降精神的に不安定になり、医療機関で心的外傷の体験による不眠との診断を受けたという。

加えて、拒否したにも関わらず女性の氏名や住所、電話番号といった個人情報を、差別発言を繰り返していたトラブル相手の男性に警察官が提供したと主張。意思を確認されずに母子ともに写真撮影されたとも訴えていた。

その後、トラブル相手の男性によって原告女性の氏名などが旧Twitter(X)に投稿されたほか、「殺人未遂犯」という記載とともに長女の写真も投稿された。

原告側は、警察官たちによる一連の行為が人種差別を支持・助長するものであり、「異常なまでの圧迫的な扱いはレイシャル・プロファイリング(※)に当たる」と指摘。「公権力の行使に際して人種差別を行ってはならないという職務上の注意義務に違反し、違法だ」として、損害賠償を求めていた。

(※)レイシャル・プロファイリング・・・警察などの法執行機関が、「人種」や肌の色、民族、国籍、言語、宗教といった特定の属性であることを根拠に、個人を捜査の対象としたり、犯罪に関わったかどうかを判断したりすること

東京都「違法行為は認められない」と反論

こうした原告側の訴えに対し、被告の東京都は、警察官の一連の対応に違法行為は認められないとして請求棄却を求めていた。

公園で対応した警察官は、2023年11月の証人尋問で「日本語しゃべれねえのか」という発言はしていないと否認した上で、「日本語話せる?とは確認した」と述べた

被告側は、約4時間半にわたって女性らに事情聴取したことは認めるものの、「女性が帰宅を申し出たことはない」「原告からトイレやおむつ替え、食事をしたいという申し出はなかった」として、いずれも否認していた。

さらに、民事裁判を理由に女性の連絡先を求められ、トラブル相手の男性に提供したことは認めるが、女性の承諾を得ており「(提供を)強要した事実はない」と主張。写真撮影も女性の承諾を得ていたと反論していた。

裁判所の判断は

判決では、「警察官らにおいて国家賠償法上の違法があるといえるかについて検討したが、関係警察官及び原告の証人尋問等の結果や関係書証を子細に検討しても、警察官らにおいて、原告らが違法であると主張する所為があったと認めることは困難」だと結論づけ、原告側の訴えを退けた。

【UPDATE】2024年5月21日14:15
判決内容を追記しました。

主な争点をめぐる原告・被告の主張
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