「外国人ふう」で職質70回以上と訴え。レイシャルプロファイリング訴訟始まる。被告の国など争う姿勢

原告のモーリスさんは意見陳述で、「私は人種や民族のせいで、どこに住んでいても、不当な扱いを甘んじて受けなければならないのでしょうか」と、裁判官らに訴えかけた。
東京地裁に向かう原告と弁護団=2024年4月15日
東京地裁に向かう原告と弁護団=2024年4月15日
Machi Kunizaki

肌の色や「外国人ふう」の見た目などを理由とした人種差別的で違法な職務質問を受けたとして、外国出身の3人が国、東京都、愛知県の三者を相手取り損害賠償などを求めた裁判の第一回口頭弁論が4月15日、東京地裁(岡田幸人裁判長)であった。

原告らが意見陳述し、「私は人種や民族のせいで、どこに住んでいても、不当な扱いを甘んじて受けなければならないのでしょうか」などと裁判官たちに訴えかけた。

一方、被告の国、東京都、愛知県は、原告の訴えは訴訟要件を満たさないなどとして請求の却下や棄却を求め、争う姿勢を示した。

弁論は東京地裁の大法廷で行われた。同裁判所によると、抽選対象となった一般傍聴席85席に対して、144枚の整理券が配られたという。

どんな裁判?

原告は20〜50代の3人。いずれも外国出身で、現在は日本で生活している。

原告のゼインさんは、パキスタンで生まれて8歳で来日。2011年に両親と共に日本国籍を取得した。「外国人ふう」の外見を理由に職務質問を繰り返し受けたと訴え、回数は15回ほどに上るという。

原告の一人でアフリカ系アメリカ人のモーリスさんは、「ロックス」と呼ばれる編み込みの髪型で生活している。永住者の在留資格があり、日本で約10年間暮らしている。2021年、バイクに乗っている時に受けた職務質問では、交通違反がないにもかかわらず警察官に停止させられ、在留カードの提示も求められたと訴える。これまでに16、17回ほど職務質問されたという。

南太平洋諸島の国で生まれたマシューさんは、これまでに少なくとも70回以上職務質問され、1日に2回受けたことが4度あると主張する。2021年に車を運転していた際に受けた職務質問では、警察官はマシューさんに交通違反はなく、不審者でもないと述べたが、「外国人の方が運転するのは珍しいから」だと説明したと訴えている。

警察などの法執行機関が、「人種」や肌の色、民族、国籍、言語、宗教といった特定の属性であることを根拠に、個人を捜査の対象としたり、犯罪に関わったかどうかを判断したりすることは「レイシャルプロファイリング(Racial Profiling)」と呼ばれる。

原告側は、過去に受けた上記のような職務質問は、「人種」や「外国人ふう」の見た目を理由としており、法の下の平等(14条1項)や幸福追求権(13条)を保障する憲法に加え、人種差別撤廃条約や自由権規約などにも違反すると主張。

国などに対して原告一人当たり330万円の損害賠償の支払い(弁護士費用30万円を含める)のほか、レイシャル・プロファイリングによる差別的な職務質問の運用を違法だと認めること、国は差別的な職務質問をしないよう指揮監督する義務があることの確認を求めている。

被告三者は争う姿勢

一方、被告の国、東京都、愛知県はいずれも争う姿勢を示した。

国は、全国の都道府県警察に対してレイシャル・プロファイリングを行わないよう指揮監督する義務があることの確認を求める原告の訴えに対し、「訴訟要件を満たさない不適法なもの」だと主張し、却下を求めた。さらに、レイシャル・プロファイリングの運用が存在するという原告の主張に対しては否認した。

東京都と愛知県も請求棄却を求め、争う姿勢を示した。

「社会的地位を下げ、スティグマを押し付ける効果」

ゼインさんは意見陳述で、「日本で生まれ育った海外ルーツの人は増えており、私と同じように見た目で犯罪を疑われ、高圧的な職務質問を受けている人の話を聞きます」と述べた。「外国人と犯罪を結びつける偏見が社会と警察内部に蔓延しているのではないでしょうか」と疑問を投げかけ、偏見に基づく職務質問を見直すよう求めた。

モーリスさんは、外国ルーツの見た目を理由とした職務質問を日本で受けたことで、「(出身国である)アメリカと同じ偏見や先入観が日本にもあることを理解した時の私の不安は圧倒的なものでした」と振り返った。

「私は人種や民族のせいで、どこに住んでいても、不当な扱いを甘んじて受けなければならないのでしょうか?なぜでしょうか?」と、裁判官たちに問いかけた。

原告代理人の谷口太規さんは訴状陳述で、「警察は組織的・意図的に、差別的な職務質問を教示し、推奨している」と指摘。「外国ルーツの見た目をしているだけでいつも警察に疑われ、監視され、日々差別的取り扱いを受けることによって、アイデンティティや尊厳を傷つけられます」と述べた。

職務質問が、人々の見ている前で行われることが多いことから、谷口さんは「レイシャル・プロファイリングは特定の属性の人たちの社会的地位を切り下げ、スティグマ(社会的な烙印、否定的なラベリング)を押し付ける効果も持っています」と強調。警察によるレイシャル・プロファイリングの運用を止めることは司法の責務だと訴えた。

第2回口頭弁論は7月23日に行われる予定。

【アンケート】
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