中国・新疆ウイグルで相次ぐ暴力事件 民族対立の背景に「格差」

専門家らは、同自治区の人口構成の変化に加え、雇用差別によって、ウイグル族の怒りが増幅し、漢民族を狙った攻撃につながっているとの見方を示す。
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Reuters

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[ウルムチ(中国) 7日 ロイター] - 先週に爆発事件が起きた中国・新疆ウイグル自治区のウルムチ南駅。この駅は、同国各地から訪れる出稼ぎ労働者にとっての中継地点で、彼らはここから賃金の高い仕事に就くため、同自治区の他の場所へと向かう。

「こんなに遠くまできたのは、賃金がいいからだ」。南西部の大都市、重慶出身のShi Hongjiangさん(26)は、同駅の外でロイターの取材に応じ、「ウイグル族は少なく、仕事に十分な数はいない」と話した。

専門家らは、同自治区の人口構成の変化に加え、雇用差別によって、ウイグル族の怒りが増幅し、漢民族を狙った攻撃につながっているとの見方を示す。

自爆攻撃とみられている先週の事件では、通行人1人が死亡し、約80人が負傷。負傷者の多くは、建設作業員などの出稼ぎ労働者だったとされる。

国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチの上級調査員、ニコラ・ベクイリン氏は、事件によってウルムチ南駅は「強力なシンボル」となったと指摘。「植民地化された場所では、入植者に対して暴力を使おうとする人がいるものだ」と語った。

<豊富な資源>

中央アジアとの境界に接する新疆は資源が豊富で、中国で増加するエネルギー需要に対応するための重要な場所となっている。石炭の推定埋蔵量は、中国全体の約4割に当たり、原油生産量は全体の13%、天然ガスは同30%を占める。

ただ、アナリストらは、鉱物資源が豊富で、数十億ドルの投資が行われているにもかかわらず、利益の大半が漢民族にわたっており、ウイグル族の反感をかき立てていると分析する。

香港科技大学のバリー・ソートマン氏は、「新疆の原油開発では、過去数十年にわたって、多くの労働者が中国全土から呼び寄せられた」とコメント。その上で「十分な工学技術を有したウイグル族の数は、限られていた。そのため、仕事のほとんどが漢族に割り当てられた」と述べた。

<部外者>

3人の子どもの父親で、ウルムチ南駅近くで土産物の露店を営んでいるアリさん(37)は、出稼ぎ労働者に対し、強い憤りを感じることがあると胸の内を明かす。

「ここには部外者がたくさんいる。彼らは仕事をしに来ているが、地元住民のための仕事はほとんどない」。

新疆では暴力事件が相次いでおり、中国政府はイスラム武装組織と、「東トルキスタン」独立を目指すウイグル族分離主義者の犯行だと非難している。過去1年で100人以上が死亡し、当局による取り締まりが強化されている。

6日には、中国南部・広州の鉄道駅でも6人が負傷する刺傷事件が発生。警察は事件の背景などは明らかにしていないものの、29人が死亡した3月の昆明無差別殺傷事件に通じるものがある。昆明の事件について政府は、新疆出身の武装グループの犯行との見解を示している。

新疆の経済発展を促進する政府の政策は、出稼ぎ労働者にとっては魅力的に映る。新疆の最低賃金は、中国国内の省や市などの自治体の中で4番目に高く、月給1520人民元(約2万5000円)。これは、工業都市が集まる東部の山東省や広東省と同じ水準で、北京よりもはるかに高い。

出稼ぎ労働者の多くは建設現場で働き、農業が盛んなアクスに向かう者もいる。アクスはキルギスとの国境とタクラマカン砂漠の間に位置する。警察によると、ウルムチの爆発事件で死亡した爆破犯2人のうちの1人がアクス出身だという。

<雇用差別>

ウルムチ北部の頭屯河区は、都市計画構想の象徴的な場所になっており、高層マンションや大規模な政府庁舎、オフィスパークが並んでいる。

建設作業員のZhao Fupingさん(20)は、「実際、ウイグル族はここには来ない。理由は分からないが来ない」と話し、出稼ぎに来た理由については「単純だ。賃金がいいからだ」と言い切った。甘粛省出身で中学校卒のZhaoさんは、最大で日給200人民元を受け取っている。

一方、配達で同地区を訪れた男性は、「ここはウイグル族のための場所ではない。われわれはここが好きではない。単に商品を配達しているだけだ」と語り、足早にバスに乗り込んだ。

中国政府は、ウイグル族が不当に取り残されていることはないと強調。ウイグル族が多く住む新疆南部などでは、まだ開発が進んでおらず、仕事も不足していると主張している。

政府は2月、住宅や雇用の改善を改善するため、616億6000万人民元を追加投入すると発表。繊維産業の労働者80万人を新たに雇用する計画もある。

しかし、漢民族の出稼ぎ労働者がその職に就けば、ウイグル族の怒りを収めることはできないだろう。求人広告でのあからさまな差別は、近年まれになってきているが、活動家らはその差別はまだ存在すると口をそろえる。

ウルムチ出身のウイグル族の男性(24)は、電子機器メーカーのマーケティング職に応募したところ、会社側からウイグル族を雇うことで管理上の負担が膨らむと説明され、採用を断られた。

この男性は、ロイターの取材に流ちょうな中国語で応じ、「一度や二度ではない。以前にもあったし、交際相手の女性も同じ問題に直面した」と明かした。

ウルムチでは最近自動車ショーが開催されたが、アウディやフォルクスワーゲン、フォード、日産などの展示車を見に訪れるウイグル族はほとんどいなかった。

アルバイトで車の販売員として働く漢民族の大学生An Longさんは、「なぜここにウイグル族がほとんどいないかって。彼らには車を買う金銭的な余裕がないからだ」と、両民族の格差を率直に口にした。

(Michael Martina記者、翻訳:野村宏之、編集:宮井伸明)

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