「つながり」を意識する中国の若者たち。-中国通販マーケット、攻略のカギは「口コミの喚起」にアリ?

中国の40歳代の友人は会うたびに車が変わる。彼らの世代では、ブランド力と品質を兼ね備えた、海外のトップメーカーの車に乗ることが最高のステータスであるようだ。一方、その下の世代の20~30歳代では、様相が異なる。
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中国の40歳代の友人は会うたびに車が変わる。ほぼ2年に1回のペースでクラスが上がり、まるで成功を表すツールのようだ。革張りのシートに、高性能なサスペンション・・・。彼らの世代では、ブランド力と品質を兼ね備えた、海外のトップメーカーの車に乗ることが最高のステータスであるようだ。

一方、その下の世代の20~30歳代では、様相が異なる。先日、日本の自動車メーカーが彼らにターゲットを絞った新車をお披露目した。デザインや開発は現地の若手技術者らによるものだという(*1)。

凝ったデザインの車に搭載されるのは、中国独自で開発されたスマートフォン(スマホ)との接続が可能なオーディオやマルチメディアディスプレイ。重要なのは、カッコよくて、運転しながらでも快適に"つながっていられる"環境だ。

現在の20~30代は1980年代、1990年代生まれを中心とした一人っ子世代である。1979年以降の一人っ子政策導入以降に生まれた、かつての「小皇帝」である。経済の高度成長の中、家族の愛情を一身に受け、インターネットが身近にある環境で育った小さな皇帝は、今や中国の「M 世代」(*2)、「デジタルネイティブ」として、消費を牽引する存在に成長してきた。

特に、1990年代生まれの10代後半から20代前半の'最近の若者'は、自己の判断基準や「個」(自分自身)を重視する傾向が強いとされている。そんな彼らが自己の個性を表すツールとして1番に挙げているのが「ファッション」(36.7%)だ(図表1)(*3)。

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しかもデジタルネイティブらしく、ファッションの購入は実際の店舗に出向くよりも、むしろネットを通じての方が多いようである。ファッションについては、ネットで購入が86.8%、デパートや専門店などに出向いて購入が61.5%となっている(図表1と同様の調査)。

ネットで買うか買わないかの判断基準は、価格や最新の流行といった要素よりも、自分自身が気に入ったかどうかである。ファッションについても同様で、自身がデザインや品質を良いと思ったかを優先し、流行やブランドの知名度はさほど気にしない傾向にある(図表2、3)。

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また、特徴的なのが、自己の判断基準や個性を追求する一方で、購入前のネットを通じた情報収集はさることながら、購入後の評価の書き込み等、商品の情報に関する発信にも熱心な点である。

中国では元来、血縁、地縁や出身校でのつながりを重視する向きがある。核家族化が進み、兄弟や姉妹がいない一人っ子の彼らは、オンライン上の友人とのつながりを大切にする。ネットで商品を購入する前には、チャット(QQ空間)、ツイッター(微博)等を通じて、信用できる友人・知人からの口コミや情報を参考にする(図表4)。

一方、購入後は、自身も販売者の評価への書き込みや、自身のSNSを通じて商品に関する情報を積極的に発信し、オンライン上の友人とも情報の共有化をはかる(図表5)。こういった情報発信や共有化は彼らの9割が実施しているという。

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このような情報のやりとりがコミュニティの中での距離を縮め、信用度を高める上でも重要な役割を果しているようだ。しかも、今ではこういった情報が手元のスマホを通じて、瞬時に中国全土へと拡散していく。

中国の通販マーケットの取引高は2014年時点で2.8兆元(56兆円)、これが2018年には7.3兆元(146兆円)にまで拡大するとの予測もある(*4)。しかも、2018年にはパソコンからではなく、スマホなどの移動端末からのアクセスが6割と主流になるとされている(2014年時点では3割)。

インターネットが身近にある環境で育ち、手元のスマホとともに生活をする彼らは、'タップ'1つで消費マーケットを大きく変える可能性を秘めている。

(*1) 4月24日付、『日本経済新聞』「新車減速 中国どう攻略」

(*2) 米国では1980年から2000年初めの間に生まれたデジタルネイティブ世代を示し、Millennial Generationとされている。

中国等では前掲に加えて、Multitasking Generationとも表現されている。

(*3) Analysysが実施したインターネット調査。有効回答件数19259件。2015年2月25日~3月1日実施。

(*4) iResearch 「中国電子商取引の構成内容と将来予測」

関連レポート

(2015年5月25日「研究員の眼」より転載)

株式会社ニッセイ基礎研究所

保険研究部 研究員