脱リン酸化酵素のPP6が皮膚がんの抑制に働いていることをが初めて突き止められた。がんの新しい予防や治療につながる成果として注目される。
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脱リン酸化酵素のPP6が皮膚がんの抑制に働いていることを、宮城県立がんセンター研究所の島礼(しま ひろし)所長と奈良女子大学研究院自然科学系の渡邊利雄(わたなべ としお)教授らが初めて突き止めた。がんの新しい予防や治療につながる成果として注目される。東北大学、理化学研究所、九州大学、埼玉県立がんセンターとの共同研究で、12月8日付の米科学誌オンコジーンのオンライン版に発表した。

がん細胞の暴走を促進する貝毒成分のオカダ酸が、脱リン化酵素を阻害して細胞のがん化を起こしていることは1989年に国立がんセンター研究所(当時)の藤木博太(ふじき ひろた)部長らが見つけた。しかし、生体物質からリン酸を外す脱リン酸化酵素は細胞内にいっぱいある。オカダ酸がどの脱リン酸化酵素を阻害しているかは25年間謎だった。最近の大規模な遺伝子解析で、脱リン酸化酵素PP6の失活ががん細胞の暴走促進因子の候補として浮かび上がっていた。

研究グループは、遺伝子操作でPP6機能喪失マウスを作製した。PP6がなくなると、マウスの皮膚がん細胞の暴走は早まった。暴走を促進する薬剤なしでも、皮膚がんが生じることを確かめた。一連の実験から、脱リン酸化酵素のPP6が、がん細胞の暴走を促進するオカダ酸の標的酵素である可能性が強まった。 逆にいえば、PP6 は皮膚がんの暴走を抑え込むブレーキ役のがん抑制遺伝子であることが初めてわかった。この発見で、脱リン酸化酵素PP6の活性促進を指標として、新しいがん予防・治療薬の開発が期待されるという。

研究グループの渡邊利雄教授は「大規模遺伝子解析で黒色細胞腫(メラノーマ)やほかのがんにも、脱リン酸化酵素PP6の変異が見つかっており、皮膚がん以外の多様な発がんに関与している可能性もある。PP6の発現促進は、がん抑制に効くので、抗がん剤などの開発の新しいターゲットになるだろう。オカダ酸などは日本人研究者の長年の蓄積がある分野なので、研究をぜひ進めて、がんの予防や治療に役立つようにしたい」と話している。

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(いずれも提供:宮城県立がんセンター研究所、奈良女子大学)