宮崎駿監督 引退会見「ジブリ美術館の絵を描きたい」

9月6日、世界的なアニメ映画監督の宮崎駿さんが、都内で引退会見を行った。会見には中国、韓国、台湾、ロシア、フランス、イタリアなど世界各国のメディアが参加。宮崎監督は冒頭、今回の引退発表について「何度もやめるといって騒ぎを起こして生きてるんでどうせまただろう、と思われてるんですが……今回は本気です」と話している。
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時事通信社

9月6日、世界的なアニメ映画監督の宮崎駿さんが、都内で引退会見を行った。会見には中国、韓国、台湾、ロシア、フランス、イタリアなど世界各国のメディアが参加。宮崎監督は冒頭、今回の引退発表について「何度もやめるといって騒ぎを起こして生きてるんでどうせまただろう、と思われてるんですが……今回は本気です」と話している。

ハフポスト日本版では、会見で配布された宮崎監督による「公式引退の辞」の全文と、報道陣との質疑応答の要約をお伝えする。

「公式引退の辞」

宮崎駿

ぼくは、あと10年は仕事をしたいと考えています。自宅と仕事場を自分で運転して往復できる間は、仕事をつづけたいのです。その目安を一応“あと10年”としました。

もっと短くなるかもしれませんが、それは寿命が決めることなので、あくまでも目安の10年です。

ぼくは長編アニメーションを作りたいと願い、作って来た人間ですが、作品と作品の間がずんずん開いていくのをどうすることもできませんでした。要するにノロマになっていくばかりでした。

“風立ちぬ”は前作から5年かかっています。次は6年か、7年か……それではスタジオがもちませんし、ぼくの70代は、というより持ち時間は使い果されてしまいます。

長編アニメーションではなくとも、やってみたいことや試したいことがいろいろあります。やらなければと思っていること――例えばジブリ美術館の展示――も課題は山ほどあります。

これ等は、ほとんどがやってもやらなくてもスタジオに迷惑のかかることではないのです。ただ家族には今までと同じような迷惑をかけることにはなりますが。

それで、スタジオジブリのプログラムから、ぼくをはずしてもらうことにしました。

ぼくは自由です。といって、日常の生活は少しも変わらず、毎日同じ道をかようでしょう。土曜日を休めるようになるのが夢ですが、そうなるかどうかは、まぁ、やってみないと判りません。

ありがとうございました。

以上

2013.9.4

■質疑応答

Q. 今監督から子供たちへ伝えたいこと、メッセージは?

A. そんなにかっこいいことは言えません。何かの機会があったら、私達がつくってきた映画を見てくれれば、なにか伝わるものがあるかもしれません。それに留めさせてください。

Q. 長編の監督を辞めるということでいいのか。これからやりたいことを具体的に教えて欲しい。

A. あの、我ながら欲かいたなと思うんですけど、「僕は自由です」と公式引退の辞に書きまして、やらない自由もある。車が運転できるかぎりはスタジオに通おうと思っています。今は休息を取らなきゃいけない時期なんですが、約束すると破れなくなるので……そういうことで勘弁してください。

Q. 「風の谷のナウシカ」の続編は?

A. それはありません。

Q. 韓国にもファンがいっぱいいますが、韓国のファンに一言お願いします。ゼロ戦についてどう思っていますでしょうか。

A. あのー、映画を観ていただければわかると思いますので、いろいろな言葉にだまされずに、今度の映画を観ていただければいいなと思います。それをいま、韓国の方に……いろいろな国の方が観てくださっていることは嬉しいと思います。それと同時に、日本の軍国主義をモチーフにしていますので、家族や自分自身、スタッフからも疑問が出ました。映画を観ていただけたらと思っています。映画を観ていただかないと始まらないので、お金を払って観ていただければと思います。

Q. ジブリに監修、アドバイザーといった形で関与することはあるのでしょうか?

A. ありません。

Q. 今回の引退宣言と今までの引退は何が違うのでしょうか。

A. この「公式引退の辞」に書いてありますが、風立ちぬは5年かかっています。それまでにシナリオ描いたり、漫画描いたり、美術館の短編作ったりしていますが、5年かかっています。いまから新しいのというと……5年じゃすまないでしょうね。6年、7年、ここから7年かかると80になってしまうと。自分の長編アニメの時代ははっきり終わったんだ、と。自分がやりたいと思っても年寄りの世迷い言として、はっきり片付けようと思います。

Q. 台湾の旅行者にとってはジブリ美術館は外せないルート。引退後は時間がたっぷりありますが、海外のファンと交流する予定はありますか?

A. ジブリ美術館には今後も関わらせてもらいたいと思っています。ボランティアという形になるかもしれませんが、自分も展示品になってしまうかもしれないですが……ぜひ、美術館にお越しいただけると嬉しいです。

Q. もっとも思い入れのある作品は? こういうメッセージを入れようと意識していたことがあれば教えて下さい。

A. トゲのように残っているのは『ハウルの動く城』です。ゲームの世界なんです。それをゲームではなくてドラマの世界にしようとして格闘したんですが、スタートが間違えていたと思うんですが自分で企画したので仕方がないです。

児童文学の多くに影響を受けてこの世界に入った人間ですので、基本的に子供たちに「この世は生きるに値するんだ」ということを伝えるのが根幹にあると思ってやってきました。今でもこれは変わっていません。

Q 今後についてもう少し詳しく

A. 展示のものが十年前で随分色あせているものもありますので。これは自分で筆やペンで書かなければいけないので。ずっとやらなければ。毎日掃除してきちんと整理しているはずなのになぜか色あせていくんです。くすんでいるところに何かキラキラしているものがあると、そこに子供たちが集まるのがわかったんです。美術館をいきいきとさせるにはずっと手をかけなければいけないとわかったので、それをやりたいと思っています。

Q. 短編アニメーションに関わることがあるのでしょうか?ジブリの今後はどうなるのか?

A. 僕は自由です。やってもやらなくても自由なんで、いまは前からやりたかったことがあるのでそれをやろうと思っています。それはアニメーションではありません。

ジブリの今後については、やっと上の重しがなくなるんで、若いスタッフからこういうのをやらせろ、と上がってくるのを期待しています。私が30代、40代のころは、やってもいいんだったらやってやるぞ、というのを抱えてました。(若いスタッフの)それを門前払いする必要はありません、鈴木さんは。人間の意欲や希望や能力にかかってるんだと思います。

Q. これまでつらかったことは。

A. つらかったのはスケジュール。どの作品もつらかったです。終わりまで、この作品はどうなるんだって見通しがついてから作った作品はないので。最後まで見通せる作品はぼくがやらなくていいと思っていて。絵コンテという作業があるんですけど、新聞連載のように、いや、新聞ほどやってないですね。月刊誌のようにずっと描き続けていて、つらかったです。

監督になってよかったと思ったことは一度もありませんけどアニメーターならあります。何でもないカットが描けたけど、光とか、水とか、うまくいったな、というだけで一日幸せでいられる。監督は最後に判決を待たなくちゃいけないんで……これは胃に良くないです。アニメーターという職業は自分にあってる良い職業だったと思っています。

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