特定秘密保護法の施行を前に

特定秘密保護法が十二月十日から施行されます。この法律が施行されることにより、ようやく日本でも法律に基づいた秘密の管理が行われることになります。
|
Open Image Modal
時事通信社

特定秘密保護法が十二月十日から施行されます。

この法律が施行されることにより、ようやく日本でも法律に基づいた秘密の管理が行われることになります。

この法律も百点満点ではないかもしれませんが、法律のない状態で官僚が決めたルールで秘密が管理されていたこれまでの状態から、法律で秘密の管理が行われるようになるのは、民主国家として大きな前進です。

どの国にも特別に秘匿すべき情報があります。自衛隊の武器の設計図や暗号、テロリスト等に関する情報提供者に関する情報などは公開するわけにはいきません。

わが国では、これまで、こうした「特別に秘匿すべき情報」を、政府内で「特別管理秘密」として、法律ではなく官房長官を責任者とする会議が定めた「カウンターインテリジェンス機能の強化に関する基本方針」に従って管理してきました。

しかし、この特別管理秘密には大きな問題がありました。その管理を定めている基本方針そのものが秘密とされ、公表されていませんでした。

さらにその運用は省庁ごとにばらばらで、例えば経済産業省は、特別管理秘密として何を指定したかも明らかにせず、また、外務省は、「外交機密文書等」を「特別管理秘密」として取り扱うと定めて、その具体的な内容は公開してきませんでした。

特別管理秘密への指定は、各省の局長など官僚が、大臣に知らせることなしに行うこともできましたし、その際、何年間特別管理秘密として指定できるのかルールがありませんでした。

国家として秘密の管理は重要ですが、これまでのこうした「特別管理秘密」のやりかたには民主国家として問題があったと私は思っています。

特定秘密保護法という法律を制定することによって、防衛、外交、スパイ、テロに関する情報だけが秘密として指定できることになりました。

特定秘密の指定は大臣または行政機関の長が行うこととされ、その指定期間は五年間に限定されました。

五年間を過ぎた特定秘密を再指定するためには、もう一度、それが秘密指定の必要があるかどうか検討されなければなりません。

新しい法律ではこうしたルールが明文化され、世の中に公開されることになりました。

業務で秘密を扱うためには、必ず適性検査に合格していることが必要です。以前の「特別管理秘密」に関するルールでは、各省庁が本人の事前同意なしに適性評価を勝手に行っていました。

特定秘密保護法では、法律に基づいた適性評価を本人の同意を得て実施し、その結果に対する異議申し立てもできるようになっています。

こうしたことを考えると、法律にも基づかず、秘密の管理が行政府の中で完結してしまうこれまでの「特別管理秘密」の制度より、秘密の管理を法律に基づいて行う新制度のほうが民主的です。

もし特定秘密保護法案が廃案になっていれば、特別管理秘密の運用が続いたわけですが、そのほうがよかったとは私は思いません。

特定秘密保護法についてのご質問で、一番多いのが民間人の処罰についてのご心配です。

特定秘密保護法では、秘密を漏えいして処罰の対象になるのは、『適性評価を受けて特定秘密を取り扱う公務員』及び『特定秘密の提供を受ける適合事業者の従業員であって、適性評価を受けて特定秘密を取り扱う者(例えば潜水艦を建造する会社で設計図を目にする社員は本人の同意のもとに適正評価を受ける必要があります)』だけです。

適性評価を受けてもいない国民が、秘密の漏洩で処罰されることはありません。そこは非常に明確です。

特定秘密保護法によって、原発事故に関する情報が出てこなくなると心配する声もありますが、特定秘密に指定できる情報は、いまだ公開されていない国の情報だけですから、警察等による警備に関する情報を除き、民間会社が経営する原子力発電に関する情報が特定秘密に指定されるということはありません。

特定秘密保護法にも改善を要するところはあります。

例えば公安調査庁や県警本部が秘密指定をする場合は大臣ではなく公安調査庁の長官や県警本部長が指定することになっていますが、秘密の指定は法務大臣や国家公安委員長など大臣が行うことにするべきだと思います。

しかし、これまでと違って法律に基づいて秘密を管理することになったのは大きな前進です。