シャープどうなる? 支援めぐって日本と台湾で綱引き。産業革新機構 VS. 鴻海精密工業

経営再建中のシャープの支援をめぐって、日本側と台湾側で綱引きになっている。
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A man walks past the Sharp Corp. plant in Yaita, Tochigi Prefecture, Japan, on Thursday, Nov. 19, 2015. Shares rose as much as 7.1 percent in early Tokyo trading Nov. 20, rising for the second day, bringing the biggest two-day gain since July 3. Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg via Getty Images
Bloomberg via Getty Images

経営再建中のシャープの支援をめぐって、日本側と台湾側で綱引きになっている。台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業が支援額を5000億円規模から6000億円規模に引き上げると、政府系ファンド「産業革新機構」の支援案を当初想定していた2000億円規模から3000億円規模に増額して対抗。最終的な判断はシャープのメインバンクである、みずほ銀行と三菱東京UFJ銀行の判断に委ねられた。日本を代表する総合家電メーカーは、どこに向かうのか。

■政府系ファンド「産業革新機構」が鴻海の買収提案に対抗

シャープは、「シャープペンシル」などの発明で知られる早川徳次が1935年に大阪市内で創業。1990年代以降は「目の付けどころがシャープでしょ」をキャッチコピーに掲げて、PDA(携帯情報端末)の「ザウルス」など、数々のアイデア商品を開発してきた。

液晶パネルの技術に優れ、2004年に稼働した三重県の亀山工場では液晶テレビを一貫生産。「世界の亀山モデル」と称して売り出して、業績を拡大した。しかし、2008年のリーマン・ショック以降、液晶テレビなどの価格下落や太陽電池などの販売で苦戦し、業績が急速に悪化した。有利子負債は、2015年9月末時点で約7500億円にもなる。

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台北にある鴻海精密工業のビル

経営難のシャープに対して買収意欲を示していたのが、台湾の鴻海精密工業だった。同社はiPhoneなどApple製品の部品を手がけており、フォックスコンのブランド名で知られている。1月22日の朝日新聞デジタルによると、すでにシャープと液晶で提携している鴻海は、もともと5000億円規模でシャープ全体を買収する案を示していた。

だが、日本政府は、シャープが持つ先進技術が国外流出することなどを憂慮。政府系ファンド「産業革新機構」がシャープ支援に乗り出すことになった。同機構は2009年、日本の次世代産業創出を目的に官民で設立され、総額約2兆円の投資能力がある。これまでに中小型液晶パネルのジャパンディスプレイや半導体メーカー、 ルネサスエレクトロニクスに出資してきた。

同機構は、2000億円規模の出資や金融機関の追加支援で液晶事業を本体から分離させる案で、交渉を有利に進めていた。しかし、鴻海はこの状況を打開しようと53億ドル(提案時の為替換算で約6300億円)に積み増した。これに対抗するかたちで、22日までに同機構は3000億円規模の支援案を固めたと毎日新聞が報じている。この支援案は、同機構が第三者割当増資を引き受けるなどしてシャープ株の過半を取得して経営の主導権を握り、役員体制も刷新するというものだ。

国際競争力のある液晶事業は分社化し、約36%を出資する中小型液晶大手、ジャパンディスプレイとの経営統合を目指す。家電事業については、不正会計問題などで経営不振になっている東芝との統合を検討するなど、同機構が電機業界の事業再編を主導し、産業競争力の強化につなげる考えだ。メインバンク2行はこの提案を、有力案として検討を進めているという。

Bloomberg日本版は関係者の話として、機構案の方がシャープの技術の国外流出を防ぎ、将来的な国内メーカーとの提携がしやすいという利点があると報じている。

■機構案が通らない可能性も

とはいえ、機構案が合意に至らない可能性もある。時価総額が2000億円程度に落ち込むシャープにとって、鴻海から提示された6000億円規模の買収案は破格だ。朝日新聞デジタルによると、メインバンク内部からは「経済合理性からすれば、明らかに鴻海案が魅力的」との声が漏れている。金額面で劣る機構案を受け入れた場合、「株主に説明できない。有利な提案を無視したとして株主に訴訟を起こされる恐れすらある」という幹部すらいるという。

機構は1月末に内部委員会を開き、銀行への提案をまとめる見通しだ。交渉は当面、シャープの2015年4~12月期決算が発表される2月4日までがヤマ場とみられている。

シャープの歴史
シャープの電卓「歴史的製品」に認定(01 of34)
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電気・電子技術者による民間非営利団体(NPO)「米電気電子学会(IEEE)」から、歴史的重要製品として認定されたシャープの電卓(東京都内のホテル)\n2005年12月01日 (credit:時事通信社)
ワープロ(02 of34)
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シャープのワードプロセッサーで入力するタイピスト(大阪市北区)\n1982年05月06日 (credit:時事通信社)
カラー液晶ディスプレー(03 of34)
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世界初、シャープのノートパソコン用8.4型TFTカラー液晶ディスプレー。\n1991年09月09日 (credit:時事通信社)
子供向けの電子手帳(04 of34)
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女子中学生向けのシャープの電子手帳\n1993年11月09日 (credit:時事通信社)
携帯情報端末「テリオス」(05 of34)
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シャープが発売する携帯情報端末「テリオス」 (credit:時事通信社)
メール専用端末「アイプリメーラ」(06 of34)
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シャープが発売するプリンターと一体化した家庭向け電子メール専用端末「アイプリメーラ」\n1999年07月 (credit:時事通信社)
SDカード対応デジタルビデオカメラ(07 of34)
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シャープが発売するSDカードデジタルビデオカメラ「VL-MR1」\n2000年 (credit:時事通信社)
シャープの新ザウルス(08 of34)
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シャープが発売する新型ザウルスの試作機。\n2000年11月 (credit:時事通信社)
シャープの大画面液晶テレビ(09 of34)
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シャープが発売する大きな画面で精密な画像を映し出せる28型液晶テレビ。これだけの大きさのテレビを売り出すのは業界で初めて。価格は110万円。 (credit:時事通信社)
シャープのMDポータブルレコーダー「MD-MT77」(10 of34)
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シャープが発表した世界最小・最軽量のMDポータブルレコーダー「MD-MT77」(東京都)\n2000年11月06日 (credit:時事通信社)
シャープのカラー液晶テレビ(11 of34)
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シャープの液晶カラーテレビ「アクオス」(東京都)\n2000年12月19日 (credit:時事通信社)
シャープが発売するノートパソコン(12 of34)
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シャープが2001年6月23日に発売する本体の最も薄い部分の厚さが16.6ミリ、重量が1.31キロのノートパソコン「PC-MTI-H1」。同社によると、12.1インチの液晶画面を搭載したパソコンでは世界で最も薄く最軽量という。このパソコンは、画面部分の開閉に連動して上下するキーボードを採用するなどして薄型化するとともに、開発から製造まで国内で行っている。\n2001年05月17日 (credit:時事通信社)
「家庭の医学」を収録したシャープの電子辞書(13 of34)
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症状や病名、手当ての方法などを調べられる時事通信社発行の医療ガイド「家庭の医学」など市販の書籍9冊を収録したシャープの電子辞書。医療ガイドを丸ごと収録した電子辞書は初めて。\n2001年11月01日 (credit:時事通信社)
カラー液晶画面の電子辞書(14 of34)
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シャープが発売する業界初のカラー液晶画面の電子辞書「PW-C5000」\n2002年06月04日 (credit:時事通信社)
シャープの液晶テレビ「アクオス」(15 of34)
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シャープが発売する、地上波デジタル放送対応の液晶テレビ「AQUOS(アクオス)」の新シリーズ。4機種あり、価格は56万円から80万円。\n2003年 (credit:時事通信社)
シャープのカメラ付きファクス(16 of34)
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シャープから発売される31万画素カメラ搭載ファクス「ファッピィ」(東京都)\n2003年07月08日 (credit:時事通信社)
シャープの地上波対応薄型テレビ(17 of34)
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「シーテック・ジャパン2003」で発表したシャープの地上波対応薄型の大画面テレビ(千葉市の幕張メッセ)\n2003年10月07日 (credit:時事通信社)
電子辞書付きファクス(18 of34)
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シャープが開発した電子辞書付きファクス(大阪市北区の大阪機械記者クラブ)\n2004年01月16日 (credit:時事通信社)
シャープが発売するブルーレイ・ディスクレコーダー(19 of34)
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シャープが発売するハードディスク駆動装置(HDD)搭載のブルーレイ・ディスクレコーダー「BD―HD100」(東京都新宿区のシャープ市ヶ谷ビル)\n2004年11月11日 (credit:時事通信社)
名刺サイズのリスニング学習端末(20 of34)
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シャープの、英語のリスニング学習ができる名刺サイズの端末「PA―L100」。[シャープ提供]\n2005年 (credit:時事通信社)
シャープのポケット通訳機(21 of34)
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シャープがこのほど開発し、年内に発売を予定している「ポケット通訳機」(千葉市・幕張メッセのシーテック会場)\n2006年10月05日 (credit:時事通信社)
1台3画面の液晶ディスプレー(22 of34)
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シャープが初めて一般公開した左と右、正面から異なる映像を表示できる「トリプルビュー液晶」ディスプレー(神奈川・横浜市のパシフィコ横浜)\n2006年10月18日 (credit:時事通信社)
シャープのワンセグ受信できる電子辞書(23 of34)
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業界初のワンセグ受信が可能な電子辞書(大阪市北区の電子会館)\n2006年11月20日 (credit:時事通信社)
ソフトバンクモバイルが新商品発表(24 of34)
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携帯電話の春商戦向けにソフトバンクモバイルが発表した20色の「812SH」(シャープ製)(東京都内のホテル)\n2007年01月25日 (credit:時事通信社)
KDDIがスマートフォン新機種を発表(25 of34)
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KDDI(au)が発表した新型高機能携帯電話(スマートフォン)「IS01」(シャープ製)(右)と「IS02」(東芝製)(都内)\n2010年03月30日 (credit:時事通信社)
眼鏡不要の3D液晶(26 of34)
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シャープの専用眼鏡が不要の3D(三次元)液晶ディスプレー(東京・港区)\n2010年04月02日 (credit:時事通信社)
シャープの3D対応「AQUOS」(27 of34)
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シャープが発表した3次元(3D)対応テレビ「AQUOS(アクオス)クアトロン3D」(東京・港区)\n2010年05月31日 (credit:時事通信社)
シャープの電子看板向けディスプレー(28 of34)
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シャープのフレーム幅6.5ミリのデジタルサイネージ(電子看板)向けディスプレー(東京・港区)\n2010年06月07日 (credit:時事通信社)
ハンガー掛け乾燥の洗濯機(29 of34)
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しわを抑えるため、衣類をハンガーに掛けたまま乾燥させるシャープの縦型洗濯乾燥機「ES-TX910」(右)など。\n2011年09月06日 (credit:時事通信社)
シャープのロボット掃除機(30 of34)
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人間の声やスマートフォンで操作できるシャープのロボット掃除機「ココロボ」(大阪市北区)\n2012年05月08日 (credit:時事通信社)
暖房に使える布団乾燥機(31 of34)
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暖房に使えるシャープの布団乾燥機「プラズマクラスター乾燥機」。\n2012年10月05日 (credit:時事通信社)
シャープの高精細テレビ(32 of34)
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米家電見本市「国際CES」で公開されたシャープの高精細テレビ(アメリカ・ラスベガス)\n2015年01月05日 (credit:時事通信社)
「振り込め詐欺」対策を強化した電話機(33 of34)
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振り込め詐欺対策機能を強化したシャープのファクス付き電話機=5日、大阪市北区\n2015年02月05日 (credit:時事通信社)
シャープの創業者、故・早川徳次氏(34 of34)
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ハヤカワトクジ 早川電機工業社長 シャープ会長(当時)\n (credit:時事通信社)