「電子書籍は超つらかった」【cakes加藤×ハフポスト松浦】

出版社でベストセラーを手がけた後、自らデジタルコンテンツ・プラットフォームを立ち上げた加藤貞顕さんとハフィントン・ポスト日本版の松浦茂樹編集長が、ハフポスト日本版オープン目前の。思想家の東浩紀さんがプロデュースする知的空間(東京・五反田)を舞台に、これからのメディアに求められる「編集力」とは何かを徹底的に話し合いました。その論点をまとめてご紹介します。今回の話題は、「もしドラ」電子書籍化の舞台裏です。
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Chika Igaya

「cakes」CEO加藤貞顕さんと松浦茂樹ハフィントン・ポスト日本版編集長が徹底対談

出版社でベストセラーを手がけた後、自らデジタルコンテンツ・プラットフォーム「cakes」を立ち上げた加藤貞顕さんとハフィントン・ポスト日本版の松浦茂樹編集長が、ハフポスト日本版オープン目前の4月30日に緊急対談。思想家の東浩紀さんがプロデュースする知的空間「ゲンロンカフェ」(東京・五反田)を舞台に、これからのメディアに求められる「編集力」とは何かを徹底的に話し合いました。その論点をまとめてご紹介します。今回の話題は、「もしドラ」電子書籍化の舞台裏です。

加藤:僕はウェブの前に電子書籍をやってたんです。今、キンドルのおかげですごい盛り上がりつつありますが、2010年にiPadが出る時に「電子書籍元年」とかいって結構、話題になったんですよ。今が電子書籍元年な気がするんですが……。

その時に、出版社で「加藤、詳しいだろやれよ」ってことでやってたんですね。その頃は、キンドルもなかったので技術者と組んで、電子書籍リーダーのソフトとかを作ったりして、じゃあ「もしドラ」を電子書籍化するかって。その頃の出版社って、電子書籍をあんまりやりたくなかったんですよね。紙の本を問屋さんにおろして、問屋さんからお金をもらうビジネスだから、電子書籍ってむしろいけないことなんですよ。

だから、電子書籍やるにしても、一番売れてる本、村上春樹さんとかは出さないんですよ。じゃあ、孫正義さんの本出しとこうとか、電子書籍的な本を出す。しかも、定価は紙の本と一緒。僕はちょうど「もしドラ」やってたんで、その時に売れてたので、これでやりましょうっていって、しかも価格も定価の半額で売ったんですね。そしたら、やっぱりすごい売れたんです。でね、せっかく電子書籍リーダー作ったので、紙の本を50タイトルくらい電子に置き換えて売るっていうマーケティングを経験したんですよ。そしたらこれはあかんかもしれないということを思いまして。

紙の本を電子に置き換えると、一番最初に編集長が全ページちゃんとできてるかって確認するために読むんですけど、超つらいんですよ。なんでつらいかっていうと長いから。「もしドラ」はまだいいんですよ。わりと読みやすい本なので。でも、濃い目の本とかを電子書籍にすると、スマホで読むとつらい。長さについて、電子書籍ってどうなのよってことを思ったんです。

あともうひとつは、我々がiPad版も作ってる時に、真ん中に本の質感を再現するためにへこみみたいな影をつけるわけですよ。あれをデザイナーに発注する。それで影をもうちょっと鋭角にやってほしいなとか、グラデーションをもうちょっと薄くしてほしいとか、散々1時間くらい議論して、「この動きはなんでいるんだろう?」って話になる。

松浦:そもそもこれいるんだっけみたいな?

加藤:そしたら、「縦書きである必要あるんだっけ?」てなって、「もしかしてウェブでいいんじゃね?」って話に2010年の段階でなったんです。ただ、僕らの心がそこまでたどり着いてない。基本はまだ紙の本にあるから、しばらく経過期間はここに影を置いとくんだろうなと。だんだんこれが横書きになり、ウェブになりっていうことがこれから起こることなんだろうねって話をしてました。

(この連載のバックナンバーはフォトギャラリーよりご確認ください)

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