山本太郎氏の軽率行動から考える 参議院の歴史的価値と二院制の意義

参院議院運営委員会は11月8日、理事会を開催し、秋の園遊会で天皇陛下に手紙を渡した山本太郎参院議員について、山本氏を厳重注意とした上で、任期中は皇室行事への参加を認めない処分を決定した。この決定で参議院としての山本氏に対する処分は一段落することになる。だが参議院の関係者の中からは、山本氏の軽率な行動によって、二院制に関する議論が再開しかねないと懸念する声が聞こえてくる。
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山本太郎議員の軽率行動があぶり出す、参議院の歴史的価値と現代の存在意義

参院議院運営委員会は11月8日、理事会を開催し、秋の園遊会で天皇陛下に手紙を渡した山本太郎参院議員について、山本氏を厳重注意とした上で、任期中は皇室行事への参加を認めない処分を決定した。この決定で参議院としての山本氏に対する処分は一段落することになる。だが参議院の関係者の中からは、山本氏の軽率な行動によって、二院制に関する議論が再開しかねないと懸念する声が聞こえてくる。

山本氏の行動については多くの国民が否定的見解を示している。その理由は大きく分けて二つある。

ひとつは天皇陛下に対して失礼であるという礼儀に関するもの。もうひとつは、議会制民主主義を担う国会議員が天皇陛下に問題解決を依頼するという根本的矛盾に関するものである。

陛下に直訴するという行為は非礼であることは間違いないだろうが、やはり重大なのは後者であろう。特に山本氏が貴族院議員をそのルーツとする参議院議員であることが、ことの重大性に拍車をかけている。

日本は二院制を採用しているが、それは議決をより慎重に行うためという実務的な理由からだけでそうなっているわけではない。参議院は戦前の貴族院が前身であり、皇室を支えるための議会としてスタートしている。つまり、二院制は革命という暴力を経ずして、王制から民主的な立憲君主制へと移行した歴史の証明でもあるのだ。

マグナカルタ(大憲章)以降、800年をかけて王権と民主主義のバランスを取ってきた英国ほどではないが、少なくとも、明治憲法の制定、民主化運動(大正デモクラシー)、日本国憲法の制定という一連の流れの中で、国家を断絶することなく、また皇室の権威を損ねることなく、天皇から国民に権力を移譲させ、民主化を達成した象徴であることは間違いない(終戦と占領という外圧はあったが)。

だからこそ参議院には今でも天皇陛下が座る玉座が設置されている。参議院議員は、国民が天皇から権力を奪い取ることができた象徴であると同時に、一方では天皇制の最大の擁護者でもある。参議院議員の立場というのは実は非常に重いものなのだ。

このところ、ねじれ国会の問題から、参議院不要論が台頭している。確かに党利党略に染まった政党政治においては、二院制は「決められない」政治の象徴となってしまっている。また参議院には業界団体の票だけををバックにした利権政治家が多いのも事実である。だが参議院には上記のような歴史があり、一院制にしてしまえばよいというのは、あまりにも安直な議論であると懸念する人も少なくない。

このような時に、参議院の歴史的経緯を含めて、すべてをひっくり返してしまうような参議院議員が登場してしまったことは、参議院の存在価値を一気に薄めてしまいかねない。これもひとつの時代の流れなのだろうか?

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