「消費の中心地」原宿で、ゴミを出さない活動を“服好きの若者“が始めた理由

原宿のキャットストリートを拠点に「ごみを出さない地域作り」に挑戦するコミュニティがあります。
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中村元気さん
530

渋谷と原宿をつなぐ約1kmほどの裏通り、キャットストリート。個性的なショップやレストランがひしめくこの通りを拠点に、「ゼロウェイスト」を発信する活動家がいる。コミュニティ「530(ゴミゼロ)」の代表の中村元気さんだ。

ゼロウェイストとは、ごみをどう処理するかではなく、ごみ自体を生み出さない工夫をしようという考え方。

「トレンドが集まる原宿はまさに『消費の中心地』。でも裏を返せば、ごみの問題を考える上で象徴的な街でもあります。なぜなら、ごみをたどっていけば、そこには必ず消費があるから」。中村さんは、この街からゼロウェイストを発信する意味をこう語る。

多様な人が共存する原宿。この街でいかに地域全体を巻き込んで、ごみを出さない循環経済を作っていけるか。持続可能な社会のあり方が模索されている現代、地域コミュニティのあり方、そして私たち一人一人に求められることとは。中村さんに聞いた。

服好きの若者が知った、「服」の裏側にある真実

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キャットストリート
530

「古着好き」がきっかけで、キャットストリートに通うようになった中村さん。消費やごみに関心を持つようになったのも、服が入り口だった。

「大学時代、ファッションが社会に与える影響を初めて学びました。服を作るために大量の水や農薬が使われ、汚染水や二酸化炭素が排出されている場合があること、そして生産過程において劣悪な労働環境を強いられている人たちがいるかもしれないこと…。そんな事実を全く知らぬまま“服好き”を語っていた自分が、いかに浅かったかと知りました」

自分の小さな消費行動が実は、社会問題のスタートになっている。そんな気付きから消費、そしてその先のごみ問題に目を向けるようになった。

その後、キャットストリート周辺のごみ拾いからスタートさせた活動が、コミュニティ「530」に発展。今では活動は地域にとどまらず、企業や行政とも連携する。最近では、フードロス削減のためにパンの耳を使ったビール「bread beer」の商品企画に関わったり、ごみ問題に取り組む企業のサポートなども行なっている。

「売る側」の意識が変わることで「買う側」の生活が変わっていく

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キャットストリートでのゴミ拾い「CATs Cleanup」
530

中村さんら530が現在地域で準備している取り組みは、キャットストリート周辺で導入する「ブーメランバッグ」。レジ袋の有料化が7月1日から始まることを受けたアクションだ。

「ブーメランバッグ」とは、買い物時にエコバッグを無料で借りることができ、それを次回またお店に返却できるという仕組み。バッグは、地域のどのお店で返却してもいい。

「レジ袋を買うか、エコバッグを買うかという二択ではなく、便利で環境にも良いもう一つの選択肢を提案したかった」と中村さん。

バッグを返却するためにお客さんが改めて来店するきっかけにもなり、返却されたバッグは繰り返し使用することができる。余計な消費やごみが生まれないだけでなく、店にとってもメリットがある仕組みだ。

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「530」のメンバーと(左から4番目が中村さん)
530

 「ブーメランバッグ」のプロジェクトがそうであるように、中村さんら530の取り組みは「地域のお店」を巻き込むことを大事にしている。そこには、消費を促す「作り手」や「売り手」の意識を変えていきたいという意図があるという。

「ごみの問題を考えるとき、もちろん消費者が変わることも大切です。でも僕たちが考えたいのは、消費する人のライフスタイルは『売り手』の延長線上に存在するということ。だからこそ、売り手・作り手がなにを使ってどう作るかを変えていくことが、消費者の生活を変えていくことに繋がります」

一方で、自分たちの考えを押し付けることはしない、と中村さんは話す。

 「もちろん、取り組みの意図はしっかりと伝えます。でもお店が取り入れたいと思う形で、一緒にアクションを考えていくことを最優先にしています」

 ハードルの高いことを無理してやるのではなく「できること・やりたいこと」から地域全体で取り組んでいく。それが持続可能性につながる。

「消費の街である原宿から、お店を通して、いかに『消費』の前と後のストーリーを伝えることができるか。僕たちの挑戦が他の地域のモデルにもなればいいなと感じています」中村さんはそう意気込む。

ごみゼロの日、まずは目の前のごみのストーリーを想像してみて

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キャットストリートでのゴミ拾い「CATs Cleanup」
530

5月30日は「ごみゼロの日」。多くの人が「無駄なごみはいけない」とは知ってはいても、行動を起こせずにいる。私たち一人一人の意識は、どのようにしたら高まるのだろうか。

中村さんは毎週土曜日に行うキャットストリートでのゴミ拾い「CATs Cleanup」で、参加者によくこう問いかけるという。

「もし目の前のタバコの吸い殻が、雨の日に排水溝に流れて、それが川から海へ出て、魚が間違って食べてしまったら…?その魚を私たち誰かが食べるかもしれないことを想像してみてください」

捨てたごみの「その後」を想像してみること、それが第一歩と中村さんは話す。

「目の前の小さな問題が大きな世界と繋がっていること、そして地域からでも大きな問題の解決に関わることができるということを知ってもらいたい。どんなに小さなことでもやってみてください。少しでも行動を起こせたなら、あなたは立派な活動家です」