なぜアメックスには女性管理職が多いのか 「ハードよりハート」新社長の清原正治さん

なぜ日本企業では女性役員の比率が少ないのか。女性の管理職比率が35.9%、女性の役員比率が47%に達しているアメリカン・エキスプレス・インターナショナルの清原正治社長は、「従業員ひとり一人がダイバーシティーを受け入れる」ことが重要と力説した。
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Kosuke Takahashi

安倍政権は2020年までに企業や官庁の管理職の女性の割合を30%にするという目標を掲げている。しかし、実態は韓国と並び、先進国でも最低レベルの11.1%にとどまっている

なぜ日本企業では女性の管理職の比率が少ないのか。女性の管理職比率が35.9%、女性の役員比率が47%に達しているアメリカン・エキスプレス・インターナショナルの清原正治社長は、ハフポスト日本版の取材に応じ、「従業員ひとり一人がダイバーシティー(多様性)を受け入れる」ことが重要と力説。託児所などの施設や特別制度の設置よりも、多様な人材を活用しようとする社内意識の浸透が肝要との考えを示した。

■「最大のライバルは、キャッシュ」

――住友化学工業やGEコンシューマー・ファイナンス、日産自動車などを経て、今年9月15日付でアメリカン・エキスプレス・インターナショナルの社長に就任されました。経歴を見ますと、企業金融や財務、ファイナンスの仕事が多かったようですね。

清原:経歴を見て、若干誤解される部分があるのですが、住友化学では、企業の財務や経営企画を担当していました。しかし、その後のGEと日産自動車は、統括していたビジネス自体は、個人消費者向けの金融商品を業として提供していました。

例えば、自動車で言うと、自動車ローンや保険、自動車保有者に対するクレジットカードなどに関わっていました。

私のキャリア畑自体は、実は企業よりは圧倒的に個人消費者向けの金融商品の事業展開に携わってきました。

そういう意味では、(アメックスは)ようやく本業ど真ん中の、ホームグラウンドに帰って来たなとの気がします。

自動車メーカーですと、自動車が主役、金融が準主役みたいなところがありました。しかし、こちらは、中小企業の方を含め、消費者に対するいろいろな決済手段なり、金融なりの提供がメインストリームなので、私としては気持ちよい所に戻って来たなと思っています。

――中小企業の話が出ましたが、それは中小企業の経営者向けのサービスですか。

アメックスのイメージと合わないとおっしゃる方もいるが、今、伸びている事業領域として、個人事業主、あるいは中小企業のオーナーに、その方々の個人用途のみならず、ビジネス用途向けのカードサービスがあります。

ビジネス向けの用途と言いますと、コーポレートカードがあります。ただ、個人事業主の方は、結構、一体化して使っていて、場合によっては、単に接待以外に、仕入れなどでも使っています。例えば、歯科医師さんですと、いろいろな材料を仕入れたりするためにカードを使っています。そういうのを含めて、従来型のコーポレートカードを超えた、中小企業の方々を端から端まですべてサポートしようとする商品に注力しております。

――個人中小企業の経営者のカードの利用限度額はどれくらいですか。

実は他社とのユニークな違いの1つは、一律にカードの限度額を決めないということです。その時々のリアルタイムで、お客様に対して与信額を設定しています。場合によっては、お客様からもお電話いただいて、海外に行くとか、直近にこういう大きな買い物があるとかという声も聞かせていただいて、できる限り、その時々に提供できるものを提供するのが私たちのビジネスモデルです。

――ちなみに、国内での一番のライバル企業はどちらになるのですか。

昔ですと、ダイナース(クラブ)と申し上げていたかもしれませんが、今はキャッシュですね、変な話ですが。

我々のビジネス領域をどう捉えるかという点なのですが、プレミアムの高所得層が対象と見えなくともないが、そう捉えてはいないのです。

我々は、そこに合わせたセグメンテーションの商品開発をしている訳ではなく、常にベストのサービス、ベストのオファーをお客さんにしようと、その一点だけでやっています。そうなると、やはりそこそこの年会費をいただかないといけない。無料ではできない。

そこに一番最初に価値を見いだしていただいたお客さんがたまたまプレミアム層でした。本当はもっともっと全員に使っていただきたいと思っています。

そう考えると、ダイナースさんとか、Visaさんの プラチナカードがターゲットだとか言うことではなくて、やはりキャッシュが一番のライバルなのです。

明らかにキャッシュより優れているのですが、なかなか日本ではキャッシュのブランドが強くて、ライバルになっています。

■「今日の成功は明日のリスク」

――生え抜きでトップになったのではなく、違うところから来て転職されましたね。落下傘というか...。その辺り、戸惑うところはありませんでしたか。

違う部分と違わない部分がありました。

結構、違う部分は、元気な女性が多いことです。これは、GEでも、日産でも、ダイバーシティーというのは唱えられていたのですけれども、いざ数値目標の設定となると、やめてくださいというところが、日本の会社ではあるではないですか。

GEも実はダイバーシティーと言っていたのですけれども、例えば30代から40代中盤までの女性は多いのですが、その後が見当たらないということがありました。

ここ(アメックス)は本当にすべてのライフスタイルの女性がいます。上は役員で60代の女性を含めて、すべてのライフスタイルがまんべんなくいるというのが、GEとは違います。また、さらに女性が元気がある点ですかね。

――現在のアメックスが抱える課題は何ですか。

ここを直さなくてはいけないとか、ここが壊れてしまっているところとかは、本当にないです。前任者が13年間やって、リタイヤしたというのは、そういうことを示しているのだと思います。

私も最初の全従業員ミーティングで言ったのですが、「今日の成功は明日のリスク」であると。

成功って、みんなからも誉め称えられますし、自分たちの自信がついてきて、お客さんからも感謝される。ただ、それって、守ろうとすればすると、外にはチャレンジャーがいっぱい出てくる。チャレンジャーはチャレンジし続けて、何年も経つと、いずれ我々よりも良い商品を提供したり、我々が「こんなパートナーと組んでも意味ないないよね」と言っていたパートナーと組んで一緒に成長したりする。

マスコミでもそういうことがあると思うんですよね。我々はマスコミに例えると、割に既得既存のメディア、つまり、既存派なので、人にチャレンジされる前に、自分たちでチャレンジしていく、というカルチャーを作ることが1つの大きな課題ですかね。そういうカルチャーはあるには、あるのですが、常にそれってチャレンジし続けないと守りに回る可能性がありますね。

――日本はだんだん人口が減ってきていますが、カードの加入者はどのような現状になっているのでしょうか。

我々、一番見ているのは、billing、つまり、取扱高なのです。と言いますのも、カード枚数を増やしても、(カードが)眠っちゃうと、それって意味がないのです。日本のカードは得てして眠っちゃうカードが多いです。

従って、billingを見ています。それで言いますと、日本は他の先進国のどこより伸び続けています。

アメリカは比較的にカード先進国として知られていますが、あちらでは決済におけるキャッシュとカードの比率が、1対2です。つまり、カードの決済比率がキャッシュの2倍あります。日本は、キャッシュとカードの比率が1対4分の1です。

――すごい差ですね。これは、国民性とかの問題もあるでしょうか。

やはりキャッシュブランドが日本ではしっかりしていますから。

――デフレで金利が低かったから、タンス預金の方がいいという人が多かったためでしょうか。

現金のブランド力というのが、日本では強いですね。カード会社よりも強いですね。従って、我々チャレンジャーとしては、現金では得られない安心、例えば、返品保証や、壊れても保証できるというところを、もっとどうやってPRしていくかというところが1つ、ありますね。

――アメックスは「働きがいのある会社」の上位ランキングに入っております。この理由についてどう思いますか。

やはりダイバーシティーに対する受容性が、形の箱ものとか制度とかではなくて、従業員のひとり一人のソフトな部分、ハートな部分に根ざしているのだと思います。

例えば、女性の管理職比率は今、35.9%に達しています。役員の女性比率は47%です。

――すごく高いですね。

では、社内託児所があるかというと、無いです。世の中には、箱ものがたくさんあって、制度も「スペシャル女性制度」とかがある会社もいくらでもあると思います。でも、我々、そういうのは何もないんです。

――産休育児休暇を取られてからも、幹部になられている方もいらっしゃいますか。

役員の47%というのは、ライフサイクルをひとしきりやって、子供が巣立ったという方々です。

■「ひとり一人がダイバーシティーを受け入れること」

――日本企業に何かアドバイスお願い致します。

やはり箱ものだとか、すごくユニークな制度とかいうよりも、答えは、ひとり一人がダイバーシティーを受け入れるということですね。ダイバーシティーを受け入れるということは、ある種、不便さを受け入れるということでもあります。

自分と同じ時間軸で動いてくれないとか、頼んでも明日返って来ずに、明後日返ってくるとか。でも、それはトータルでマネージできる話で、それをどう受け入れられるか、ということだと思います。

ハードではなくて、ハートだと思います。

逆に、女性の管理職比率が35.9%、役員の女性比率は47%になると、女性をどう活用していくかということよりも、男性がどうやってがんばっていくかというステージですね。(笑)

――女性の役員が多いことで、男性視点ではない、ファイナンス事業やカード事業で多大な貢献はあるのでしょうか。

従来からクレジットカード業界って、どちらかというと男性社会なのです。業界の集まりに行くと、クレジットカードや信販、銀行やノンバンクも、男性社会です。

我々のカードサービスというのは、ポイントを交換するにも、単に物とか商品券とか言う物よりも、ユニークな体験が求められます。例えば、こういう所に行って、こういうことをするとか、ですね。そういうソフトなものは、すごくユニークです。買い物も体験ととらえた場合、そういういろいろなものは女性視点だと思います。

きよはら・せいじ

静岡県出身。1985年一橋大法卒、住友化学工業(現住友化学)入社。2008年新生フィナンシャル取締役、11年日産自動車組織開発本部長、13年日産自動車アジア・パシフィック出向。9月15日就任。

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