アフリカの女の子の1日を体験できる“すごろく”を作りたい!世界を変えるきっかけは「知ること」から

「国際協力ってそんなに難しくない。“世界”と“私”はつながっている」
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すごろくの主人公、12歳の女の子

アフリカの女の子の1日を体験できる「すごろく」を作りたい。3月8日の「国際女性デー」に向けて、そんなプロジェクトを掲げて活動している団体がある。身近な娯楽である「すごろく」を通じて、途上国の女の子が教育を受ける機会を奪われている現状を知ってもらう狙いだ。作成費用を朝日新聞社が運営するクラウドファンディングサイト「A-port(エーポート)」で募っている。

企画したのは、公益財団法人ケア・インターナショナルジャパン(ケア)。1987年に前身であるケア・ジャパンが発足。貧困のない世界を目指し、主にアフリカやアジアで女性や女の子たちの自立を支援し続けている。

すごろくの舞台はエチオピア。ある12歳の女の子が主人公だ。女の子の1日は、早朝の家畜の世話から始まり、休む間もなく水くみへ。3キロ離れた水くみ場へは、地雷原や崖をすり抜けなければたどり着けない。帰宅すると洗濯や食事作りをして、夕方にもまた水くみへ向かう。日が暮れる頃にはもうクタクタだ。両親からは「女の子は勉強しなくていい」と言われている。遊んだり学校へ行ったりといった、日本で当たり前の光景はそこにはない。

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すごろくのイメージ。イラストや写真がいっぱい
A-port

肩ひじはらずに、途上国の女の子のことを知ってもらうにはどうしたらいいか。メンバーがアイデアを出し合う中で、娯楽として身近な「すごろく」に決まった。主人公のモデルは、ケアが実際にエチオピアで支援するファティマちゃん(仮名)。すごろくで展開される1日の出来事は、ファティマちゃんの生活のほか、ケアのこれまでの途上国での経験やさまざまな文献を参考にして考えていった。

すごろくには、識字率や安全な水を確保できない人の数など、国際協力にまつわるデータもクイズ形式で盛り込み、遊びながら知識を増やせる工夫をした。また、ケアのオリジナル写真を元に書きおこしたイラストもふんだんにちりばめられ、遠く離れたアフリカの暮らしがイメージしやすくなっている。これまでにクラウドファンディングを通じて支援をした大学生からは「このすごろくを使って、世界の女の子のことを考えるきっかけを作りたい」といった声も寄せられているという。

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「Walk in her shoes」では水くみ体験もできる
A-port

企画したケアは、これまでも国際女性デーに合わせて活動してきた。2012年からは毎年、歩く国際協力「Walk in Her Shoes」を開催。昨年は600人が参加したという。

2019年は、より多くの人たちを巻き込んで行動をうながす1日にしたいと、半年以上前から準備を開始。昨夏にプロボノメンバーを募集し、メーカーやコンサルタント、総合商社などさまざまな本業を持つプロボノ6人が集まった。ケアスタッフ1人も加わり、27~59歳の男女7人がチームを結成して、活動を続けてきた。

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プロジェクトチームのメンバー
A-port

ケアらしく国際女性デーを盛り上げるにはどうしたらいいか。メンバーが議論を重ねる中で、ケアが長年海外で活動を続けている経験をいかそうと、途上国での女性の権利に焦点を当てることにしたという。

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打ち合わせをするプロジェクトメンバー
A-port

プロジェクトメンバーは、どんな思いで活動しているのか。メンバーの1人、竹下紗世さん(27)は、平和学を学ぶために進学したイギリスの大学院で、シリア出身・ナイジェリア出身の友人と出会った。彼女たちの実体験から、女性として紛争下や発展途上国に生まれたために、人生を選択することが困難な女性が数多く存在していることを改めて知ったという。たまたま自分は日本に生まれたため、人生を自分で選択することができたが、もし違う国にうまれていたら......そんな「ひょっとしたら自分だったかもしれない」女性たちの日々の暮らしを改善できたらと思い、今回プロボノに参加したという。

同じくプロボノメンバーの上地直人さん(39)は、「生まれた国や性別などが理由で、自分らしい生き方が実現できない現実がある。変えるためにはまず知ることから」と話す。自身もプロジェクトを通じて考え、行動することで、「女性だけ、男性だけでなく、『だれもが自分らしく輝ける世界』へ自分から一歩近づいていきたい」と話す。

実はこのプロジェクトは、すごろく作成にとどまらない。2月からは、SNSによる写真投稿がケアへの寄付につながる「フォトコンテスト」を実施。3月9日には、「ミス・ワールド2017日本代表」の山下晴加さんをゲストに迎えて、都内でトークイベントを開催する。さらにこのイベント会場には巨大すごろくを設けて、参加者に体験してもらう予定だ。クラウドファンディングで募った資金は、すごろく作成の他に、こうしたイベントなどにもあてるという。

プロジェクトメンバーで、ケアスタッフの高木美代子さん(43)は、「楽しくて、お得だけど、参加した帰り道に世界の女性や女の子たちの状況をなんとなく考えながら、お友達や家族に伝えたくなる。そんなイベントを開催したい」と話す。イベント参加者にはもれなく自宅で楽しめる「すごろく」ほか、主旨に賛同した多くの企業からの協賛品の数々が提供される。

「フォトコンテストやイベントへの参加、そしてA-portを通じたご支援を通じて、『国際協力ってそんなに難しくない』、『"世界"と"私"はつながっている』と少しでも感じていただければうれしい」と高木さんは、広く協力を呼びかけている。

クラウドファンディングの期間は3月4日まで。詳細は、こちらから。

(磯崎こず恵)