がん患者に伝えたい、「人に頼る」ことの大切さ

今回は、困ったときに「人を頼る」ことの大切さを書いてみます。
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デザイナーの広林依子と申します。私は現在29歳の、ごく普通の女性で、独身です。友達とカフェでワイワイ話したり、おしゃれを楽しんだり、ときには海外旅行に出かけたりしている普通の生活を送っています。

他の人と違うのは、3年前の26歳のときに乳がんを宣告され、そのときすでに骨に転移しており、それからステージ4のがん患者人生を送っていることです。

このブログでは、デザイナーの私が考えた、【ステージ4のがん患者のライフデザイン】の1例を紹介していきます。今回は、困ったときに「人を頼る」ことの大切さを書いてみます。

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・デザインの仕事は「人を頼る」こと

がんになる前、私は色んなブランドや団体の広告や商品デザインの仕事をしていました。

一つのデザインを完成させるためには、本当に多くの人が関わっています。

例えば、

・クリエイティブディレクター

・アートディレクター

・デザイナー

・フォトグラファー

・コピーライター

・校正者 ......etc

これらの人たちが関わって、チーム戦で作品を仕上げていきます。そこに一人で全てやろうという考え方はありません。こうして日々の仕事を通じて、自然と【人に頼る】という習慣が身についたと思います。

それは、ステージ4のがんになった後でも変わりませんでした。

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いまは、日常の出来事に合わせて自分のチームを作っています。

がんの治療や日常生活、気分転換など、頼りたいことを、相手に合わせて細分化したのです。頼る人が2、3人だと相手の精神的な負担が大きくなってしまう可能性もあるので、それを分散化させる狙いもあります。

例えば、

治療費は、私+父親、

料理は、母親

病院に付いてきてもらうのは、友人A

愚痴を聞いてもらうのは、友人B、C、D

ただ気分転換に遊ぶときは、友人E、F、G

お笑い担当は、友人H、I

美術館に行くときは、友人J、K

着物やお茶などの趣味を楽しむときは、友人L、M

このように、してほしいことを分散させて「人に頼る」ことで、自分自身は治療に専念できるようにしました。細かく分散させることによって、一人あたりの負担も減ります。私の場合は、趣味などのチームを作ることで上手く時を過ごすことができています。

・自分が困ったときに、チームは力になる

私が入院していたときのことです。ろくに食事が食べられず体調が悪くて冷静に事態を把握できなかったときに、普段から結成していたチームの力は発揮されました。

家族には身の回りの世話を頼みました。今後の治療方針は、友人1に主治医と徹底的に話をしてもらいました。そして、友人2に治療方針を徹底的に相談しました。

つらい状況の中でふっと息を抜けるような贈りものやオススメの本を贈ってくれたのは友人3、4でした。また、入院中に身動きの取れない私と一緒に物を作る【生産活動】の機会を与えてくれ、手助けしてくれたのが、友人5、6、7でした。

主治医と話をしてくれた友人1は、そのとき私なりに冷静に悩み考え、導き出した治療の方針に対して「間違っていない」と断言してくれました。

そして「意思決定のときにポジティブになるのは無用だけれど、意思決定をして治療方針を決めた後は、ポジティブに治療を受けるのが有用なんじゃないか」と力強く言ってくれました。

また入院中の私に、素敵な贈り物を届けてくれたり、生産活動の機会を与えてくれた友人たちにも非常に感謝しています。以前に書きましたが、デザイナーの私にとって生きる上で大切にすべきは、生きる長さではなく、新しく何かを学び、形にして発信し続けていくこと。つまり【生産活動】の時間なのです。

このように、本当に困ったときに、みんなに頼ったことで、年代もタイプも違う色々な友人の考えやアイデアが、私をより良い方向に導いてくれました。体調が悪いときもネガティブにならず、命を大切にして道を踏み外さずにすみました。

・病気のことを話せる友人をみつけよう

とはいえ、自分の病気のことをなかなか人に話せず、一人で抱え込む人は沢山いると思います。

そんなときは、病気のことを理解してもらいやすい友達を見つけてみましょう。患者会やイベントなどに参加してみるのもいいですが、気軽にすぐ始められるのが、「Twitterで同じ病気の人のアカウントをフォローする」ことです。

Twitterは、お互いの顔や素性を知らせなくていいので気楽に始められます。相互フォローしてメッセージをやりとりするようになれば、その後は電話やSkypeなどを通じて家で話せることもあります。

年齢が違っても、考えていることや悩みは似ていることが多いですし、顔が見えない分フラットに話しやすいです。いつでもどこでも毎日話せるので、気負わず力を抜いて話せます。

プロフィールに病気のことを書いている人は、面識のない人でも温かく迎え入れてくれることが多いです。私もTwitterを使って、17歳の高校生から51歳の主婦まで、様々な年代の様々ながん種の仲間に出会い、今も仲良くしています。

Twitterを通じて、がん種に関係なく、同じがんを治療する仲間と友人になることができました。自分のがん種以外のことを知ることで、がんの知識が広がりますし、がん関連のサービスやイベントなどを知るきっかけなどにもなりました。

信頼できる友人が出来る一方で、時には意見が合わず疎遠になることもありました。でもネットの世界は広いですから、また新しい友人を作れば良いのです。

Twitterなどの「友達かも?」機能で、新たながん友を見つけることもできますし、別のがん患者さんから相互フォローのリクエストが来ることもあります。

地方の方は、患者会などの機会も少なくがん患者さんと出会いにくいこともあり、Twitter利用者は多いように感じます。

・遠慮せず人を頼ろう

同じがんを治療する仲間やがんに関心がある人、趣味が同じ人......様々な人と話すことで、自分だけでは知り得なかった情報を提供してもらえたり、新たな価値観をもたらしてくれたりします。どうか、一人で抱え込まないでくださいね。