シビックイノベーションはどう起こしたかーーシカゴのシビックテック第一人者が語る #civictechjp

3月29日科学技術館で開催されたイベント「CIVIC TECH FORUM」。マチノコトでもいくつかのセッションを取材しました。
|

Open Image Modal

3月29日科学技術館で開催されたイベント「CIVIC TECH FORUM」。マチノコトでもいくつかのセッションを取材しました。

中でも多くの人の注目を集めたのは、非エンジニア出身でありながら、北米でシビックテクノロジストとして活動しているクリストファー・ウィテカーさんによる、シビックテックのための新しいエコシステムづくり「シビックテック大国の、ちいさな取り組み」と題した基調講演。

州政府機関勤務を経て、シビックテックに特化したコンサルティング会社を創業し、Code for Americaのコ米中西部地域のコーディネーターを務め、シカゴ地域のシビックテックコミュニティの活性化に寄与しているというシビックテックのキーパーソンがこれまでの活動について語りました。

Open Image Modal

プロフィール:クリストファー・ウィテカー。イリノイ州政府機関勤務などを経てシビックテックに特化したコンサルティング会社CivicWhitakerを経営、Smart Chicago Collaborativeのコンサルタントとしてシカゴ地域のシビックハッキング・コミュニティ活性に貢献。ホワイトハウスからの表彰実績もある市民活動家。コード・フォー・アメリカの米中西部地域のコーディネーターも務める。

シビックコミュニティのハブ「The OpenGov Hack Night」

Open Image Modal

彼が関わっている活動のひとつに、「The OpenGov Hack Night」というコミュニティがあります。これは、シカゴのコワーキングスペースで毎週開催されているイベントで、行政機関、企業、市民団体、ジャーナリスト、エンジニア、デザイナーなど、最前線で市をよりよくしようと取り組んでいる人たちが集まっているそうです。

このコミュニティが重要なことは、市も参加していること。シカゴ市のチーフデータオフィサーもイベントに頻繁に参加していて、シカゴ市のデータに関して聞きたいことがあれば、すぐに聞くことができる状態になっているんだとか。

行政と市民の距離が近いことで、柔軟かつスピード感をもって物事を進めることにつながりそうです。またクリストファーさんが、コミュニティへの参加障壁が高くならないように心がけているという話が印象的でした。

開発したシビックサービスたち

クリストファーさんはこれまでにいくつもの市民向けのサービスの誕生に携わってきました。

Largelots.org

Open Image Modal

景気後退のせいでシカゴ市には空き家になった建物が多数存在しているそうです。市は建物を解体し、その土地の所有権を取得します。ですが、実際は市はこの土地の所有権を持ちたくないと考えています。

そこで、シカゴ市の南部にあるコミュニティ「チームワーク・エングルウッド」は市と協働し、地元にあるシビックテクノロジー活用会社の「データメイド」と共に、こうした空き地必要としている市民が1ドルで土地を購入できるサイト「Largelots.org」を構築したそうです。

Expunge.io

Open Image Modal

地元の青年組織「ミクバチャレンジ」とスマートシカゴが協働して、補導歴などの非行記録を消すことができるアプリ「Expunge.io」を開発しました。非行記録のために、就職したり大学に入学したりすることが難しくなっていた人の課題を解決しました。

Foodborne Chicago

Open Image Modal

スマートシカゴは、市の保健所部門と一緒に食中毒に関する情報をツイッターから集めるシステム「Foodborne Chicago」を開発しました。飲食店で何かを食べて食中毒になったことをツイートすると、保健部門から詳細の情報をたずねるツイートが送られてきます。

人々から食中毒に関する情報を集めて、担当部局は該当するレストランに調査に行くというサービス。

シビックテックを進めるために必要な援助

こうした活動を実施していくために、シカゴ市の行政ははデータの提供にのみ専念しているそうです。クリストファー氏は、

データを燃料・材料だとみなしています。透明性・イノヴェーション・ビジネスに対しての燃料です。

とコメントしています。

市は行政内にある全てのビジネスシステムを市のデータ・ポータルに直接接続できるようにプロセスを改善。道路の穴を埋めたときなど、そのデータは自動的に市のデータポータルにアップロードされ、それを市民が利用することが可能になります。

市の職員の業務自体はこれまでと変わらず、追加の作業も発生しないようになっています。GitHub上でオープンソースとして公開されている「オープンETLツールキット」を利用することで、簡単に導入できるようになっており、かつ他の都市でも使えるようになっています。

経験したことを発信していく

クリストファー氏は、こうした自分たちの活動のストーリーを記事を書き、映像をアップロードすることで、他の人にも伝えられるようにしています。

毎週開催している、「オープン・ガバメント・ハック・ナイト」はオンラインで中継され、発表された内容のブログ記事が掲載されます。

これまでの経験をどのように実施したのかを記すことで、新たにこの分野に参入しようという新しいシビックテックの実践者の役に立つようにと心がけているそうです。

3年間でスマート・シカゴからシビック・イノベーションについて400以上のブログ記事を掲載し、300以上の動画をYouTubeにアップロードした他、書籍も出版したそうです。

クリストファーさん「この分野でかなりの活動をしてきましたが、まだまだシビックテックは新しい分野です。こうしたやり方は誰も学校で学んできていません。そこで、どのようにすればうまくいくのか、いかないかを記録していくことはとても重要です

継続した活動を可能にするために

こうした活動を行っていく上で大切になってくるのが、どのようにして活動するためのリソースを確保するのか、ということ。最初は有志のボランティアで活動は始められますが、複雑なアプリを開発しようとするとボランティアでは時間が足りなくなってしまいます。

クリストファーさん「例えば、どこで予防注射が打てるかを表示するような検索マップを作ることはできます。ですが、より複雑で、困難な課題を解決しようとすると、フルタイムで働いてくれる人が必要になります。そのためには資金獲得を考えなければなりません」

2007年にマッカーサー財団、シカゴ・コミュニティ・トラスト、シカゴ市は共同で「City that Networks」というタイトルのレポートを出しました。これは、デジタル革命が都市機能の動き方を変えていくことになるだろうということを伝えた内容のもの。

クリストファーさん「シカゴのリーダーたちは、都市におけるデジタル革命を実現するため、この三つの組織が「スマート・シカゴ・コラボラティブ」となりました。組織はシカゴ・コミュニティ・トラストを母体として、三つの組織の管理層はそのままに残ります。マッカーサー財団は資金を出し、シカゴ市が管理層に加わりました」

これにより、資金の獲得ができ、「スマート・シカゴ・コラボラティブ」はアプリ開発やパートナーとの折衝、他コミュニティ組織へのアドバイスができる人々を雇えるように。

シカゴ市で市民向けアプリを開発しようとする人は誰でも、スマート・シカゴが無料でサーバーのホスティングを行っているそうです。無料でユーザーテストや「Twilio(トゥイリオ)」や「Mapbox(マップボックス)」といった開発ツールへのアクセス権も提供しているそうです。

シビックイノベーションのムーブメント

クリストファーさんは、「Code for America」のメンバーのひとりとして活動することで得られているネットワークのパワーについてもコメント。「mrelief」というウェブサイトの事例を使いながら解説します。

Open Image Modal

「mrelief」は市民がどのような福祉サービスを受けることが可能かを表示してくれるウェブサイトです。

シカゴ市における福祉サービスは市の複数部署やNPOによって運営されており、受給資格もそれぞれ別で、適切な福祉サービスを見つけたり、申請できる場所がないため、それぞれ部署ごとに申請することが必要でとても時間がかかっていました。

「オープン・ガバメント・ハックナイト」に市の企画部の人が来て、この問題を話したことから、「mrelief」の原型となるアイデアが生まれました。その後、資金を獲得してサービスの開発が実施されました。

クリストファーさん「スマート・シカゴは「Code for America」と協業しているので、このアプリを「Code for America」のヘルスケアチームに紹介しました。ヘルスケアチームはまさに「mrelief」が解決しようとしている課題に取り組んでおり、この協業はエム・リリーフのサービス改善に役立ちました」

「mrelief」が発表された後、チームは成果を「オープン・ガバメント・ハックナイト」で発表し、ブログを発表したため、この成果は国内に広がったそうです。

「mrelief」はシカゴで大きな成功を収めた後、スマート・シカゴが彼らに対して1万5000ドル(約180万円)の賞金を与え、その資金が彼らの活動を引き続きサポートすることになっているそうです。

クリストファーさんがこれまで実践してきたことは、これから日本の各都市においてシビックイノベーションを起こしていくためのヒントになります。

行政の人も含めて都市のステークホルダーたちが集う場を作り、市民向けサービスのアイデアを話し合う。他の組織団体とネットワークを結び、互いのナレッジを活かすことで課題解決を早め、経験したことは後から続く人たちのために発信していく。

日本でも起こり始めているシビックイノベーションの波を大きくしていけるかどうかは、これからの私たちの活動にかかっていそうです。

Code for Japan / Civic Tech Forum (Japanese Version) from Christopher Whitaker

(2015年3月30日の「マチノコト」より転載)