電通に憤ったみんな、その怒りをこの署名にぶつけてくれ!!

日本のどこかで、また若者が長時間労働にボロ雑巾のように痛めつけられ、命を落としていくでしょう。
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まつり
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電通の新卒1年目の女子社員の高橋まつりさんが身を投げたのは、去年のクリスマス。

皆さんは早く帰って、子どもたちとケーキを囲めていたのではないでしょうか。

しかし、彼女は100時間以上の残業をさせられ、上司からは「なに目を充血させてるの。女子力ないね」と言われ、「2時間しか寝れない」というツイートをし、そして24年間の生涯を、自らの手で閉じました。

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「離婚して一人親になったお母さんを、楽にしてあげたい」と猛勉強して東京大学に入った、頑張り屋さんの若者の未来は、永久に失われたのでした。

正直、僕はこの事件を聞いて、ひどく嫌な気分になりました。もっというと、電通の経営陣は若者の命を奪っておいて、なんで辞めないの?と憤りに満ちた思いを感じました。少なくとも、違法な長時間労働については、法的な制裁を受けるべきです。

日本中にある電通

しかし、気づいたのです。これは電通だけに憤り、電通だけが罰せられても、本当の問題は解決しない、と。

なぜなら、日本には無数にあるからです。この電通のような企業が。

政府の過労死白書によると、過労死ラインの残業80時間を超えるのは、全企業の2割。全企業が421万社なので、84万社が過労死で社員を殺す可能性がある、ということです。

ちょっと待って。2割ですよ。20%の確率で、飲むと死ぬかもしれないビールを、せーので飲もうね、っていうゲームがあったら、皆さんやりますか?

そう、日本中に電通があるんです。だから、電通だけを叩いてもダメで、この構造そのものを叩かないとダメなんです。そんなの無理って?いや、実は良い方法があるんです。

働き方改革のセンターピン

日本で長時間労働が多い理由。それは、長時間労働が「合法」だからです。どういうことか。企業は普通、社員を週に40時間しか働かせられません。皆さんの多くは、1日8時間労働だと思います。

でも、36協定という労使協定(*)を結べば、いくらでも働かせられる。合法的に。

いくらでも? そんなバカな。いや、ほんとです。例えばワタミはかつて、過労死ラインの1.5倍、残業上限月120時間で36協定を結んでいました。そしてこれは合法でした。

長時間労働が合法なら、そりゃあ企業はやるでしょう。何が悪いんですか、と。だったら、長時間労働を違法化してしまえば良いんです。少なくともどんな労使協定があろうが、過労死ラインを超えさせてはいけません。

そんなの理想論だって? いやいやいや。実はEUでは、とっくにこの「長時間労働の違法化」はなされています。平均週48時間が法律上の上限で、違反の場合は罰則があります。そして労働生産性は、日本より高いのです。

さらにはEUには、終業から始業まで11時間休ませないといけない、という「インターバル規制」があります。おそらく夜中まで働いて、2時間しか寝れず出社した高橋さんには、インターバルはなかったでしょう。

この「労働時間の上限規制」と「インターバル規制」の導入が、働き方改革のセンターピンなのです。

失われゆくチャンス

そしてこの2つの規制を始めとした、働き方改革を行う千載一遇のチャンスが巡ってきました。本年9月から始まった「働き方改革実現会議」で、安倍総理自ら参加する力の入れようです。

しかし、せっかくここまできた働き方改革ムーブメントですが、急速に機会は失われようとしています。産業界からのロビイングにより、一部の閣僚が上限規制に水面下で反対し、会議メンバーの中に、上限規制反対派の民間委員も就任しました。

産業界にとっては、これまで無尽蔵だったら人的資源を制限されることへの恐怖があり、それが政治的パワーとなって働き方改革を妨げる方向に向かっているそうなのです。

死者のために、そして子どもたちのために声をあげよう

このままでは、おそらく改革は微温的なもので終わるでしょう。そして日本のどこかで、また若者が長時間労働にボロ雑巾のように痛めつけられ、命を落としていくでしょう。

それで良いのか。私たちはこの狂った制度を、私たちの子どもの世代に残して本当に良いのでしょうか。いつか我が子が嬉々として入社した会社に殺されてから、あああの時声をあげておけば良かった、と叫ぶのでしょうか。

少なくとも、僕は今ベストを尽くしたいと思います。(株)ワークライフバランス社長の小室淑恵さんを始めとした、働き方改革の志士たちが、法改正を求める署名キャンペーンを始めました。この署名に参加することで、意思表示したいと思います。

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国民の意思表示のうねりが、改革派の政治家の背中を押し、反対派の勢力の意志を削ぎます。皆さん、声を集めましょう。人の命を奪う制度を変えましょう。

それが亡くなった高橋まつりさんへの、いやこれまで過労死で倒れた幾万人の同胞たちへの、せめてもの弔いになることを願って。

*36協定:労働基準法36条で定めた内容に基づいた協定を、俗にこう呼んでいる。ちなみに正確に言うと、36協定を結んでも残業時間は45時間が限度だが、特別条項を設定すればリミッターを(期限付きで)外せます。抜け穴です。

産業界にとっては、これまで無尽蔵だったら人的資源を制限されることへの恐怖があり、それが政治的パワーとなって働き方改革を妨げる方向に向かっているのです。

(2016年10月15日「駒崎弘樹公式サイト」より転載)