LED照明でスマホカメラの盗撮防止

発光ダイオード(LED)照明によるスマートフォン(スマホ)カメラの盗撮防止システムのプロトタイプを、立命館大学理工学部電子情報工学科の熊木武志講師らが開発した。可視光を利用して、一定の空間で盗撮を防ぐシステムは世界初という。
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発光ダイオード(LED)照明によるスマートフォン(スマホ)カメラの盗撮防止システムのプロトタイプを、立命館大学理工学部電子情報工学科の熊木武志(くまき たけし)講師らが開発した。可視光を利用して、一定の空間で盗撮を防ぐシステムは世界初という。スマホカメラを使った盗撮は急増しており、その対策に将来役立ちそうだ。9月3日に京都市で実演して発表した。

警察庁の集計によると、現在の盗撮事件の3分の2はカメラ付携帯やスマホによるもので、スマホの普及に伴い、その割合と数は増加傾向にある。着用できるウェアラブル端末が普及すれば、盗撮はさらに巧妙化し、増加すると予想されている。盗撮を制限するために、撮影時にシャッター音を鳴らしたり、端末の角度を検知して撮影できなくしたりするなどの方法はあるが、決め手となっていない。

研究グループは、プライバシーを保護したい空間内で送信機(LED照明)と受信機(スマホ)の信号のやり取りで、カメラ撮影を制御するシステムを作った。LEDが発する光の照度の強弱を人に感知できない程度に変化させて送信する。スマホのカメラが可視光を受信した際に信号(照度)パターンを、スマホ内のアプリで自動処理して瞬時にパターンを識別する仕組みを考案し、実現した。実演では、端末がLED照明の情報を受け取ると、「Warning」という文字が画面に表示されて、数秒でカメラ機能が使えなくなった。

このシステムのLED照明を駅などの公共空間に導入し、専用のアプリをスマホなどの携帯端末に内蔵すれば、一定の空間内に人が入ると、携帯端末のカメラを使えないようにすることができる。また、カメラ撮影だけでなく、その他の電源や音などさまざまな処理を制限することもできる。この成果は、5月に開催された電子情報通信学会のワークショップでIEEE SSCS Kansai Chapter Academic Research Awardを受賞した。特許も出願した。

熊木武志講師は「太陽光が混じると、検知能力が弱くなるというのが課題だ。現在は、アプリを端末に利用する仕組みだが、将来は、この働きを回路化して組み込むことを目指している。カラーコピー機に紙幣偽造防止機能がついているのと同様に、盗撮防止機能がカメラ搭載端末にも求められる。LEDの普及がこのシステムを可能にした。この新技術を改良、発展させて、盗撮被害を減らしたい」と話している。

関連リンク

・科学技術振興機構(JST) プレスリリース