利根川はTone Riverだけど、荒川はArakawa River。えっ、どういうルール?

霞ヶ浦、大山、鴨川、英語ではどう表記する?
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国土地理院は1月6日、「外国人に分かりやすい地図」の表記方法に関する報告書を発表した。2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催や観光立国の実現に向けて、地名や施設名の英語表記を統一したい狙いだ。

これまで外国人向けの地図における外国語の地名表記や地図記号は、標準的なガイドライン類が存在しない状態で、地方自治体や民間企業などが、オリンピックなどに向けて独自に仕様を検討していた。

これでは、検討のコストが掛かるとともに、地図によって表記がまちまちになったり、外国人になじみが薄い国内向け地図記号がそのまま用いられるような事も考えられる。そのため、国土地理院が標準を作成することになり、有識者や関連機関などが集まり検討を行ってきた。

検討においては、大きく2通りの方法が検討された。利根川を「Tonegawa River」として「River」を追加する「追加方式」か、川に当たる部分を「River」に置き換えて「Tone River」とする「置換方式」の2つだ。

検討の結果、「川」や「山」の部分を「River」や「Mt.」に置き換える置換方式が基本となった。利根川は「Tone River」、富士山は「Mt. Fuji」などと表記する。

ただし、「江戸川区」「荒川区」などのように、居住地名、公共施設名などに名前が使用されている場合には、「Edogawa River」、「Arakawa River」とするなど、例外も認める。他にも、立山を「Mt. Tate」としたり、西湖を「Lake Sai」としたりすると意味がわからなくなるものは、「Mt. Tateyama」「Lake Saiko」などで良いとするなど、様々な例外が認められることになる。

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この地名、英語の地図表記はこうなる
霞ヶ浦(かすみがうら)(01 of42)
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茨城県 (credit:shichinohe via Getty Images)
Lake Kasumigaura(02 of42)
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地形を表す部分の英単語を日本語に直訳しても、もとの日本語に該当する部分がないため、置換方式では日本人には通じない
大山(だいせん)(03 of42)
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鳥取県 (credit:shuntaro nishimura via Getty Images)
Mt. Daisen(04 of42)
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置換方式では日本人が理解できない。
鴨川(かもがわ)(05 of42)
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京都府 (credit:Frank Carter via Getty Images)
Kamo River(06 of42)
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鴨川は、高野川との合流点より上流部が賀茂川(かもがわ)と呼ばれることがある。「賀茂」は地名全体が居住地名、公共施設名などに使用されている場合にあたり、追加方式とする。
中川(なかがわ)(07 of42)
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福岡県 (credit:Brian Kennedy via Getty Images)
Nakagawa River(08 of42)
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川、峠、海岸(地形を表す英語が末尾に付くもの)は原則置換方式。ただし、固有名詞的部分の読みが2 音拍で漢字1 文字の場合は原則、追加方式
多摩川(たまがわ)(09 of42)
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関東地区 (credit:goto-photo via Getty Images)
Tama River(10 of42)
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多摩川は、多摩川駅はあるが、多摩市、多摩丘陵、○○大学多摩校舎、多摩動物公園など多摩だけで使用されることが多いため置換方式によるTama River とする。
秋吉台(あきよしだい)(11 of42)
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山口県 (credit:MIXA via Getty Images)
Akiyoshidai Plateau(12 of42)
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「台」はPlateau の標準的な訳「台地」と異なる。
犬吠埼(いぬぼうさき)(13 of42)
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千葉県 (credit:dreamnikon via Getty Images)
Cape Inubosaki(14 of42)
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地形を表す部分が標準的な漢字及び読みに該当しない場合は追加方式
日本橋(にほんばし)※橋の名前(15 of42)
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東京都 (credit:takenobu via Getty Images)
Nihonbashi Bridge(16 of42)
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橋の部分の表現は「橋」「大橋」「ブリッジ」は、置換方式により「橋」、「ブリッジ」をBridge に置き換える。ただし、日本橋、二重橋のように居住地名や駅名、観光名所として名称全体が一体化しているものについては追加方式による。
九十九里浜(くじゅうくりはま)(17 of42)
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千葉県 (credit:Nemo\'s great uncle/Flickr)
Kujukuri Beach(18 of42)
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固有名詞的部分の読みが3 音拍以上の場合は原則置換方式。
琵琶湖大橋(びわこおおはし)(19 of42)
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滋賀県 (credit:Yasuo Murota via Getty Images)
Biwako-ohashi Bridge(20 of42)
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橋の部分の表現は「橋」「大橋」「ブリッジ」は、置換方式により「橋」、「ブリッジ」をBridge に置き換える。ただし、「大橋」の場合は追加方式により○○-ohashi Bridge とする。
熊本城(くまもとじょう)(21 of42)
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(credit:Travel Ink via Getty Images)
Kumamoto Castle(22 of42)
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城の部分の表現はほぼすべて「城」である。置換方式により城をCastle に置き換える。
日比谷通り(ひびやどおり)(23 of42)
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東京都 (credit:Laurie Noble via Getty Images)
Hibiya-dori Avenue(24 of42)
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道路は、部分の表現が「通り」、「道」、「筋」、「路」、「街道」、「道路」など様々であるため、追加方式による。ただし、「道路の案内標識の英語による表示に関する告示」や道路管理者が定める名称が追加方式による表記と異なる場合は、これらの告示等に倣う。
西湖(さいこ)(25 of42)
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山梨県 (credit:ULTRA.F via Getty Images)
Lake Saiko(26 of42)
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固有名詞的部分の読みが2 音拍で漢字1 文字の場合は原則追加方式
那珂川(なかがわ)(27 of42)
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栃木県 (credit:jaimax via Getty Images)
Naka River(28 of42)
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川、峠、海岸(地形を表す英語が末尾に付くもの)は原則置換方式。
佐田岬(さだみさき)(29 of42)
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愛媛県 (credit:MIXA via Getty Images)
Cape Sadamisaki(30 of42)
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固有名詞的部分の読みが2 音拍で漢字1 文字でない場合(漢字2 文字、平仮名2 文字、片仮名2 文字の場合) 、山、湖、岬(地形を表す英語が先頭に付くもの)は原則追加方式
湖遊館新駅(こゆうかんしんえき)(31 of42)
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島根県 (credit:Wikimedia Commons)
Koyukanshin-eki Station(32 of42)
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駅の部分の表現は原則すべて「駅」である。このため、置換方式により「駅」を Station に置き換える。ただし、「新駅」は追加方式によりshin-eki Station とする。
筑波山(つくばさん)(33 of42)
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茨城県 (credit:GYRO PHOTOGRAPHY/amanaimagesRF via Getty Images)
Mt. Tsukuba(34 of42)
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「筑波」という地名の固有名詞+「山」という地形と捉えられるため置換方式
サロマ湖(さろまこ)(35 of42)
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北海道 (credit:gontabunta via Getty Images)
Lake Saroma(36 of42)
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固有名詞的部分の読みが3 音拍以上の場合は原則置換方式
阿蘇山(あそざん)(37 of42)
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熊本県 (credit:@hapidayss via Getty Images)
Mt. Aso(38 of42)
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「阿蘇」という地名の固有名詞+「山」という地形と捉えられるため置換方式
勝鬨橋(かちどきばし)(39 of42)
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東京都 (credit:vladimir zakharov via Getty Images)
Kachidoki Bridge(40 of42)
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橋の部分の表現は「橋」「大橋」「ブリッジ」は、置換方式により「橋」、「ブリッジ」をBridge に置き換える。
東京駅(とうきょうえき)(41 of42)
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東京都 (credit:Ralph Paprzycki via Getty Images)
Tokyo Station(42 of42)
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駅の部分の表現は原則すべて「駅」である。このため、置換方式により「駅」を Station に置き換える。

ただし、英語表記ルールは日本及び日本語に予備知識のない、日本に初めて来る外国人にもわかりやすい表記を目的として作成したものであり、そのルールに従った表記が日本政府としての公式の英語表記、アルファベット表記であることを保証するものではない。

なお、報告書では地図記号についてもまとめられており、寺は「卍」ではなく三重塔の記号、交番のマークも◯と✕を組み合わせたものではなく警官の記号となっている。

世界の「変な地名」
スケヴェニンゲン (オランダ)(01 of31)
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スケベニンゲンのビーチで、新年の寒中水泳を楽しむ人々。現地読みは「スヘフェニンゲン」。 (credit:Peter Dejong/AP)
ボインシティ (アメリカ)(02 of31)
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ミシガン州にある街。ボイン川が流れている。 (credit:Wikimedia)
マルデアホ (アルゼンチン)(03 of31)
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アルゼンチンの首都ブエノスアイレスの南にある、大西洋岸の観光地。 (credit:Corelliano/Flickr)
マダカシラ (インド)(04 of31)
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アーンドラ・プラデーシュ州にある町。岩山に築かれたマダカシラ要塞で有名。 (credit:prakash manjrekar/panoramio.com)
オナラスカ (アメリカ)(05 of31)
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ウィスコンシン州にある人口2万人程度の町。スコットランドの詩人トーマス·キャンベルの作品「希望の喜び」に出てくる、アリューシャン列島のウナラスカ島にちなんで名付けられた。 (credit:Wikimedia)
マヌケ (インド)(06 of31)
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パンジャブ州にある村。写真は、マヌケ村の近郊にあるシク教徒の歴史学校に掲げられた、シク教徒への弾圧を示す彫刻。 (credit:appaji/Flickr)
ナンパ (アメリカ)(07 of31)
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アメリカ合衆国アイダホ州南西部に位置する都市。ナンパ」という名前はモカシン(鹿皮製の靴)あるいは足跡を意味するショショーニ族の言葉から来ている。 (credit:gharness/Flickr)
ワインガプー (インドネシア)(08 of31)
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スンバ島で最も大きい町で、マタハウ空港がある。フェリーによって近隣の島と結ばれている。地域人口は約5万人。 (credit:jbeaulieu/Flickr)
シリフケ (トルコ)(09 of31)
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トルコ・メルスィン県にある町。ギョクス川に沿って豊かな田園風景が広がっている。 (credit:Wikimedia)
コマールノ (スロバキア)(10 of31)
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ドナウ川に面した町。首都ブラチスラヴァから100キロほど離れている。 (credit:Hellyana/Flickr)
ハゲ (韓国)(11 of31)
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ソウル特別市都市鉄道公社7号線の駅。 (credit:Wikimedia)
パンティ (マレーシア)(12 of31)
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マレー半島の先端、ジョホール州にある山岳地帯。パンティ山のふもとに熱帯雨林が広がっている。 (credit:Lip Kee/Flickr)
イロイロ (フィリピン)(13 of31)
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パナイ島南岸にある都市。2000年の国勢調査では人口は36万5820人で、フィリピンで9番目に人口が多い。 (credit:tom$/Flickr)
アフォバッカ (スリナム)(14 of31)
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南米のスリナム川の流域にある村。1984年に完成したアフォバッカ・ダムで知られる。 (credit:Wikimedia)
アウアウ海峡 (ハワイ)(15 of31)
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ハワイ諸島のマウイ島とラナイ島を隔てる海峡。冬になれば海に体重40トンにも及ぶザトウクジラがひしめく。 (credit:__o__/Flickr)
キレナイカ地方 (リビア)(16 of31)
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北アフリカのリビア沿岸にあった古代ギリシアの植民市キュレネから名前が取られた。キュレネには今も当時の遺跡が残っている。 (credit:ABDULLAH DOMA via Getty Images)
サムイ島 (タイ)(17 of31)
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タイランド湾西部に位置するリゾート地。海岸部はチャウエン・ビーチをはじめとしたビーチで、近年はホテル、レストランやバーが急増している。 (credit:Wikimedia)
シムラー (インド) (18 of31)
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インド北部にあるヒマーチャル・プラデーシュ州の州都。ヒマラヤ山脈のふもとに位置し、標高はおよそ2000m。 世界遺産となっているカールカー=シムラー鉄道の終点でもある。\n (credit:Wikimedia)
マッタワン (アメリカ)(19 of31)
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ミシガン州にある町。人口は2000人程度。 (credit:c_nilsen/Flickr)
カレー (フランス)(20 of31)
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ドーバー海峡に面した港町。海底を海峡トンネルが通りイギリスのフォークストンと結んでいる。 (credit:Wikimedia)
ウドン (カンボジア)(21 of31)
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1618年から1866年までカンボジア王国の首都だった。ベトナム戦争の空爆で被害を受けたが、複数の仏塔や寺院が残っている。日本の「うどん」の由来となった……という説もあるが、真相は不明。 (credit:CAMIO*/Flickr)
クエルナバカ (メキシコ)(22 of31)
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モレロス州の州都。 (credit:Wikimedia)
アナタハン島 (北マリアナ諸島)(23 of31)
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サイパン島から北方約117キロに位置する孤島。かつて日本の信託統治下にあった。太平洋戦争直後の1945年から1950年にかけて、1人の女性をめぐって男性32人の争いが起き、死者・行方不明が13人にものぼる「アナタハンの女王事件」が起きた。桐野夏生の小説「東京島」は、この事件が元ネタ。 (credit:Wikimedia)
オカタイナ湖 (ニュージーランド)(24 of31)
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北島にある原生林に囲まれた湖。 (credit:Janko Luin/Flickr)
カイマクル (トルコ)(25 of31)
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カイマクルはトルコのカッパドキア地方にある町。地下8層に及ぶ地下都市跡がある。 (credit:erindipity./Flickr)
マレ (モルディブ)(26 of31)
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インド洋の島国であるモルディブの首都で、1.7平方キロのマレ島を中心に約10万人が暮らしている。 (credit:Wikimedia)
イボ島 (モザンビーク)(27 of31)
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イボ島は東アフリカのインド洋にあるキリンバス諸島に属する島。人口は3,054人(1997年人口調査)。 (credit:Wikimedia)
オフェラート (ドイツ)(28 of31)
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ケルンから東に25kmほど行ったところにある人口約2万7000人の町。 (credit:Wikimedia)
エロマンゴ島 (バヌアツ)(29 of31)
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南太平洋のニューヘブリディーズ諸島の一つで、人口は約2000人。 (credit:PhillipC/Flickr)
フルチーン (チェコ)(30 of31)
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チェコ北東部、ポーランド国境付近にある町。 (credit:philstephenrichards/Flickr)
キンタマーニ高原 (インドネシア)(31 of31)
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バリ島で有名な観光スポット。活火山バトゥール山のふもとに、標高1500m程度の高原が広がっている。 (credit:Luke,Ma/Flickr)

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