気候変動対策No.1の金融・保険業関連企業は?「企業の温暖化対策ランキング」第5弾

企業の間でも自主的かつ積極的な温暖化防止のための取り組みが広がっています。

2017年10月31日、WWFジャパンは、「企業の温暖化対策ランキング」プロジェクトの第5弾の報告書を発表しました。これは、各企業の温暖化対策を点数化するもので、今回の調査対象となったのは「金融・保険業」に属する日本企業65社。第1位となったのは、東京海上ホールディングス(78.2点)で、MS&ADインシュアランスグループホールディングス(75.1点)、SOMPOホールディングス(72.5点)、野村ホールディングス(60.0点)と続きました。ESG投資に注目が集まるなか、投融資側である主体の取り組みでは高スコアと低スコアの二極化の傾向がみられます。

金融・保険業の上位企業は?

温暖化の進行を防止することを世界が約束した「パリ協定」。

2015年12月、フランスで開催された国連の温暖化防止に向けた国際会議(COP21)で採択され、2016年11月に発効した「パリ協定」は、温暖化の原因となる温室効果ガス(CO2:二酸化炭素など)の排出量を21世紀後半には実質ゼロにし、地球の平均気温の上昇を2度未満(できれば1.5度未満)に抑えることを目標としたものです。

アメリカのトランプ大統領の同協定からの離脱宣言(2016年6月)があった一方で、二酸化炭素の排出削減は国際的な潮流となっており、今や各国政府のみならず、企業の間でも自主的かつ積極的な温暖化防止のための取り組みが広がっています。

そうしたなか、WWFジャパンは、日本企業の温暖化防止の取り組みを評価し、促進させる「企業の温暖化対策ランキング」プロジェクトを展開。2014年以降、4回にわたり業種別の調査報告書を発表してきました。

そして、2017年10月31日、その第5弾として、金融・保険業の65社を調査した「『企業の温暖化対策ランキング』 ~実効性を重視した取り組み評価~ Vol.5『金融・保険業』編」を発表。

65社のうち、2016年に環境報告書類を発行していた30社の温暖化防止の取り組みを評価しました。

この結果、上位ランキングの4社は次のようになりました。

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WWFジャパン

取り組み評価の基準と今回の評価

このプロジェクトでは、各社が発行した環境報告書やCSR報告書などを基に情報を収集し、温暖化対策の取り組みを主に実効性の観点から評価しています。

採点に関しては、企業として温暖化対策の「目標」を設定し、その実績を評価・分析しているかを問う『目標および実績』。取り組みの状況や進捗などに関する情報開示を行なっているかを問う『情報開示』。WWFジャパンではこれまで、この2つの観点から、21の指標を設け、評価を行なっています。

特に重要な指標は次の7つです。

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重要7指標

●長期的なビジョン

●削減量の単位

●省エネルギー目標

●再生可能エネルギー目標

●総量削減目標の難易度

●ライフサイクル全体での排出量把握・開示

●第3者による評価

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第1位の東京海上ホールディングスが、重要7指標のうち、「長期的なビジョン」、「削減量の単位」、「目標の難易度」、「ライフサイクル全体での排出量の見える化」、「第3者による評価」の5指標で満点を獲得しました。

また、2位のMS&ADインシュアランスグループホールディングス、3位のSOMPOホールディングスもいずれも長期的なビジョンを掲げていることが、高評価につながり、3位までを大手損害保険会社が占める結果となりました。

特に、MS&ADインシュアランスグループホールディングスは、「Science Based Targets」イニシアティブ(SBTi:長期的な視点に立ち、「2度未満」と整合した削減目標の策定を呼びかける国際的なイニシアティブ)にコミットしており、「グループ全体のCO2排出量を2050年に70%削減する」という目標を掲げています。

さらに4位の野村ホールディングスも、30社中で唯一、再生可能エネルギーに関する定量的な目標を掲げるなど、優れた取り組みが評価されています。

一方で、ランキングで下位に位置する企業は、目標設定や情報開示といった取り組みをほとんど行なっておらず、0 点(満点= 100)の企業が複数出るなど、業種内で評価に大きな差が見られました。

なお、上位3社は大手損害保険会社でしたが、保険業の企業が全体的に高い順位を獲得する一方で、銀行業は3大メガバンクをはじめ、全体的に得点が伸び悩むなど、金融・保険業に属する4つの業種間の取り組みレベルにも差があることが分かりました。

業界としての特徴と課題

今回調査を行った金融・保険業に関しては、こうした上位と下位の間で見られた取り組みの「二極化」の他にも、いくつかの特徴が認められました。

たとえば、他の業界と比べ、温室効果ガスの排出量データについて第3者機関の検証を受けている企業の割合は30%(30社中9社)と比較的高いこと。

これは過去にWWFが調査した『電気機器』業界が17%(47社中8社)、『輸送用機器』業界が16%(25社中4社)、『食料品』業界が8%(24社中2社)であった割合と比べると、良好な結果です。

また、ソーラーローンや再生可能エネルギー事業に対するプロジェクトファイナンス等、本業の強みを活かした、温暖化防止に貢献する取り組みが数多く見られることも評価に値します。

このように、金融・保険業は、投融資を通じて、他企業の温暖化対策に影響をおよぼし得るものの、他方で、自らの取り組みについては不十分なケースが多く見られました。

あまり進んでいない、自社における再生可能エネルギーの導入についても、今後は、新たな取り組みに踏み出すことが期待されます。例えば、オフィスビルでの太陽光発電パネルの設置や、再エネ事業への自らの出資、グリーン電力証書の購入など。

また、本業界全体の特徴として、環境報告書類を発行している企業が65社中30社(46%)と少ないことも大きな課題です。 90%前後の企業が環境報告書類を作成していた電気機器、輸送用機器、食料品の3業種と比較すると、この数字は「環境コミュニケーション」の側面に大きな課題があることを示すものです。

投融資判断の向上につながる取り組みを

近年、世界的にESG投資(環境:Environment、社会:Social、企業統治:Governanceに配慮している企業を選んで行なう投資)の潮流が強まっており、これが今後の環境保全活動にも、大きな影響を及ぼそうとしています。

そうした中で、今回の調査対象の「金融・保険業」も、どれくらいESG投資に力を入れているか、という視点で大きな注目を集めています。

しかし、ESG情報を基にした投資判断基準は、機関投資家ごとに違いがあり、統一されていないのが現状です。

特に、E(環境)の分野における取り組みを正しく評価するには、気候変動問題などに対する専門的な知識も必要となり、どのような環境対策をとっている企業が高評価に値するか、投資側も判断に迷うケースがあります。

その中で、投融資行動を行なう金融・保険業側の企業としては、自ら実効性の高い温暖化対策を実践することを通じて、知見を高め、投融資先企業の環境対策のレベルを見極める力を養うことが、一つの有効な手段となります。

本業界が、本業部分で投融資先企業の開示情報を判断基準にすることを考えても、自らも環境報告書類を定期的に発行し、「環境コミュニケーション」を積極的に進めていくなど、取り組むべき課題は多くあります。

金融・保険業に対する企業評価としては、どのような投融資を行なっているのかに焦点を当てたものが多くあります。

しかし、WWFジャパンとしては今回、このプロジェクトの中で、他の業種に対してと同様、「自社における温暖化防止の取り組み」を実践的に行なっているかに焦点を当て、評価を行なうことで「金融・保険」を通じた取り組みが、総合的に向上することを求めています。

パリ協定の成立後、世界の平均気温の上昇を2度未満に抑えるため、企業にも「Science Based Targets」イニシアティブにコミットするなどして、科学的な知見に基づく、長期的な視点に立った取り組みが求められるようになりました。

WWFはこれからも、業界ごとに異なる温暖化対策の実情を明らかにしながら、産業界による温暖化防止の取り組みが推進されるよう、今後も積極的に提言を続けていきます。

報告書

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