「偽サイト」に騙されそうになった。運営会社を訪ねたら、出てきたのは無関係の高齢者。見分けるコツとは?

「40年、ここに住んでるけど、その会社とは何の関係もないよ」 84歳の男性は困惑しながら言った。
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「40年、ここに住んでるけど、その会社とは何の関係もないよ」

84歳の男性は困惑しながら言った。ここは京都市北区。多くの観光客で賑わう金閣寺の山側にある、静かな住宅街の一角だ。

4月上旬、ある「通販サイト」運営会社の「本社」を訪ねようとしていた。住所をたどって地図とにらめっこしながらたどり着いた。そこは、高台を切り開いた場所にある平屋建ての民家。とても会社があるようには見えない。

ピンポンを鳴らすと、引き戸を開けてグレーのYシャツ姿の男性が出てきた。高齢だが元気そうだった。奥さんと2人で暮らしており、様々な仕事を経験したが、今は年金生活をしているという。どうやら無関係のようだ。

男性はため息をつきながら、続けた。

「私あてに『商品が届かない』という苦情もあったし、警察から問い合わせもきた。そもそもこの家で会社なんてやってない。何でうちの住所が使われたのか……」

冷や汗が流れた。私は「偽サイト」の詐欺にあう直前だったのかもしれない。

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金閣寺の山側にある路地。ここを通過した住宅街に問題の「会社」があると記載されていた(2017年4月6日撮影)

■「これは安い」つい楽器を注文しそうになったが…

始まりは、3月下旬だった。

電子音楽を作る趣味がある私は、安い楽器がないかとGoogleで検索していた。すると、「JKKBMKIC」という一風変わった名前のサイトを見つけた。15万円以上するスウェーデン製のシンセサイザー「Elektron Analog Keys」が、10万円程度と破格の値段だった。(※現在、このサイトは削除されている)

「これは安い」と、購入ボタンをクリックしそうになった瞬間、漠然とした不安がよぎった。「JKKBMKIC」なんて聞いたこともないし、そもそもサイト名が読めない。

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「JKKBMKIC」に掲載されていた「Elektron Analog Keys」の商品ページ

「会社概要」をクリックすると「京都府京都市北区衣笠赤阪町○-○○○ ダイスケ株式会社」という住所。れっきとした株式会社のようだが、メールアドレスや電話番号は記載されていなかった。

この通販サイトの情報交換をするネット掲示板を見つけた。「銀行振り込みしたが商品が届かない」「警察に被害届けを出した」と訴える声が続出していた。

「詐欺である可能性が高い……」と感じた。

実際に「ダイスケ株式会社」の住所とされている場所にも行ってみたのだが、結果は冒頭の通り。京都地方法務局で登記簿もチェックしたが、登記された形跡はなかった。

私が買いそうになったシンセサイザーの画像も、詳しくURLを調べると「rakuten.co.jp」と別のサイトのドメイン。大手ショッピングサイト「楽天市場」にある東京・渋谷の楽器店の商品ページから流用したものだった。紹介文もほとんど同じ。楽天市場のページにあった15万5990円という値段だけが上から線で消され、「販売価格:11万1930円」と大幅に値下げしてあった。

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「JKKBMKIC」のコピー元になったと見られる楽天市場の商品ページ。商品についた【送料無料】【smtb-u】という文字列まで同じだ

■偽通販サイト、その手口は?

「こうした偽の通販サイトは、私の知る限りでは2015年以降に急増しているんです」

東京・竹橋にあるレンタルオフィスが集まったビルの会議スペースで、峰岸達也さんはこう語った。怪しいサイトのフィルタリングデータを集める株式会社ネオブラッドの経営者だ。私が電子楽器を買いそうになった「ダイスケ」も偽サイトである可能性が高いという。

ネオブラッドの公式サイトでは、「偽サイト」のURLが羅列されていた。このリストによると、ダイスケは、京都市もしくは大阪府堺市の株式会社を名乗り、2017年1月から3月にかけて34件の通販サイトを開設していた。

峰岸さんが1日に追加する「偽通販サイト」の数は、一日で約50件にも上る。楽天や、Yahoo!ショッピングなどの大手通販サイトの商品紹介や画像を流用しているとみられるのが特徴で、top、xyz、pwなどの安価で取得できるドメインが使われることが多いのだという。

クレジットカードで購入できると謳っていても、実際には個人口座への銀行振り込みを迫られるケースが多く、実際に商品が届くことはほとんどないという。

偽の通販サイトを見分けるコツはあるのだろうか。

「画像のプロパティを調べるのが確実です。全然関係なさそうなサイトなのに、楽天やヤフーのアドレスになっていたら警戒してください。ただしスマホだと確かめづらいのでパソコンでチェックすることも必要です。電話番号が掲載されているかを確認して、もしあったら実際にかけてみる。会社名で検索をしてみて、被害情報が出てないかを調べるなどが大事ですね」

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京都の「ダイスケ株式会社」とよく似た、株式会社ダイスケを名乗って運営されていた「hvjemsi.top」の偽通販サイト(住所などは修正済み)。大阪府堺市の住所のほか、役員名や資本金などそれらしく並べられている。大阪法務局・堺支局で確認したところ登記されていない「架空の会社」だった。

■前年度比で相談件数は60%増。日本通販協会の見方は?

日本通信販売協会の消費相談室長、八代修一さんにも聞いてみた。「偽通販サイトは2016年度になってまた増え始めており、危険な兆候が出ています」

通販サイトを名乗る詐欺的なサイトは、2013年度がピークに、減少を続けていたが、2016年度に前年比で1.6倍になったという。

「2013年度は3829件の相談がありました。当時の警察関係者の話では、ちょうどこの時期に『振り込め詐欺』の摘発が進んだので、業者がこっちに流れた可能性があるということでした。2013年ごろは、警察や消費者庁も偽サイト撲滅のための啓発運動に力を入れました。新聞やテレビなどマスコミも広く取り上げてくれたことで、騙される人が減り、業者としてもうま味がなくなり、2014年度以降は相談件数も下がり続けていました。しかし、2016年度は前年度の6割増となる1684件になりましたが、ピーク時よりは少ないこともあって、マスコミもほとんど取り上げてないのが実態です」

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日本通販協会提供のデータを元に作成したグラフ

八代さんの話によると、こうした「偽通販サイト」は近年巧妙化しているという。2013年ごろまでは日本語が稚拙だったり、会社名や住所の記載がなかったりして、「怪しさ」がまだあった。しかし、商品案内やサイトの構造を、別の通販会社をコピーするケースが増えたため、「リアルっぽさ」が増したという。

2013年に社会全体の啓発活動が落ち着いた隙をぬって、「偽通販サイト」は息を吹き返しつつあるようだ。八代さんは、以下のように振り返る。

「2011年くらいまではモンクレールのダウンジャケットなど高価なブランド品が主流でした。商品も粗悪な品物ですが送っていたこともあったようです。笑い話ですが、ベッドを頼んだらおもちゃのベッドが送られてきたなんてケースも聞いたことがあります。しかし、2012年以降から生活雑貨まであらゆる商品を取り扱うようになりました。200〜300円の洗濯ロープのように安価な物まで出てきました。他社のサイトをちょっとだけ変えてコピーし、振り込みだけをさせて商品を全く送らないというのが基本パターンですね」

「所在地を隠していたり架空の住所を掲げている場合が多いため詳細は不明ですが、振り込み口座や手口から見て99%は海外ですね。その多くは中国と見られています」

■京都府警の担当者「元を絶つのは非常に厳しい」

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京都府警サイバー犯罪対策課の資料より

京都府警サイバー犯罪対策課「ネットセキュリティ・サポートセンター」の集計によると、実在するサイトの企業名・連絡先・商品画像を無断利用した「偽サイト」に関して京都府警に寄せられた相談は、2015年に212件だったのが、2016年には340件と1.5倍に増加している。

同センターの山本育弘所長に聞いた。

——こうした偽サイトを閉鎖に追い込むのは難しいんですか?

ほとんど海外サーバーですね。その場合、なかなか日本の警察権が及ばないんです。

——振り込み先に指定されている銀行口座から特定するのはどうでしょう?

振り込み先に指定されている銀行口座の名義人は、外国人留学生とか業務実習生が多いようです。中国人が多いんですが、最近はベトナム人も増えていますね。中国人留学生が帰国する際に日本の口座を中国に持って帰っても使い道がないので、日本にいる中国人の友人に安く通帳とキャッシュカードを譲り渡す。そうした口座を売買するサイトやルートがあるようです。

——本人は出身国に帰っていると?

そうです。実際には日本にいないケースがほとんどです。その人自身も「口座を売ったら日本の法律に触れる」という認識がないんですね。そういう人を外国で逮捕するというのは困難です。仮に逮捕できたとしても、実際にサイトを作っているグループまではたどりつけないんです。

——では、どうすればいいんでしょう?

元を絶つのは非常に厳しい。そのため一般消費者に対して、そうしたサイトの被害に遭わないように一生懸命に啓発をしているところです。特に「日本の会社なのに、振り込み先が外国人の個人口座である場合には絶対に振り込まないでください」と強く訴えています。

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警察当局の対策と平行して、消費者の側での自衛も大事なようだ。

京都府警サイバー対策室のチラシや、日本通販協会の「通販のかしこい利用法」は詳しい見分け方が載っているので是非参考にしてほしい。

ネットで消費者にとって便利な時代になった分、自分で調べる「責任」も高まった。そんな教訓とともに、金閣寺の裏側に住んでいた84歳男性の困惑した表情がいまだに心に残っている。

(※偽サイト対策についてYahoo!、楽天などに取材した記事を後日掲載予定です)