ペットボトル用フィルムに集積回路を構築する技術とは?

ワイヤレスでのデータ通信や電力伝送などにも利用可能で、ウェアラブルデバイス分野などでの応用が期待できるとしています。
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ウィスコンシン大学マディソン校の研究者が、安価かつ大量に製造できるフレキシブルなトランジスターを開発したと発表しました。さらに高速動作が可能という特徴も持っていることから、ワイヤレスでのデータ通信や電力伝送などにも利用可能で、ウェアラブルデバイス分野などでの応用が期待できるとしています。

研究者はこのトランジスターの製造に「ナノインプリント・リソグラフィ」と呼ばれる技術を利用しました。現在一般的な集積回路製造工程で用いられるフォトリソグラフィという技術では、シリコンウェハーの上にフォトレジストと呼ばれる感光性樹脂を塗布し、集積回路の「図面」を露光、現像、エッチング(食刻)処理を施します。さらに半導体を形成するための不純物(ドーパント)を被せて加熱焼成し、銅やアルミニウムで配線を形成します。

一方、ナノインプリント・リソグラフィでは単結晶シリコンの上にフォトレジストを乗せ、さらに回路図を刻み込んだテンプレートを被せた後、ナノメートル幅の電子ビームで露光します。テンプレートを取り外した後はドライエッチングでシリコン膜に実際の回路を形成し、不要なフォトレジストを取り除きます。

今回の研究では、焼成プロセスを低温で処理し、最終的にできあがった回路をPETフィルム上に固定したうえで配線などを形成しています。ベースがペットボトルなどにも使用されるPETフイルムであるため、フレキシブルになっています。

この方法では、フォトリソグラフィに比べて工程を単純化でき、低コスト化できるのが大きな特徴とされます。さらに研究者は、将来的には回路を刻んだテンプレート判を延べ棒のような形に加工し、PETフィルムのロールから伸ばしたシリコン膜に判を押すようにしてトランジスターを作っていくことで、大量生産工程も実現でき、ひいてはコストの低下も可能だろうとしています。

大量生産が可能というだけでなく、高い処理性能を持つのもこのフレキシブルなトランジスターの特徴です。シミュレーションでは110GHzというとてつもない高速動作が可能とされ、実験段階の試作品でも38GHzでの駆動を確認済みとのこと。

この方式でさらに集積度を上げていけば、将来とてつもない処理性能を持ち、さらにウェアラブルなコンピューターを生み出されるのかもしれません。

ちなみに、ナノインプリント・リソグラフィは日本でも東芝やキヤノンが技術開発を進めています。また大日本印刷も米Molecular Imprintsへの出資を通じて技術を取得しており、2015年にはテンプレートの量産体制を構築している状態。現在ホットな半導体製造技術の一つです。

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