災害の新しい伝え方は。グローバルエディターズネットワーク(GEN)によるTokyo Editors Lab ハッカソン開かれる 

新しい災害報道のあり方を探ろうと、欧州を中心としたデジタルメディアの世界的組織GENによるハッカソンが東京都港区で開かれました。

Open Image Modal

ハッカソンの冒頭に主催者のGEN側がハッカソンの決まりを伝えた=主催者提供

新しい災害報道のあり方を探ろうと、欧州を中心としたデジタルメディアの世界的組織 GEN(グローバルエディターズネットワーク、本部パリ)によるハッカソン「Tokyo Editors Lab」が5月20、21日、東京都港区で開かれました。

これまでの災害報道を、ネット時代の技術革新に合わせて新しい姿にすることをめざし、新聞・テレビ・ウェブの大手メディアから10チームがアイデアと技術を競いました。優勝したのは、過去の災害取材や検索データをもとに災害時に素早く記事を作成できるシステムを開発したBuzzFeedJapanとヤフーの合同チームで、6月21−23日にウィーンで開かれるGEN年次総会で発表の機会を与えられます。

Open Image Modal

週末の土日をフルに使ってのハッカソンだった=主催者提供

GENによるハッカソンは、日本開催は初めてでした。参加したのは、ヤフー、NewsPicks、朝日新聞(2チーム)、読売新聞、フジテレビ・ホウドウキョク、BuzzFeedJapan(合同チーム。3人中2人はヤフー)、ニッポン放送、日経新聞、NHKの10チーム。各チームは、記者、デザイナー、技術者の3人で構成され、2日間で災害報道の新しいウェブサービスやアプリを開発し、モックアップまで作ります。

審査員は日本人3人に、海外から参加したGENとGoogleNewsLabの担当者が加わった計5人。同様のハッカソンはイタリアやフィリピンなどでもすでに開かれており、ウィーンで各地の優勝者が集結します。イタリアの優勝チームは、発災時に記者など報道側がどんなことをするべきなのか、それぞれのアサインメントを疑似体験するツールを作りました。フィリピンの優勝チームは、災害時に発生するデマについて、ツイッター上でフェイクニュースの検出をするツールを開発しました。

Open Image Modal

審査基準を説明するGENのEvangeline de Bourgoingさん

東京でのハッカソンの冒頭、審査員の一人である GENのEvangeline de Bourgoingさんは、発表の際に以下の点に気をつけるよう、参加者に話しました。

  1. オーディエンスをひきつける a shocking statistics, a provocative question, an insight などを示す
  2. 何を解決するのか、を明確に
  3. 開発物の説明を的確に
  4. ターゲットオーディエンス。誰に対してのサービスか
  5. ユーザーエクスペリエンス
  6. オーディエンスにとって何が利益になるのか
  7. 技術的な詳細(ただ、長過ぎないように! 一般的な言葉を使ってわかりやすく)
  8. 何を作ったのか明確に説明できるように
  9. 実行可能か
  10. 時間などを考慮して、練習してね。伝わることが大事です!
  11. Show your ドラマ、情熱をみせてください!

優勝したBuzzFeedとヤフーの合同チームが評価されたのは、災害発生直後に被災者が必要な情報をいち早く届けることを重視した点です。災害が発生した時にすぐに記事を出稿するための仕組みであるコンテンツマネージメントシステム(CMS)を過去の取材経験をもとに製作しました。審査員の一人は「過去のものから新しいものを創り出す災害報道の『エコシステム』がよかったです」と講評しました。

Open Image Modal

ニッポン放送の発表=主催者提供

ニッポン放送は、災害時、一人でもラジオを放送できる体制にあることを生かし、各被災者が簡単に被災状況を音声で登録できるツールを作りました。

フジテレビのホウドウキョクは、記者が大量に集めた情報が番組内で伝えきれない状態を解消するために、欲しい現地の情報を簡単に見ることができるアプリを開発。支援ボタンもつけたので、クリック一つで支援ができる機能も備えるとのことでした。

Open Image Modal

ヤフー若手チームの発表=主催者提供

ヤフーの若手チームが作ったのは、被災地で足りない情報、フェイク情報などを分類し、記者も取材しやすくするツールでした。

Open Image Modal

NHKの発表=主催者提供

NHKは膨大なデータからさまざまなリスクが発生する予報を示すツールを開発。熱中症が発生しやすい要素が集まったときに、熱中症リスクを数値で表し、警告します。

Open Image Modal

発表直前の朝日新聞Aチーム=主催者提供

朝日新聞からは、筆者を含むAチームと、Bチームの2組が参加しました。Aチームが制作したのは、都市部で自らの判断で適切な場所に避難するVR「TenDenKo」です。ビルや交通機関が複雑でどこに逃げればいいのかがわかりにくい都会では、人が殺到するところを避けたり、堅牢な建物を探し出したりしなければいけません。耐震性など建物の情報や乳幼児に必要な物資があるところなどをDB化し、昼と夜で人口密度が異なる都心部で、動的情報も組み込みつつ、効率的な避難先を示します。

自分の判断で的確なところに逃げることが一番の減殺につながる――東日本大震災の「てんでんこ」(津波が来そうな時は、各人がそれぞれの判断で高台に逃げるようにという東北地方の言い伝え)を都心部でもスムーズにできるようにするためのツールでした。

Open Image Modal

朝日新聞Bチームの発表

Bチームは、ツイッターでつぶやくとそれに関連する記事が自動的に表示される仕組みを作りました。発災時に検索をする時間や手間をはぶくことを目的にしています。

Open Image Modal

審査員は、チームが夢物語を語っているのではなく、実際に製品として展開できるのかということをポイントにしていたようです。

メディア各社がそれぞれの組織の枠にとらわれずに、よりよい報道のために新技術をいかしたメディアをつくることを目指したハッカソンになりました。

Open Image Modal

今回は欧州を中心としたGENとアメリカにある新旧メディアの任意団体Online News Association(ONA) の日本支部が協力して開きました。欧米では頻繁に行われているこうした業界横断ハッカソン。今後もこうした催しは日本でも定期的に開かれていくようです。(朝日新聞デジタル本部・井上未雪)

Open Image Modal

優勝したBuzzFeedとYahooの混合チーム=主催者提供

Open Image Modal

表彰式後、参加者、審査員、運営者が集まり写真を撮った=主催者提供

Open Image Modal

審査員のコードフォージャパン代表理事、関治之さん=主催者提供

Open Image Modal

審査員の元読売新聞大阪本社編集委員、安富信さん=主催者提供

Open Image Modal

審査員の減災インフォ発起人、小和田香さん=主催者提供