新エンブレム候補に、旧エンブレム審査委・平野氏「A案ありきのプレゼン」【東京オリンピック】

2020年東京オリンピック・パラリンピックのエンブレムはどれに決まるのか。最終候補4作品について、旧エンブレムの審査委員を務めたデザイナーの平野敬子氏が私見を明らかにした。

2020年東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会が4月8日に発表した大会公式エンブレム最終候補4作品について、白紙撤回された旧エンブレムの審査委員を務めたデザイナーの平野敬子氏は9日、自身のブログで最終候補作について「先頭に配置された1案だけが際立つ見え方は不適切であり、『A案』ありきのプレゼンテーションだと受け取りました」と指摘した。

平野氏は、発表された4案が「A案」と「BCD案」という2つのグループに分けられると記し、その理由と根拠について「色彩」「基本形状」「造形モティーフ」「コンセプト」の4つの面から分析した。その上で、次のように綴った。

複数のデザイン・プランの嗜好を分析する場合、精度を求める調査では、「A・B・C・D」や「1・2・3・4」という順列を示す記号は用いません。なぜならば、記号の順列が心理に影響を及ぼし、調査結果に影響するからです。ですので通常は、例えば「K・G・l・M」といったランダムな、相互の関係性に意味が生じない記号を用いることが適切とされ、この方法によって公平かつ精度の高い調査結果が得られることとなります。今回の五輪エンブレム4案発表の構図を見る限りにおいては、デザインとしての良し悪しの問題以前のこととして、比較論として「A案」が選ばれやすい状況が整っている、つまり「A案」に特別な優位性が与えられた不平等な発表形式であると受け取りました。

「A案」がオリンピックに相応しいデザインかどうかという観点は別として、専門的な見知としては、エンブレム委員のグラフィックデザイン専門家が「BCD案」を押すということは考えづらいと思います。ですので、エンブレム委員のグラフィックデザイン専門家の中では「A案」ありきの審査結果だと分析しています。

HIRANO KEIKO’S OFFICIAL BLOGより 2016/04/09)

平野氏は最後に「私は4案の中のどれが良いかという論議には参加いたしません」と締めくくっている。

スポニチによると、大会組織委員会は8日の記者会見で配布した用紙でA-Dの発表順を「申請時の受け付け順」と記している。

エンブレム委員会は、一般から募集した意見を参考に、4つの候補から多数決で1点を選ぶ。公式エンブレムは、大会組織委の理事会の承認を得て4月中に最終決定される。

▼写真をクリックするとスライドショーが開きます▼

東京オリンピック新エンブレム4候補
A. 組市松紋(くみいちまつもん)(01 of04)
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歴史的に世界中で愛され、日本では江戸時代に「市松模様(いちまつもよう)」として広まったチェッカーデザインを、日本の伝統色である藍色で、粋な日本らしさを描いた。\n形の異なる3種類の四角形を組み合わせ、国や文化・思想などの違いを示す。違いはあってもそれらを超えてつながり合うデザインに、「多様性と調和」のメッセージを込め、オリンピック・パラリンピックが多様性を認め合い、つながる世界を目指す場であることを表した。 (credit:2020年東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会)
B. つなぐ輪、広がる和(つなぐわ、ひろがるわ)(02 of04)
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選手の躍動と観客の喜びがつながってひとつの\"輪\"となり、世界に広がってゆく平和や調和の\"和\"を表現した。\n肉体と精神のたくましさ、躍動感・スピード感を込めたデザインにより、「自己ベスト」を目指すアスリートの素晴らしい活躍が世界に与える感動を表す。 さらには、2020年に日本がお迎えする世界の人々への敬意とおもてなしの心を伝える。 (credit:2020年東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会)
C. 超える人(こえるひと)(03 of04)
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俵屋宗達(たわらやそうたつ)の風神雷神図(ふうじんらいじんず)や浅草雷門(風神雷神門)など、古くから日本人に愛されてきた風神・雷神をモチーフに、ゴールテープを切る一瞬の躍動感や、「自己ベスト」を目指し、超えようとする選手たちの姿勢を描いたデザイン。雷神の太鼓を花火に、風神の風袋を虹にたとえ、平和、多様性、調和への思いを込めた。\nアスリートの強靭な心身による平和への継続的な貢献をエンブレムに託し、未来へつなげる。 (credit:2020年東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会)
D. 晴れやかな顔、花咲く(はれやかなかお、はなさく)(04 of04)
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「自己ベスト」を尽くすアスリートと、彼らをたたえる人々の晴れやかな表情。その感情の動きを、空に向いて開花する朝顔(英語名:morning glory)に重ねた。朝顔の種が芽を出し、蔓を伸ばして花を開き、再び実を結ぶ成長の過程が、大会への期待感や次世代への継承を示している。\n江戸時代に流行し、子どもから大人まで広く親しまれてきたこの花が、2020年への気持ちを高め、世界から訪れる観客を日本中でお迎えする。 (credit:2020年東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会)