アイスランド海賊党、総選挙で第一党をうかがう 元ウィキリークスの活動家が党首

直接民主主義や透明性を公約に掲げる。
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5月25日、アイスランドのレイキャヴィークで行われたアイスランド国会で党のオフィスで写真のポーズをとるアイスランド海賊党の党首、ビルギッタ・ヨンスドッティル氏 / REUTERS STAFF / REUTERS

前ウィキリークスの活動家で自称「詩人」のビルギッタ・ヨンスドッティル氏が党首のアイスランド海賊党が、10月29日の総選挙を前に最新世論調査で僅差ながら首位に立っている。

2016年のアイスランドはスキャンダルで悩まされた年だった。シグムンドゥル・グンロイグ首相が、タックスヘイブン(租税回避地)を利用していた各国首脳や著名人のリスト「パナマ文書」に名前が上がり、妻とともに「ウィントリス」というオフショア・カンパニー(業務の一部または全部を海外に移管・委託する会社)を設立したことが暴露され辞任に追い込まれた。同時に、泡沫政党に過ぎなかった海賊党は急速に支持を獲得し、有権者の大半を獲得するまでとなった。

海賊党の公約は過激だ。徹底的にアイスランド政府を調査し、憲法規約をクラウドソーシングによる文書に変えるという。この型破りな政策はアイスランド政界の既成勢力に幻滅しているアイスランド国民の多くの間で共感を呼んでいる。

アイスランド海賊党はもともと著作権改正を求める団体として結成され、政党としてはまだ4年しか経っていない。立党以来、海賊党の政策はさまざまな改革や政策を主張している。中には、アメリカ中央情報局(CIA)職員で、アメリカ政府の国民情報収集を暴露したエドワード・スノーデン氏をアイスランドに亡命させることも含む。

海賊党の運動は2006年にスウェーデンで始まり、政治の透明性やインターネットに関する自由、著作権の改正などの問題に焦点を当てた。他にもヨーロッパには同様の主張をする海賊党があるが、ここまでの成功を収めたのはアイスランドの海賊党だけだ。

党の人気が最高潮に達したのは、グンラウグソン首相のスキャンダルが明るみになった2016年初頭だ。反対派はこれまで情報を非公開にしていた会社を利益相反だと非難し、集団で抗議運動を起こした。

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4月4日、アイスランドのレイキャヴィクでシグムンドゥル・グンラウグソン首相の退陣を求めるデモ / STRINGER . / REUTERS

グンラウグソン首相は4月に辞任したが、スキャンダルはアイスランド国民の怒りを買った。アイスランドは2008年の世界金融危機(リーマンショック)で国家財政が破綻し、怒りが国民中に広まった

アイスランドは危機から回復し、銀行幹部の多くは市場の暴落をもたらした罪で投獄されたにもかかわらず、国民は国の現状や金融機関に対する不満を抱えたままだ。3月に発表された世論調査によると、国を信用している国民はわずか12%、国の金融制度を信用している国民もわずか17%だ。

海賊党は直接民主主義や透明性を公約に掲げ、アイスランド国民にとって不満のはけ口となった。他の多くの海賊党と同様、自らをテクノロジー中心の進歩的な国民運動だと標榜している。政治的、社会的な目標を掲げる海賊党だが、国の回復を損ねるような急進的な経済改革は避けるという。海賊党は主に40歳以下の有権者からの支持を得ている

海賊党のトップは何度か交代しているが、現在はビルギッタ・ヨンスドッティル氏が党首だ。ヨンスドッティル氏は今までにない政治家といえる。彼女は詩人から活動家に転身した人物であり、ウィキリークスと関係しているため、2011年にはアメリカへの渡航自粛を政府から警告されている。ヨンスドッティル氏は、海賊党が総選挙で勝利しても首相に就任せず、他の党員に対する権限を放棄すると述べた。

「率直に言えば、首相となった自分が想像できません。むしろ奇妙だと思います」と、ヨンスドッティル氏は4月にハフポストUS版の取材に答えている。

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9月19日、海賊党の本部があるアイスランドの首都レイキャヴィクに党員が集まった。 / REUTERS STAFF / REUTERS

10月21日に発表された最新の世論調査によると、海賊党は2位の保守政党「独立党」に1.5ポイントの差をつけた。しかし、海賊党の勝敗にかかわらず、どの党も単独政権になるほど十分な投票数を得られず、連立協議が始まるとみられる。

海賊党と独立党による予想外の連立がない限り、過半数を占めるには少なくとももう一党必要になる。

選挙結果によって連立政権となっても、あるいは政治空白が生まれたとしても、海賊党が国会で占める議席数は相当数になる見込みだ。

海賊党の支持拡大は、30万人を超える国民の不満の現れといえるが、同時に、ヨーロッパ全土を取り巻く反体制的な動きの極端な例でもある。

【UPDATE】アイスランドの地元紙「Visir」が行った最新の世論調査によると、独立党の支持が上昇し、海賊党を上回った。しかし調査結果は選挙を前に変動し続けており、どの政党も過半数に達する見込みはない。

ハフポストUS版より翻訳・加筆しました。

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