#インスタ医療団 が誕生。偏った医療情報だらけのInstagramに医師たちが危機感

必要なワクチンを受けさせなかったり、ステロイド治療は危険だと信じ込んだり…
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画像はイメージ写真です。
ipopba via Getty Images

小児科の専門医らが中心となって、子育てに関する正しい医療情報をSNSで広める活動 #インスタ医療団 を始めている。

ネット上には、根拠があいまいで、時には子どもへの健康が危険にさらされるような情報も流れている。そんな状況で、科学的根拠に基づいた治療やワクチンの重要性についての情報に簡単にアクセスしてもらえるようにするためだ。

11月12日にInstagramにアカウントを開設し、活動の流れを作った、パ小児科医(ぱぱしょー)さん(papa_syo)に話を聞いた。

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ワクチンと自然感染の違いを説明したぱぱしょーさんの投稿
papa_syoさんInstagramより

クローズドな場で誤った情報が醸成されていくInstagram

ぱぱしょーさんは、普段病院で小児科専門医として勤務する傍ら、ブログTwitterなどを使って医療情報を発信している。

そんななか、小児科で接する子どもの保護者に、TwitterだけでなくInstagramで情報を収集している人も多いことに気が付いた。

Instagramを開いて、「乳児湿疹」「ワクチン」などのキーワードで検索すると、「ワクチン反対」「自然派ママ」「脱ステロイド」「ホメオパシー」というタグがついた体験談による投稿があふれている。

こうした状況を目にしたぱぱしょーさんは「Instagramでは偏った情報が野放しになっており、医療者からの適切な情報提供が必要だ」と感じ、Instagramを始めた。

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Instagramで検索すると「#ワクチン反対」「#ワクチンの危険性」「#ワクチンの罠」などといった投稿が上位を占める
Huffpost japan

Instagramに出ている体験談の中には、「ワクチンの毒素は体中のプルプルした組織に溜まり癌の原因になる」「ステロイドではなく内なるドクター(自然治癒力)によって治す」といった、根拠のない説明も少なくない。

しかし、そうした投稿へは、たくさんのハートマークが付き「一緒に頑張りましょう!」といった励まし合うポジティブなコメントが並ぶ。

考えに共感しあう人たちで「お子さんにワクチンを打っていますか」というアンケートを取り「700人近くが回答。押し間違いもあるので実際は『いいえ』が90%以上」などと訴えるものもある。

ぱぱしょーさんは「Instagramでは医療者の発信があまりなく、脱ステロイドの体験談等が多数アップされ『ワクチンは危険』『ワクチンは不要』という誤った考えがクローズなコミュニティの中で醸成されいる現状があります」と指摘。

「Instagramは主たる情報源のひとつになり、Google検索のほかに、ハッシュタグで検索する流れは今後高まっていくことが予想されます医療情報が偏ってきており、ヘルスリテラシーの向上のために医療界はここに力を注ぐべきだと考えています」という。

「自然派の育児」が高じて死亡例も

国内でも、2009年に生まれた女児に対し、助産師が必要なビタミンKではなく代替物を与え、ビタミン欠乏性出血症で死亡させたとして、母親が助産師に損害賠償を請求する事件も起きている。

日本助産師会のホームページや2010年9月8日の朝日新聞朝刊によると、助産師は自然治癒力を信じるホメオパシーという民間療法を実施しており、ビタミンKシロップの代わりにホメオパシーで使われるレメディという砂糖玉を飲ませていたという。

事件を受け、2010年に日本助産師会が調査をしたところ、分娩業務をしている助産所414カ所のうち、約1割にあたる36カ所でホメオパシーが行われ、妊産婦の希望などから新生児に対し必要なビタミンKを与えていない例があったことが分かった。

日本助産師会は、個別に指導したとしてホームページ上で「本会としては、助産師がホメオパシーを医療に代わるものとして使用したり、勧めたりすることのないよう、継続的な指導や研修を実施し、会員への周知徹底を図ります」と声明を出した。

こうしたホメオパシーを信じた「自然派育児」を名乗る育児論では、ワクチンを忌避する傾向があり、「自然感染のほうが免疫力が付く」などと主張する。

しかし、自然感染では細菌性髄膜炎や重症肺炎などの重い感染症にかかることもあり、病気によっては麻痺や難聴といった後遺症が残る可能性があるほか、命を落とす恐れもある。

視覚的に分かりやすく説明

大切な自分の子どものことなので、ステロイドやワクチンについて保護者たちが不安を抱えることもあるだろう。そこで情報を集めようとInstagramを開き、偏った情報を信じ込んでしまう。

ぱぱしょーさんは「もし主たる情報源がInstagramであれば、標準治療やワクチンを拒否するママが出てきてしまうことはいたしかたないとも思います」と懸念する。

近年はYouTubeやInstagramなど、文章ではなく視覚的な情報に触れる機会が一気に増えてきた。長々と文字で説明しても、読んでもらえないかもしれない。

いまの子ども達が大人になる頃には、SNSは生活インフラであり、それこそ呼吸するかのごとくつぶやくようになるでしょう。今後は視覚的、感覚的に理解できる情報提供でないと見てもらえなくなると思います」と語る。

そうした背景などもあり、インスタ医療団では、画像投稿SNSという特徴を生かし、イラストや図表を用い、短い文章で分かりやすい投稿が多い。

11月中旬にぱぱしょーさんがInstagramを始めると、時事メディカルで連載を持つ外科医けいゆうさん(keiyou30)や、小児科でアレルギー学会の指導医をしているほむほむ@アレルギー専門医さん(homuhomu_allergist)ら、危機感を共有する医師らが続いた。

その後、京都大学附属病院特定准教授の大塚篤司【医師・医学博士】さん(otsukaman2018)が「インスタ医療団」という言葉を使い始めた。

こうした投稿を考える手間はあるものの、医療者にとっては、SNSはの利用はいい面が多いという。

短い文章でまとめることで通常の診察でもわかりやすく簡潔に話すトレーニングになり、投稿のために確認したり調べたりすることが勉強にもなる。

悪意あるコメントやネガティブな言葉につらい思いをすることもあるが、診察室では聞きにくいことをTwitterなどで質問してもらえるので、これまで気づかなかった困りごとを知ることもできたという。

「#インスタ医療団」のハッシュタグは様々な分野の医療関係者が賛同し始め、小児科や子育てに関することだけでなく、幅広い医療情報の提供に繋がっている。

ぱぱしょーさんは「インスタ医療団の目的は、不安を感じて色々と調べている段階のママに、標準治療やワクチンの重要性にもアクセスしてもらうこと。そこからの選択はご本人のヘルスリテラシーによるところですが、少なくとも現状のように偏った情報になってしまってはいけないと思います」と語っている。