『ラスト・ベガス』―"景気"には"元気"が必要 宿輪純一のシネマ経済学(43)

Las Vegasはご存知のようにギャンブルの街。その一攫千金的なイメージで、映画の舞台にたびたび採用される。『カジノ』、『オーシャンズ11』、『ハングオーバー』、『ラスベガスをぶっ潰せ』、『バグジー』などなど多い。邦画でも筆者の好きなクレージーキャッツが出演する『クレージー黄金作戦』もある。個人的に、筆者もLas Vegasが好きである。人工的ではあるが、“夢”の世界であるからである。空港にスロットマシンがあるのには驚いた(笑)。最近では、ファミリーのリゾートに急速に変貌を遂げているが。
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そもそもこの作品の題を見て吹いてしまった。『Last Vegas』と『Las Vegas』とオヤジギャグ的に掛けてあるからである。もともとVegasとはスペイン語で「肥沃な土地」の意味。砂漠の中に、オアシスがあったからである。

Las Vegasはご存知のようにギャンブルの街。その一攫千金的なイメージで、映画の舞台にたびたび採用される。『カジノ』、『オーシャンズ11』、『ハングオーバー』、『ラスベガスをぶっ潰せ』、『バグジー』などなど多い。邦画でも筆者の好きなクレージーキャッツが出演する『クレージー黄金作戦』もある。個人的に、筆者もLas Vegasが好きである。人工的ではあるが、“夢”の世界であるからである。空港にスロットマシンがあるのには驚いた(笑)。最近では、ファミリーのリゾートに急速に変貌を遂げているが。

さて、本作であるが、なんといっても、主演者4人の格がすごい。ロバート・デ・ニーロ(70歳)、マイケル・ダグラス(69歳)、モーガン・フリーマン(76歳)、ケビン・クライン(66歳)で、平均70歳(!)のアカデミー賞合計6の実力俳優が4人そろっている。ちなみに、本作でもそんな内容もあるが、なかなかに元気で、ケヴィン・クラインの奥様は16歳年下のフィービー・ケイツ、マイケル・ダグラスの奥様は25歳年下のキャサリン・ゼタ=ジョーンズである。映画の中では、ビリー(マイケル・ダグラス)は32歳年下の恋人と結婚する。監督は『ナショナル・トレジャー』シリーズなどのジョン・タートルトーブ(50歳 )。

最近、日本でも年配の方が元気で、日本の弱い景気の中、消費を支えている。特に、年配の女性が元気で、東京駅を通ると多数の年配女性の旅行グループに会う。(男子のグループは少ないように感じる)。それに対し、本作は、年配男子のグループ旅行(男子会)の話である。その男子会のメンバーは、58年来(!)の親友同士であるパディ(ロバート・デ・ニーロ)、ビリー(マイケル・ダグラス)、アーチー(モーガン・フリーマン)とサム(ケヴィン・クライン)。彼らの中で唯一独身のビリーが32歳年下の恋人と結婚することになり、親友が夢の都ラスベガスに集結する。アメリカ映画にもよく出てくる必須の“独身最後のバカ騒ぎ(バチェラー・パーティー:Bachelor party)”とばかりにアーチーらが盛り上がる中、パディが渋い顔をしていた・・・。

ネタバレになるのであまり書けないが、本作では老いても気持ちだけは子どもの時から変わらない友達が、ラスベガスを舞台に大騒ぎする“悲喜交々”のアメリカ的な一夜を描き出す。友情、恋愛、別離、健康など様々な人生の要素が絡み合って、しみじみとしてしまう。

特に、この映画のポイントはとにかく年配の4人が“元気”なのである。(ちなみに『スペース カウボーイ』(2000年)の4人も元気であったが)。

“元気”とは現在の字では“気”の元であり、心身が活発な状態ということであろう。実は、この“気”というのは、経済において非常に重要である。“景気”という言葉であるが、英語ではEconomic ConditionやBusiness Conditionという、数字的なドライな色彩が強い。日本語では“景気”とは“気の在り様”を示す。まさに最近、経済学で新しい分野で、(筆者も最近、研究している)「行動経済学」ではないか。しかも、日本人はそういう感覚を古くから持っているのである。筆者の調べた限りでは、“景気”という言葉は『方丈記』(1212年)に最初に出てきている。

元気であるということは非常に大事なことである。経済学と関係が近い心理学では明るく元気であるようにすると、自分の行動も前向きで肯定的になる。我々の人生も経済も、実は“偶発的”なことに左右されることが多い。その不確実性を乗り越えていくには、前向きさが求められている。

偶発的なことを計画的に対応し、活用しようとする「計画的偶発性理論(Planned Happenstance Theory)」によれは、成功する人の行動特性は、好奇心、持続性、柔軟性、冒険心、そして楽観性(明るく元気)の5つとされている。この中でも、本作品の主人公たちのように、特に明るく元気であることが大事であると筆者は信じる。明るく元気な人の方が人を惹きつけるのも間違いない。

筆者は、実は“根暗”であるので、今後、努めて、明るく元気にしていこうと思う(笑)。

「宿輪ゼミ」

経済学博士・エコノミスト・慶應義塾大学経済学部非常勤講師・映画評論家の宿輪先生が2006年4月から行っているボランティア公開講義。その始まりは東京大学大学院の学生さんがもっと講義を聞きたいとして始めたもの。どなたでも参加でき、分かり易い講義は好評。「日本経済新聞」や「アエラ」の記事にも。この2014年4月2日の第155回のゼミで"9年目"に突入しました。

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