実は知られていない「平均寿命」という言葉の本当の意味

「短命県」青森、「長寿県」から転落した沖縄の事情は
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2017年12月13日、厚生労働省が都道府県別の「平均寿命」(平均余命)を公表した。

「平均寿命」といっても、「実際に亡くなった時の年齢の平均」ではないことは、あまり知られていない。

厚生労働省人口動態・保健社会統計室の担当者も「亡くなった人の年齢の平均を出している訳ではありません」という。

どういうことか。

■「平均寿命」は亡くなった人の平均年齢ではない

その年の死亡率がこのまま変わらないと仮定した上で、その年に生まれた子どもがその後何年生きるか推計したものが「平均寿命」。なので今回発表されたのは「2015年に生まれた0歳の赤ちゃんが、今の死亡状況が変わらなければ、平均的に生きられるであろう」年齢で、「2015年に亡くなった人の平均年齢」ではない。

また、誰かが自分の年齢と平均寿命の差で、あと何年生きられるかと計算するのも厳密に言うと正しくない。0歳時点の平均余命と45歳時点の平均余命は違うからだ。

例えば、今回の調査で北海道男性の平均寿命は80.28歳だが、45歳の人は81.41歳、65歳の人は84.25歳と、年齢が上になるにつれ、余命が伸びている。75歳まで生きた場合、なんと87歳まで生きられる。当初の80.28歳からおよそ7年近く伸びている。

■下げ止まらない沖縄、毎回最下位の青森

男性のトップは滋賀(81・78歳)、女性が長野(87・67歳)。だが、ほかに気になる県が二つある。

青森県と沖縄県だ。以下この2県の順位の推移を見てみる。

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トップクラスの長野、沖縄、青森を比べてみた
MASAKO KINKOZAN
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青森県は今回、男性(78.67歳)が9回連続で最下位、女性(85.93歳)も4回連続で最下位だ。

また、かつて男女ともに1位になったことがある沖縄県は、前回からさらに順位を落とし、男性(80.27歳)が36位、女性(87.44歳)が7位と、さらに順位を下げた。

前回の2010年の結果が公表された時、女性は3位、男性は30位に転落、地元紙などに「330ショック」などの見出しが載り、なぜこれほど順位を落としたのか検証する連載企画も掲載されるなど、大きな衝撃が走った。沖縄県はなぜ、調査のたびに順位が下がっているのか。

沖縄県は年代で死亡率(10万人当たり)の差が大きいという特徴がある。

目を引くのが、働き盛りの35~65歳男性の死亡率の高さだ。5歳刻みで比べても、全国でワースト3位の常連だ。つまり「早死」の多さが、これが65歳を境に徐々に順位を上げていき、75歳~80歳になると死亡率も6番目の低さとなり、長寿県並みになってくる。

80歳以上になると、死亡率は都道府県の中でもっとも低い。つまり、長寿な人は長寿なのだが、若い世代の「早死に」の多さが、沖縄県の平均寿命の伸びを鈍くしている要因の一つになっている。

■寿命の背景にある社会の変化と生活習慣の関係

なぜ年代で死亡率に「格差」があるのか。

アメリカの統治下だった1960年代、肉の加工品が沖縄で急速に普及し、その食生活を子ども時代から経験している世代が成長した結果、脂肪摂取量が全国平均を上回った状態が長く続いているという。また、日本に返還された後は塩分摂取量が増えたという報告もある。こうしたことに加え、車社会であることが運動不足を招いているという指摘もある。

社会状況の変化が、そこに暮らす人たちの生活習慣に影響を与え、ひいては平均寿命の伸びにも影響を与えているともいえる。

対して青森県の男性の死亡率は、35歳以降、ずっとワーストクラスだ。沖縄と同様、35歳以降の早死が目立つ。45~59歳の死亡率を今回1位だった滋賀県と比べると、10万人あたりの死亡率は、約1.8倍も違う。

青森の場合、目立つのが以下のような病気と関係のある生活習慣の状況だ。

(20~60歳の男性の生活習慣の状況)

習慣的喫煙率=33.6%(ワースト9位)

食塩摂取量=11.3g(ワースト8位)

1日当たりの平均歩数=7472歩(32位)

BMI(肥満度)の平均値=24.5kg/m3(ワースト5位)

※国民生活基礎調査

こうした状況に加え、検診の受診の遅れや自殺率の高さなども指摘されている。

危機感を抱いた青森県や弘前大学などが中心となり、地域ぐるみで健康改善の取り組みを前回調査が発表された2012年以降本腰を入れている。

そうしたこともあってか、改善の兆しが見えてきた。

今回の調査で青森県は男女とも相変わらず全国最下位だったが、平均寿命の延び具合は男性が1.39歳で、全国3位の高さだった。女性は0.59歳で、全国で25位だった。