ボジョレー・ヌーボー「◯年に一度のデキ」が何度も言われる理由 ソムリエに聞く

11月の第三木曜日となる21日、その年に作られたワイン、ボジョレー・ヌーボーが解禁された。ところでこのボジョレー・ヌーボー、毎年解禁日が近づくと、その出来について「例年並み」「◯年に一度の出来」などと評価されているが、実際のところどうなのか。今年のボジョレーの出来は? おすすめの飲み方は? ソムリエに聞いた。
|
Open Image Modal
A shop assistant at a store in Nice, southeastern France, arranges bottles of 2013 Beaujolais Nouveau, Thursday, Nov. 21, 2013. According to French law, the wine is released on the third Thursday of each November and this year's theme celebrates the spirit of the roaring 1920's. Beaujolais Nouveau is easy to drink, but everything a fine wine is not: young, poor in tannins and not suited to storage. It's partially because new wines could never hope to stir the imagination the way that the great wines of Bordeaux or Champagne do that the makers of Beaujolais Nouveau resorted to what has become a hugely successful marketing campaign. (AP Photo/Lionel Cironneau)
ASSOCIATED PRESS

11月の第三木曜日となる21日、その年に作られたワイン、ボジョレー・ヌーボーが解禁された。ところでこのボジョレー・ヌーボー、毎年解禁日が近づくと、その出来について「例年並み」「◯年に一度の出来」などと評価されているが、実際のところどうなのか。今年のボジョレーの出来は? おすすめの飲み方は? 東京・自由が丘のワイン専門店「イーエックス・ワイン」のソムリエ、柳田由香さんに聞いた。

――よく、「10年に1度の当たり年!」みたいなことが言われますが、10年に1回以上言われているような気がするのですが……

私達ワイン業界の人間が反省すべき部分です。説明をはしょって「今年はこんなボジョレー・ヌーヴォーだよ」というのを「今年は美味しいよ」とか「10年に1度の当たり年だよ」とかで済ませてしまったためにこんなことになってるんだと思います。

最近で言うと2003年と2005年。2003年は「100年に1度の出来」、2005年は「ここ数年で最高」と言われました。

2003年はフランス全土が猛暑で「太陽のヴィンテージ」と呼ばれ、猛烈に暑い夏のおかげで濃厚なワインになりました。

一方、2005年も夏は暑かったものの、朝晩がグッと冷え込んだ年。酸がしっかりと蓄えられたので濃厚な果実味と豊富な酸のバランスが抜群にいいワインが出来ました。

どちらもヴィンテージ・チャートなどの単なる点数評価では2003年が93点、2005年が95点ととても高いのですが、「めちゃくちゃ濃厚なワイン」「バランスが抜群にいいワイン」と個性は全く違います。

でも、それを一言で言うとどうしても点数だけを見て「○年に一度」とか「超大当たり」とか、そんな表現になってしまった結果、今のヌーヴォーバッシングがあるんだと思います。

最近は大手メーカーさんもそれを見てるのか、今年はあまりそういう表記は見かけませんでしたね(笑)

「今年は良い」と言われた年には当然ボジョレー・ヌーヴォー消費量も伸びていますが、個人的にはやっぱり毎年飲んでいただいて、今年は好きな味かも、今年はちょっと濃いね、なんて、その個性ごと楽しんで欲しいなと思います。

――では、今年のボジョレーはどんな感じなのでしょうか。

一言で言うと、色が濃く、例年より味がしっかりしたボジョレーです。

春先の気温が平年以下だったので心配でしたが、ぶどうの成熟に重要な夏と秋は天候に恵まれました。果皮が厚く、エキスがぎゅっと詰まったぶどうが収穫できたおかげで、イキイキとしたフレッシュなボジョレーに飲み応えが加わっています。

ヌーヴォーはこのイキイキとしたフレッシュさ、新酒ならではのピチピチと弾ける感じが持ち味で、渋さも少ないことからワイン初心者でも飲みやすいとされています。が、実は、酸がしっかりとあるために「すっぱいワインが苦手」という人には飲みにくいことがあります。男性に意外と多い印象です、酢の物嫌いな人とか……。

今年はぶどうが完熟して凝縮感があるので酸と果実味のバランスがよく、例年より酸っぱく感じません。そのため、例年より万人受けがいいボジョレーとも言えると思います。

――そもそもボジョレーってどんなワインを指すのでしょうか。解禁日を祝う理由は?

ボジョレーは地名です。フランスのブルゴーニュ地方にあるボジョレーという地区で造られるワインのことで、同時にワイン名になっています。よく誤解されがちですが、この時期解禁になるのは「ボジョレー」ではなくて「ボジョレー・ヌーヴォー」。ヌーヴォーがついていないボジョレーは普通に一年中あります。

ボジョレーで造られたヌーヴォー(新酒)を、毎年11月第3木曜日から飲んでいいよ、ということです。

日本ではボジョレーだけが有名ですが、もちろん違う産地にも新酒はありますし、フランス以外にもイタリアのノヴェッロ(新酒)も法律で解禁日が定められています。

ボジョレー・ヌーヴォーだけが有名なのはボジョレー・ヌーヴォーが一番だから、ということではなくて、ボジョレーのワイン生産者たちによるプロモーションが成功した結果ではないかと。

以前ははっきりと解禁日が決まっていなかったためどんどんと早売り合戦が加熱してしまい、品質が低下していきました。そこで品質を保つために造られたのが「11月第3木曜日」という解禁日です。

解禁日を祝うのは、今年も無事にワインが出来たことを自然に感謝するため。ワインはぶどうがちゃんと育って収穫出来て造られるものですから、「今年も無事にワインが出来ましたよ」というめでたいお祝いなんです。

――ペットボトルのボジョレー・ヌーヴォーもありますが、どうなんでしょう?

最近流行りのペットボトルや1000円以下のものは悩ましいところです。もちろん消費量が伸びるのは業界の人間として嬉しいところですが、出来れば2000〜3000円ぐらいのものを目安にしてもらうといいと思います。

ボジョレー・ヌーヴォーは解禁日に間に合わせるため飛行機で届きます。その数カ月後、年明けに船便でも同じワインが到着します。ここの価格差が実は1000円ぐらいあるんです。

飛行機便で到着する分はプロモーション費用なども乗ってるかもしれないと考えると単純に1000円違うとは言い切れませんが、仮に500円飛行機代が違うと想定すると、いくらペットボトルとはいえ670円で販売されるヌーヴォーはいったい元値はいくらなの……? と不安になります。

もちろん「味は二の次、安けりゃいい」という場合は反対しませんが、やっぱり安く出す前提で造られたヌーヴォーをオススメすることはありません。

「ワインって美味しいね」と飲んでいただきたいので、造り手が丁寧に造っているもの、人件費や造るためのコストが乗っているものとなると、2000〜3000円が目安のラインかと思います。

――おすすめの飲み方や、食べ物との合わせ方は?

飲む30分前ぐらいから冷蔵庫で冷やしてもらって、少し冷えた状態でお召し上がり下さい。冷やしすぎると酸が強く感じるので、清涼飲料水のような温度まで冷やさなくて大丈夫です。

最近は100円ショップでもワイングラスがありますから、出来ればマグカップやコップは避けて、ワイングラスでお召し上がりいただきたいですね。マグカップなどはコーヒーなどを飲むのには適してますが、口に当たる縁が厚かったり、香りが取りにくかったり、ワインを飲むのには適していないので……。

お料理は気張らず、気軽に用意出来るものがいいと思います。それこそ、ボジョレー・ヌーヴォーを買う時に一緒に生ハムやチーズを買ってくるとか、そんな感じの気軽さで。ピザなんかも相性が良いですよ。

あと、大事なのはうんちくを語らないこと(笑)。ボジョレー・ヌーヴォーは今年も無事にワインができたことを祝うお祭りです。「今年は味が濃いね」「去年のより好き」というぐらいにとどめて、くれぐれもヌーヴォーの起源を語り出したりせず「めでたい!」とだけ言って楽しんで下さい。

ハフィントンポスト日本版はFacebook ページでも情報発信しています

関連記事

10 Incredibly Expensive Wines
1978 Montrachet: $24,000(01 of12)
Open Image Modal
A collection of seven bottles of white wine from Domaine de la Romanée-Conti sold for almost $24,000 a bottle in 2001. Quite a pretty penny for a bottle of wine -- good thing they were still drinkable.
1865 Chateau Lafite: $27,000(02 of12)
Open Image Modal
This 150-year-old double magnum bottle sold for $111,625. It belonged to a Florida-based business man and was purchased by a European private collector over the telephone. That makes it about $27,000 for a 750 ml bottle, and about $4650 a glass.\r\n (credit:Sotheby)
Royal DeMaria: $30,000 (03 of12)
Open Image Modal
Ice wine, a dessert wine that is made from grapes frozen on the vine before the fermentation process begins, is more expensive than other kinds of wine. This one bottle in particular sold for $30,000 in 2006. You could buy a Mini Cooper for that price.\r\n
1775 Massandra: $43,500(04 of12)
Open Image Modal
A Sherry from this Russian vineyard sold at Sotheby\'s for $43,500 in 2001 (about $52,000 today). It is the oldest known bottle from Massandra to date.\r\n
1945 Chateau Mouton-Rothschild: $47,000 (05 of12)
Open Image Modal
Belonging to the owner of Chateau Mouton-Rothschild\'s personal cellar, this 6-liter bottle was sold by Sotheby\'s New York for $310,700. That equals about $47,000 for each 750 ml.\r\n
1787 Chateau Yquem: $100,000(06 of12)
Open Image Modal
A vintage Sauternes, this bottle was snatched up by U.S. wine collector for just $100,000.\r\n\r\n
1811 Chateau d'Yquem: $117,000(07 of12)
Open Image Modal
This bottle of Sauterne became the most expensive bottle of white wine to date when Christian Vanneque purchased it this year for $117,000. It is claimed to be one of the greatest wines in the history of Bordeaux and one of the most supreme vintages ever produced.\r\n\r\nMr. Vanneque was a sommelier at the Paris restaurant La Tour d\'Argent and plans to open the bottle in 2017 to celebrate his 50-year-long career.\r\n (credit:Getty Images)
Romanée Conti 1945: $123,900 (08 of12)
Open Image Modal
This wine was produced during WWII -- before the outbreak of phylloxera -- and only 600 bottles were created. Quite a rare wine, a U.S. collector paid $123,900 for this bottle. It was sold in record breaking time at Christie\'s fine-wine auction.
1787 Chateau Lafite: $160,000 (09 of12)
Open Image Modal
Sold in 1985 to Malcolm Forbes, this bottle was said to be a part of Thomas Jefferson\'s collection and features his initials on the bottle. Forbes paid $160,000 for it, which today equates to about $315,000. This wine is no longer drinkable, and was purchased solely as a collectors item.\r\n\r\n
1869 Château Lafite: $233,972(10 of12)
Open Image Modal
Estimated to reach $8,000 in value, this bottle ended up selling for $233,972 in 2010 to an anonymous Asian bidder. The auction house was absolutely stunned. Prices for Lafite are stratospheric in Asia; it is considered a luxury purchase and a much sought-after gift item.\r\n (credit:Sotheby)
1947 Château Cheval Blanc: $304,375(11 of12)
Open Image Modal
This bottle sold for $304,375. Known to be one of the greatest Bordeaux of all time, it was previously owned by an anonymous Swiss collector and was sold at an auction at Christie\'s in Geneva. It can still be enjoyed today and can even be kept for another 50 years without any problems.
1907 Heidsieck: $275,000(12 of12)
Open Image Modal
Lost in a shipwreck, this bottle was part of a shipment to the Russian Imperial family in 1916 and was discovered by a ship driver in 1997. Each bottle sold of Heidsieck sold for $275,000.