「モーニングバード!」や「とくダネ!」が撤退したのはなぜ? 総選挙のテレビ報道に"異変"(2)

「とくダネ!」が解散総選挙について時間を割いて報道したのは11月17、18、19日まででした。翌20日からは一転して12月2日の公示日まで番組では選挙についてまったく伝えていません。2年前の総選挙とのあまりの姿勢の違いに驚かされます。

放送批評雑誌「GALAC」を発行している放送批評懇談会は「ギャラクシー賞」という、すぐれた番組などに贈られる「賞」の主催者だが、毎月、「ギャラクシー月間賞」を選んでいます。

その講評には、

「そんな中で『争点』をわかりやすく伝えるという基本スタンスを貫いたのが『とくダネ!』の『ニッポンの選択』シリーズ。景気対策、TPP、年金、雇用、子育て支援、原発、地方分権など多岐にわたる争点を独自取材に基づいて解説し問題提起した」

と書かれています。

続いて

「選挙期間中は北朝鮮のミサイル発射や中国機の領空侵犯など大きなニュースが飛び込み、選挙特集を飛ばす報道番組も目立つなかで、最後までシリーズを続けた姿勢も立派だ。(中略)テレビの選挙報道の基本は『争点報道』。そんな原点を肩肘張らずに示した制作姿勢は多くの報道局がつくる番組にこそ見習ってほしい。」

とも評されていました。

ニュース番組などの「報道番組」と比較しても、「情報番組」である「とくダネ!」のシリーズはすばらしかったことが賞賛されています。

確かに2012年総選挙の公示から投票前々日にかけて行われた「とくダネ!」のこのシリーズは内容が充実していました。

海外取材を駆使して、TPPではアメリカとの自由貿易を進める韓国のプラス面とマイナス面、子育て支援の先進国フランスのプラス面とマイナス面を報告してました。

「報道番組」を自称しながらも、ろくに選挙にかかわる争点さえ伝えようとしないニュース番組も目立つなか、「情報番組」の「とくダネ!」が毎日のように「争点」について伝え続けた姿勢は光っていました。

ところが、2014年の総選挙報道をチェックしてみると、公示から投票日までの選挙期間中に「とくダネ!」が選挙について伝えたのは、わずかに2回でした。

1回は各党首の遊説風景をごく短く伝え、もう1回は投票日とマラソンの実施が重なって困惑気味の奈良市の話題。どちらも時間をたっぷりかけて「争点」を伝えつづけた2012年の「ニッポンの選択」シルーズとは雲泥の差の力の抜き具合でした。2012年と比べるとほとんど手抜き状態だと言ってもいいほどです。

上記の比較は公示後についてです。公示前はどうだったでしょう。

「とくダネ!」が解散総選挙について時間を割いて報道したのは11月17、18、19日まででした。翌20日からは一転して12月2日の公示日まで番組では選挙についてまったく伝えていません。

2年前の総選挙とのあまりの姿勢の違いに驚かされます。

しかも番組が選挙を扱わなくなった11月20日というのは、自民党が各テレビ局に選挙報道での「公正・中立、公平」を求める「要望書」を出したタイミングです。20日については「とくダネ!」ではもともと選挙についてやらない予定だったのかしれませんが、解散前日までは3日も連続して報道していた番組が、解散の日でさえまったく伝えず、公示の日にもまったく伝えないというのはどうみても不自然な印象です。

いったいどうしたことでしょう。

テレビ朝日の情報番組「モーニングバード!」についても選挙報道について調べてみました。

たとえばキャスターが福島の仮設住宅で暮らす人たちにインタビューして「福島の声は届くか」などの特集をしたり、それぞれの政党に対して「原発をゼロにするのか」等を問う特集などを放送していました。

ところが、2014年の総選挙では、11月18日には「街の景気は?」、19日には「解散の大義は?」、20日には「選挙ポスターで大変身」などの報道を行っていたのですが、これを最後に11月27日に[アベノミクスは上手く行っているのか」について専門家のインタビューを中心に伝えた他は公示以降も選挙についてはまったく扱わない日が続き、12月12日(金)の投票前の最後の放送で、「投票率アップめざしてアイドル登場」というようなヒマネタを短く報道して最後になります。

テレビ朝日の「ワイド!スクランブル」も同様でした。これらの番組の中には、報道フロアからアナウンサーがニュースを伝えるニュース枠もあるのですが、2012年にはそのニュース枠だけでなく、番組そのものの時間を大きく割いて選挙について「何が争点か」や「各党の主張」などを伝えていたのが特徴です。

それ以降は、番組内のニュース枠で短めに伝えることはあってもその他に番組本体の時間を割いて伝えることはありませんでした。ここでも 11月20日というと自民党が要望書を出したタイミングと重なってきます。

ワイドショーは激しい視聴率競争に明け暮れているので、今回の総選挙については争点がわかりにくいとか、投票前から勝敗が決しているような感じで興味を引かないという要素があったとは思います。一方で、それだけでは説明できない点が気になります。2年前には選挙報道に熱心だったこれらの番組が、公示の日でさえ選挙を大きく扱わず、しかもタイミングを合わせたように11月20日前後からそろって選挙を大きく報道しなくなってしまったという事実があります。これははたして偶然なのでしょうか。

自民党の要望書が出たタイミングとあまりに一致してしまいます。

もう少しこの問題を考えてみたいと思います。

(2014年12月29日「Yahoo!ニュース個人」より転載)