プラットホームのながら歩きと酒酔い歩行は危険

近年、「歩きスマホ」という言葉が流行している。言葉の意味は、「歩いている最中にスマートフォンを操作している人」だ。
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■ながら歩きをやめよう

近年、「歩きスマホ」という言葉が流行している。言葉の意味は、「歩いている最中にスマートフォンを操作している人」だ。スマホに夢中になるのは結構だが、我を忘れると大変なことになる。

ホームから転落してしまったら、列車にひかれる危険性はもちろんのこと、次の事態が発生することが考えられる。

1.感電死-地下鉄の場合-

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地下鉄の多くは、相互直通運転を行なうため、「架空線式」といってパンタグラフから集電する(相互直通運転を行なわない路線でも架空線式を採用する場合がある)。ただし、一部の路線では「第3軌条式」(以下、第3軌条)といって、線路脇に敷設したレールから集電する。架空線式は直流600・750・1500ボルト、交流20000・25000ボルトなのに対し、第3軌条は直流600・750ボルトのみだ(日本では、交流の第3軌条は存在しない)。法令により、第3軌条の直流1500ボルトが認められていないからである。

第3軌条は、トンネル断面積を若干縮小できるので、建設費低減というメリットがあった。現在では、架空線式のリニアメトロがトンネル断面積を大幅に縮小できるため、第3軌条のメリットが薄れている。

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鉄道に興味や関心がない人は、第3軌条について気に留めないと思う。誤ってホームから線路に転落しなければいいのだから。ただ、実際に転落した場合、誤って第3軌条に触れると感電死する危険性がある。

現在、第3軌条を採用している路線は下記の通り。

●札幌市交通局:南北線(全駅可動式ホーム柵設置)

●東京メトロ:銀座線、丸ノ内線(丸ノ内線のみ全駅可動式ホーム柵設置)

●横浜市交通局:ブルーライン(全駅可動式ホーム柵設置)

●名古屋市交通局:東山線、名城線、名港線

●大阪市交通局:御堂筋線、谷町線、四つ橋線、中央線、千日前線

●北大阪急行電鉄:南北線

●近畿日本鉄道:けいはんな線

※北大阪急行電鉄南北線と近畿日本鉄道けいはんな線は、「地下鉄」ではない(大阪市交通局と相互直通運転を行なうため、第3軌条を採用した)。

可動式ホーム柵を設置していない駅での歩行には、充分注意していただきたい。

2.感電死-跨座式モノレールの場合-

3.転落死-モノレール全般-

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跨座式モノレールというのは、懸垂式ホームに比べ、感電死しやすい。軌道桁の両脇に電車線(直流750・1500ボルトのいずれか)があり、そこに触れると感電するからだ。

現在、日本のモノレールは下記の通り。

●東京モノレール(跨座式。全駅可動式ホーム柵設置)

●多摩都市モノレール(跨座式。全駅可動式ホーム柵設置)

●舞浜リゾートライン(跨座式。全駅可動式ホーム柵設置)

●大阪高速鉄道(跨座式。全駅安全柵設置)

●北九州高速鉄道(跨座式。全駅安全柵設置)

●沖縄都市モノレール(跨座式。全駅可動式ホーム柵設置)

●湘南モノレール(懸垂式)

●千葉都市モノレール(懸垂式)

●スカイレールサービス(懸垂式。全駅ホームドア設置)

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跨座式モノレールのホームには必ず柵がある。安全を重視しているからだ。普通の鉄道に比べ、ホームから1番下までの高さがかなりあるので、誤って転落してしまうと骨折する可能性もある(感電しなかった場合)。大阪高速鉄道、北九州高速鉄道は安全柵で対応しているので、柵と柵のあいだから転落事故が発生する可能性はある。

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湘南モノレール、千葉都市モノレールは懸垂式で、ホームから走行面までの高さがなく、まるで路面電車の停留所みたいだ(両事業者とも、ホームに柵がない)。ながら歩きに夢中で誤ってホームから落ちたとしても、"段差"という感覚だと思う。

懸垂式モノレールホームの怖いところは、走行面から転落してしまった場合だ。千葉都市モノレールの一部の駅では、転落事故に備えてなのか、非常用の柵と通路があるのに対し、湘南モノレールでは命の保証がない。走行面から転落すると、数メートル下の地面だからだ(跨座式モノレールでも同じことが言える)。

4.感電死-新交通システムの場合-

新交通システムの大半は、ガラス張りのホームドアを採用しているので、よほどのことがない限り、転落事故は起きない。ところが一部の路線では、安全柵、柵なしで対応しているところがある。

山万ユーカリが丘線は、日本で唯一のVONA-one方式による新交通システムである。地区センターを除き安全柵もない。ホームにあがると、「危険 立入禁止(750ボルト通電中)」、「乗降時以外はホーム端に近寄らないでください」などの案内表示があり、乗客に安全確保の協力を求めている(1982年11月2日の開業以来、無事故運転を継続している)。

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誤ってホームから転落した場合は要注意だ。第3軌条と違い、どこに触れたら危険なのかがわからないからだ。画像を御覧いただくと、ホームから転落した場合、感電しやすい。走行面から走行面までジャンプして、点検歩道に避難するしかない。

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埼玉新都市交通及び西武鉄道山口線は、安全柵で対応しているので、柵と柵のあいだから転落事故が発生する可能性はある。軌道の側壁には、剛体トロリ線が3つあり、三相交流600ボルトの高圧電流が流れている。

現在、日本の新交通システムは下記の通り。

●神戸新交通(全駅ホームドア設置)

●大阪市交通局:南港ポートタウン線(全駅ホームドア設置)

●西武鉄道:山口線(全駅安全柵設置)

●埼玉新都市交通(全駅安全柵設置)

●山万(地区センターのみ安全柵設置)

●広島高速交通(全駅ホームドア設置)

●東京都交通局:日暮里・舎人ライナー(全駅ホームドア設置)

●名古屋ガイドウェイバス

●横浜新都市交通(全駅ホームドア設置)

●ゆりかもめ(全駅ホームドア設置)

■飲酒をするとプラットホームから転落する危険性が高い

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毎年12月1日から1月10日まで、関東地方の鉄道事業者24社局が合同で「プラットホーム事故0運動」を実施しており、期間中は、駅へのポスター掲出、駅や車内で啓発放送などを行なう。

年末年始は、忘年会や新年会を行なう企業、団体などが多く、アルコールを摂取した状態で帰宅の途に就く人が多い。特にフラフラな状態で歩くと、ホームから転落する危険性が高い。国土交通省(以下、国交省)関東運輸局によると、2013年度にプラットホームで発生した人身障害事故の61%は、酔客だという(参考までに、2012年度は63.5%)。無傷で助かるならまだいいが、最悪の場合は死に至る。プラットホームから線路への転落や、人と列車が接触すると、ダイヤが乱れ、多くの人々に迷惑をかける。

■12月と1月は転落件数が多い

国交省によると、全国のプラットホームにおける人身障害事故は、2003年度の106件に比べ大幅に増えており、2005年度以降は150件以上発生している。特に2008年度と2010年度以降は200件を超えてしまった。2006年度と2008年度以降の下半期については、酔客の事故が飲酒をしていない人よりもかなり多かった。

2002年度から2013年度まで、プラットホームにおける人身障害事故は2,130件発生した。月別発生は12月と1月、曜日別発生は金曜日、時間帯別は23時台が多い。

■人がプラットホームから転落したら、ただちに非常停止ボタンを

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「プラットホーム事故0運動」の目的は、下記の通り。

旅客に対しプラットホーム上での列車との接触やホームから線路への転落について注意喚起をするとともに、危険と感じたときは非常停止ボタンを押していただくことを目的とする。

出典:国交省ホームページ「『プラットホーム事故0運動』について」

首都圏のほとんどの駅で、黄色い非常停止ボタンが設置されている。このボタンを押すことで、駅の周辺を走行している列車が一斉に停止し、安全が確認され次第、運転を再開する。自動車と同様、列車もブレーキをかけた瞬間には止まれないので、危険と感じた時は、ただちに非常停止ボタンを押していただきたい。ホームから線路へ転落しただけなら、数分程度の遅れで済むことが多いが、列車にはねられると1時間前後動かない。

★備考

・公益社団法人アルコール健康医学協会ホームページ「お酒と健康 飲酒の基礎知識」

(Yahoo!ニュース個人「ホームのながら歩きは危険」「2013年度プラットホーム事故0運動」より転載。一部加筆・修正しています)