補助金は企業に対する生活保護

農水相の辞任以来、「政治とカネ」をめぐって国会の紛糾が続いています。

農水相の辞任以来、「政治とカネ」をめぐって国会の紛糾が続いています。

問題とされたのは、国の補助金を交付された会社から献金を受けていたことです。補助金の原資は税金ですから、これを認めれば、政治家は好きなように税金を私物化できてしまいます。

献金を受けた政治家は、補助金を受けた会社だとは知らなかったし、そもそもすべての補助金を調べるのは不可能だと弁明しています。

民主政の基本は、候補者が私財を投じ、市民からの支援を受けて政治への参加を目指すことです。その原則からすれば、政治家が個人や会社、団体から広く献金を募るのは当然で、現在のように政党交付金という税金を分配するのは邪道です。

パーティや講演会などで政治家と知り合うと、支援を求める郵便物が送られてきます。そこには銀行口座が記載されているので、その政治家を応援したいと思ったらお金を振り込みます。これが政治献金です。

政治家の後援会には、このようにさまざまな政治献金が振り込まれてきます。それをいちいち、「あなたの会社は補助金を受けていませんか」と問い合わせることなどできない、というのももっともです。

そのため「政治家本人が知らなければ寄付を受けても違法にならない」との規定が設けられているのですが、そうなるとこの特例を悪用する政治家が出てきます。これでは政治に対する信頼が崩壊してしまいますから、政治資金のさらなる規正強化が求められることになるわけです。

今回の騒動で不思議なのは、この不毛な堂々巡りが繰り返される一方で、誰も補助金がなぜ交付されたのかを問わないことです。

「政治とカネ」のもっともかんたんな解決法は、補助金をすべてやめてしまうことです。これなら税金が政治家に流れることはありませんから、面倒な手続きなしに堂々と政治献金を募ることができます。

補助金というのは、要するに、会社に対する生活保護のことです。事業資金が必要であれば、銀行から融資を受けるか、投資家から資金を募ればいいだけですから、マトモな会社はそもそも補助金など必要ありません。それをわざわざ申請するのは市場から相手にされず、国民の税金にすがらなければ事業が継続できないからでしょう。

ところが今回の事件では、最大手の広告代理店や地域の中核企業までが補助金を交付されている実態が明らかになりました。これは高額所得者が"合法的に"生活保護を受給しているのと同じことですが、このはなはだしいモラルハザードを批判する声は聞こえてきません。

それはもちろん、補助金こそが政治家の権力の源泉だからです。

政治家が求めるのはカネではなく票です。有力政治家は官僚を操り、支持者や支援企業・業界に巨額の税金を還流させ、効率的な集票マシンをつくって選挙を勝ち抜いていきます。

すべての政治家の利害が一致している以上、政治資金規正法がどう改正されようと、補助金がムダに使われる構図は変わりません。これが政治というゲームの本質だとすれば、税を納めるのはやはりバカバカしいだけなのです。

(2015年3月23日「橘玲 公式サイト」より転載)