日テレとフジで「取材」「監修」の深さが違う?「明日ママ」が批判され「僕のいた時間」が批判されない理由

水曜午後10時の民放ドラマが明暗を分けている。日本テレビの「明日、ママがいない」は、グループホームと呼ばれる小規模な児童養護施設が舞台になって、実の親が育てられない子どもたちが里親や養子縁組の相手の養親を探す物語だ。
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水曜午後10時の民放ドラマが明暗を分けている。

日本テレビの「明日、ママがいない」は、グループホームと呼ばれる小規模な児童養護施設が舞台になって、実の親が育てられない子どもたちが里親や養子縁組の相手の養親を探す物語だ。養護施設の描き方がおどろおどろしい場所として強調されていた点や児童養護施設で暮らす子どもたちをペットショップの犬にたとえる表現などが問題となって、児童養護施設や里親の団体、「赤ちゃんポスト」を運営している病院などが「子どもたちを傷つける」として内容見直しを求め、提供スポンサーが降りるなどの事態を招いた。

他方、フジテレビの「僕のいた時間」は、主人公の若者(三浦春馬)が体中の筋肉が次第に衰えてやがては死に至るALS(筋萎縮性側索硬化症)と呼ばれる神経難病の患者になり、残された日々を懸命に生きる物語だ。不治の病ゆえに恋人(多部未華子)とも別れを決意する。

ALSが進行する過程のシーンでは、患者にとってはかなりどぎついと思われる台詞も出てくる。

「僕のいた時間」ALS患者の青年と医師との会話(1月22日放送の第3話)

青年「おれ、見ちゃいました。人工呼吸器つけた人。自分で身体動かせないんですよね」

医師「はい」

青年「食べられないんですよね」

医師「はい」

青年「しゃべれないんですよね」

医師「はい」

青年「機械で息しているんですよね」

医師「はい」

青年「何もできないのに意識だけははっきりしているんですよね」

医師「はい。でも、突然そうなるというわけではありません」

青年「でも早ければ1年でそうなるかもしれないんですよね」

医師「ALSが進行して、たとえ身体が動かなくなったとしても、一人ひとりの生き様は違います。みなさん、自分の人生を生きていらっしゃいます」

青年「それで生きているって言えるんですか!」

最後の青年の言葉は絶叫に近い。

かなり強烈な台詞だ。

言葉だけをとらえれば、ALSの患者は果たして生きている意味があるのか、とも取られかねない台詞だ。

だが、「明日ママ」と違って、この台詞に抗議が殺到したという話は聞かない。

「僕がいた時間」ALS 患者の兄と医大生の弟の会話(2月12日 第6話)

弟「兄さんは何でそんなふうにしていられるの? この先真っ暗なのに」

兄「この先真っ暗? 俺にそういうこと言わないだろう、普通」

弟「事実じゃん」

「この先真っ暗」という表現だけをとらえると、ALS の患者を傷つける、とも受け取られる可能性がある台詞だ。

しかし、この台詞にも抗議が殺到したという話も聞かない。

なぜなのか?

それは、このドラマがALSの患者たちや医師たちを丹念に取材し、その上でドラマを作り上げているからだ。

ALSの患者が病気を告知された直後に見せる絶望的な反応や周囲の感想をシーンにしつつも、その先に「生き様」としての患者の人生への肯定が明確に見えるからだ。

「僕がいた時間」のスタッフ、キャストのクレジットには

「協力 日本ALS協会」「医療監修 林秀明」「撮影協力 東京都立神経病院」

と書かれている。

「医療監修」をしているという林秀明氏は、ALS研究でもっとも進んでいる東京都立神経病院の院長で、ALSなどの神経難病治療研究の最前線に立つ第一人者の医師だ。

つまり、このドラマは、ALSという難病の患者団体やその病気について国内を代表する病院の医師や患者団体などに取材し、彼らがかかわる形で制作されている。

ドラマ「僕のいた時間」の一番最後のテロップには以下のように書かれている。

ALS(筋萎縮性側索硬化症)には、多用な症例があり、

症状の程度・進行のスピードは人によってさまざまです。

この番組は、取材を基に医療監修を受け制作した

フィクションであり、登場する人物・団体・小道具の設定等は

すべて架空です。

「取材を基に」「医療監修を受け」と明記されているのだ。

一方の日本テレビの「明日、ママがいない」を比べてみよう。

キャスト・スタッフクレジットに「児童養護施設監修 岡本忠之」という名前がある。

岡本忠之氏は神奈川県内の児童養護施設で施設長を務めていた人物だが、児童養護施設を束ねる全国児童養護施設協議会の代表というわけではない。

「僕のいた時間」は日本ALS協会という、この問題に関して代表的な当事者団体が協力して制作している。

他方、「明日ママ」はそうした団体の名前もなく、監修者も児童養護施設全体を代表するような立場の人でもない。

しかも、週刊誌の報道によると、「一話と二話の台本は実際の施設の実態とかけ離れているので日テレにその旨を伝えた」と話しているが局の方針は変わらなかったという。(「週刊文春」1月30日号の記事)

「監修」と言っても、アドバイスを聞いてもらえないなら、飾りだけだ。制作過程の弁解用として、「児童養護施設監修」を設けていたものの、フジテレビと比べれば徹底した「監修」ではなかったことが分かる。

「明日ママ」の最後のテロップに書かれているのは以下の言葉だ。

この物語はフィクションです

登場する人物・団体などはすべて架空で

実在の人物・団体とは関係ありません

フジと違って「取材に基づく」「医療監修を受け」などの表現はない。

ただフィクションである点を強調している。

フジのように「取材」を基にしたとは明記していないところも大きな違いだ。

日本テレビもドラマ制作にあたっては「取材」を行ったと説明しているが、その「取材」はどの程度のものだったのか。

あるいは「監修」も関係団体や病院などが協力したフジテレビと違って、関係者が納得できる内容になっていなかったといえる。

ドラマの制作にあたっての「取材」と「監修」の深さ。

その2つが同じ水曜午後10時のドラマにおける品質管理と危機管理における「甘さ」と「厳しさ」の違いにつながっている。

(2014年2月13日「Yahoo!個人」より転載)

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