鹿児島のパン屋さんがフツーの日常を綴る「カリヨン黒板日誌」

街のカフェやレストランでもよく見かけるように、「ル・カリヨン」の黒板はその日のメニューを手書きすることから始まったのですが、いつからか、片面のメニューのみならず、もう片面に、工房スタッフの日誌がびっしりと綴られるようになったそうです。
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パン工房「ル・カリヨン」の2013年8月30日付黒板日誌 (撮影:松岡由希子)

鹿児島市の近郊・吉野町のパン工房「ル・カリヨン」では、全粒粉から作った香ばしい味わいのパンとともに、店の前に置かれた黒板が密かな人気を集めています。

街のカフェやレストランでもよく見かけるように、「ル・カリヨン」の黒板はその日のメニューを手書きすることから始まったのですが、いつからか、片面のメニューのみならず、もう片面に、工房スタッフの日誌がびっしりと綴られるようになったそうです。

この黒板日誌の筆者は、「ル・カリヨン」のスタッフである伊藤勇二さん。2007年からほぼ毎日、続けられています。定番の日誌の書き出しと同様、日付・曜日・天気・気温からスタートし、天気予報から政治・社会・事件などの時事ネタ、芸能ニュース、工房での仕事、ガールフレンドとのラブラブ話まで、コンテンツは盛りだくさん。猛暑シーズンには「くれぐれも熱中症に気をつけましょう」と呼びかけ、冬になれば「インフルエンザにかからないようにしましょう」とやさしく注意を促します。筆者のほのぼのとした日常や温かいまなざしに映る世相、温かい人柄のにじみ出るメッセージが、多くの来店客たちを楽しませてきました。

昨今、メールやソーシャルメディアネットワークの普及によって、私たちのコミュニケーションの多くはデジタル化しています。一方で、以前、手書きの「ひとことカード」を通じてお客さんからのいかなる要望にも丁寧に回答する"生協の白石さん"が話題になったように、この黒板日誌も、最近では珍しくなった"手書き"ならではのぬくもりと、文体や筆跡から自然と伝わる筆者の実直さが、多くのファンを魅了しているのかもしれません。

「ル・カリヨン」の5年以上にわたる黒板日誌は、「カリヨン黒板日誌」(しょうぶ学園著・パルコ出版)として書籍にまとめられています。ご関心のある方は、ぜひご一読ください。