日本でも規制緩和を! ミシガン湖を眺めながら、シカゴでセグウェイ体験

日本では、公共の場ではまったくと言ってよいほど見かけることはない。

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「セグウェイ」という乗り物について耳にしたことがあるだろう。この電動の並行二輪車は、高性能車椅子の開発から発展し2001年12月に発表された新しいタイプの乗り物。その革新性から、スティーブ・ジョブスやビル・ゲイツが絶賛、著しく話題となった。

広大なアメリカでは、ばかでかい倉庫内での業務や広いオフィスでの移動などで普及しているものの、日本では2006年に発売されつつ道路交通法上、原付自転車でもなく普通自動二輪車とカテゴライズされているため、公共の場ではまったくと言ってよいほど見かけることはない。

時速20kmも出ないような電動の乗り物を車道限定走行に振り分けてしまうのだから、普及するわけもない。かろうじて、東京マラソンや羽田空港の警備に使用されたレベルだ。屋外でリクレーションに活用されているとも聞かない。「セグウェイ」という言葉さえ耳にしなくなって久しい。

※函館などで一部、観光用に使用されているとのこと。失礼。

筆者もこの乗り物には、けっこうな興味を抱いていたものの、日本で見かけたことはないのだから、そのチャンスはこれまでやって来なかった。だが今回、シカゴの美術館に足を運ぶと、美術館を取り巻く広大なレイクフロントパークを巡るに「セグウェイ・ツアー」があるという。

最近ではすっかり忘れ去られてしまったが、若い頃はサーキット・ライセンスを保持し「かっとびタマちゃん」と呼ばれたバイク乗りである。「好奇心は猫をも殺す」とは言うものの、私は猫のタマではない。そもそも、かっとびタマちゃんとしては、乗りこなせない二輪があるというのは我慢ならない。

さっそく元気よく、公園のツアー案内所へと向かう。案内所は、コロンバス・ドライブとモンロー・ストリートの交差点からややミシガン湖寄り、モンロー・ストリートの北側地下にある。「Absolutely Chicago Segway Tours」が、今回の目的地。

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案内所に顔を出し、ツアーに参加したい旨を告げると、シカゴっ子っぽい明るいお兄さんが、説明をしてくれる。「自転車に乗れるぐらいの運動神経があればばっちりだよ」とのこと。初めての者は誓約書にサインをし、10分程度の安全説明のビデオを視聴。あとはお兄さんがセグウェイの実機に乗り、操作を解説してくれるので、それを頭に入れさえすればOK。

結論からすると、セグウェイはオートジャイロがすべてを司っているので、子供でも簡単に乗りこなせる。正面に壁がある、つまり障害物で遮蔽されると自動的に停止するようプログラムされている。そんなわけで、我々初心者向けのセグウェイは、正面を壁に向け立てかけられるている。飛び乗ったとしても、突然動き出したりしないように配置されているというわけ。ツアー参加者は、壁に向かってセグウェイに乗る。並列の二輪の間に両足を乗せ、ハンドルを握れば乗車完了だ。

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運転方法はいたって簡単。直立した状態から、前のめり荷重をかける、つまりつま先に力を加えると前進。荷重を後ろへ、踵にかけるとバックする。右折する際は、自身が捕まっているハンドルバーを右に、左折する際は左に傾けるだけ。実はちょうど足を載せる面にセンサーが仕込まれており、このセンサーがオートジャイロと連動し、セグウェイの動作を決定している。

お兄さんに手を添えられ、バックし壁から離れ、試しに前進してみる。少々おっかなびっくりではあるものの、案内所の目の前の通路で、5分ほど走らせていると、Uターンの仕方などすっかりコツがつかめて来る。前後進については、あまり膝を曲げず、直立姿勢のほうがスムーズに走行できる。この日の参加者全員がなんとなく慣れて来たところで、お兄さんの引率の元、案内所前を離れ地階からスロープを登り、ツアーにでかけることに。

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この日、シカゴの天気はまさに「晴天」。冬の寒さ厳しく、ミシガン湖からの風が冷たい「ウインディ・シティ」の異名を持つ街ながら、そんな風はすっかりナリを潜め、サイクリングなどにうってつけの気持ちいい天気だ。案内所を出発したツアーはモンロー・ストリートの歩道を東へと進む。

セグウェイの車輪は子供の三輪車のタイヤを一回り大きくしたようなサイズなので、交差点の横断歩道とのギャップなどでは気を配り徐行する必要がある。しかし、すっかり慣れて来ると、それほど神経を尖らせず、ぼーっとしてもずんずん快適に進んで行く。最高時速も20キロ程度。かっとびタマちゃんらしく、ぶっともばそうと思っても、所詮その程度の巡航スピードなので、軽いサイクリング体験のような爽快感だ。

ツアーはミシガン湖沿いまで出ると、そのままレイクサイドの遊歩道を南下。遊歩道は桜かと思うようなピンクの花がたわわになるフラワーロードになっており、思わず出張中の息抜きであることを忘れてしまいそうな気分になる。

だいぶ快適にセグウェイを飛ばし、気づいたことは、2つ。ひとつはスキーが得意な方は、きっと慣れるのが早いだろう点。なんとなく、ターンの際の荷重のかけ具合が似ている。バイク乗りにとっても同様で、ターンの時の片足荷重の加減をコントロールするあたりが非常に似ている。膝の使い方もちょっと似ている。

もうひとつは、ふだん使わない足の裏の筋力を使っているのか、足の裏が痛くなった。乗車中に対した運動をしているとは思われないが、やはり前後に荷重を移動させるような動きは、日常生活にはないもの。「くたびれた」と表現して過言ではない疲労感である。

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シカゴ中心部のミシガン湖沿いは、緑に覆われた大きな公園になっている。ニューヨークのセントラルパークが、湖沿いにあるのを想像してもらえば、少しわかりやすいだろうか。公園のど真ん中にあるバッキンガム噴水をぐるぐるとまわり、晴天のシカゴの空気を満喫。そして、また湖沿いを水族館まで飛ばし休憩。水族館の高台から、シカゴのスカイラインが非常によく見渡せる。

アメリカン・フットボールのプロリーグ、NFLでもっとも古いフランチャイズ・スタジアム「ソルジャー・フィールド」の手前まで足を伸ばし、Uターン。このスタジアムは1924年に開場。1971年から地元シカゴ・ベアーズの本拠地となっている。

水族館で一度、休憩を挟んだためだろうか。この頃には足の裏の痛みも消え、すっかりセグウェイの虜になっている。急加速させたり、ローリング走行したり、お兄さんも「なかなかいいね」と褒められるほどに上達。アメリカ人特有のリップサービスだったとしても、実にいい気分である。

いや、これはセグウェイ、かなり愉しい。晴天の下、シカゴの美しいレイクサイドを一日中、走っていたい気分だ。

私のようなバイク乗りは、セグウェイでレースをやったらみんなワクワクするんじゃないかと考えてしまう。乗り物の特色上、老若男女とも参加でき、大したスピードでもないので、大怪我も少ないはずだ。ちょっとのんびりしたレクレーション要素の高いモータースポーツとして人気を博すことうけあいである。閉じられたサーキット走行なら、日本の融通の利かない規制からも逃れられる。

約2時間ほどのツアーで、すっかりセグウェイに魅了された私は、どれぐらいの価格で入手可能かネットで検索を試みた。新車は100万円近くするが、中古なら50万円程度で手に入る。ちょっとしたスクーターを買いもとめるつもりなら、問題ない価格帯だ。別メーカーの類似品なら10万円程度だ。うむ、セグウェイ、欲しいな、欲しいな。少なくとも、どこかのアミューズメント・パークがアトラクションとして導入してくれるとか、公共の公園などでシカゴのようにセグウェイ・ツアーしてくれるとか、もう少し融通が利かないものだろうか。

それにしてもなぜゆえ、こんな愉快な乗り物が日本の公道では許可されないのか。日本の法規制の融通の利かなさの象徴ではなかろうか。お友達の加計学園に特別に獣医学部を作るような悪知恵働かすようなら、こんな規制こそ特区でも設け、緩和してもらえると、国民の歓心が買えるんではなかろうか。

セグウェイ体験は、純粋に愉しいゆえ、機会があったら必ずトライするべし。