私だって塾に行きたい。貧困家庭の高校受験生に「スタディクーポン」 どういう仕組み?

渋谷区長「親の所得で夢を諦めるのはやめてもらいたい」
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(上段、上から)株式会社CAMPFIREの酒向萌実さん、NPO法人ETIC.の佐々木健介さん、新公益連盟・代表理事の駒崎弘樹さん、スマートニュース株式会社の望月優大さん、(下段、左から)スタディクーポン・イニシアティブ運営団体のNPO法人キズキ理事長の安田祐輔さん、スタディクーポン・イニシアティブ運営団体代表 公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン代表理事の今井悠介さん、渋谷区長の長谷部健さん
Kaori Sasagawa

お金がなくて塾に通えない。でも、私だって塾に行きたい。

NPOや企業で運営する「スタディクーポン・イニシアティブ」と渋谷区が協働し、渋谷区内における貧困世帯の高校受験生に学習塾などで利用できる「スタディクーポン」を提供すると発表した。クラウドファンディングで1000万円の寄付を集めるという。

「スタディクーポン・イニシアティブ」は10月12日、貧困世帯の中学生の教育格差を解消するために発足。自治体、NPO、企業、市民が協働で取り組む「コレクティブインパクト」の手法を用いて、教育格差の解消に取り組むプロジェクトは全国初の試みとなる。今後、この取り組みを全国の「政策」として広げていくことを目指すという。

■「家族だけでどうにかできる問題ではない」

同団体の代表で、東北などの被災地で就学支援を行う公益財団法人チャンス・フォー・チルドレン代表理事の今井悠介さんは、「家族だけでどうにかできる問題ではない。社会全体でどうにかしていきたい」と以下のように語った。

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Kaori Sasagawa

「いろんな子どもに出会ってきた。ひとり親の家庭で、お母さんも病気で働けない状況で、周りのみんなが受験で塾に通っている時期に塾に通えない子もいた。自分ひとりで勉強して、志望校(のランク)を大きく下げていた。塾に通っている子も、本当は5教科(の授業を)受けたいけど、家庭の事情で1教科だけ通っている子もいる」

「自分の努力でどうにかできる問題ではない。親は、どうにか子どもたちには希望を叶えてあげたいと思っているが、気持ちだけではどうにもできない。子どもたちが将来やりたいことに関して制限されてしまう状況。家族だけでどうにかできる問題ではない。社会全体でどうにかしていきたい」

■「民間から声を上げて」行政とNPOの協働

長谷部健・渋谷区長は、自治体とNPOの協働での取り組みについて「僕自身、NPO(グリーンバード)を経験してきて思うのは、行政にすべての責任を被せるのはきついと思っていて、手の届かないところをNPOが担う。塾のサポートは、NPOの取り組みとしてすごくいいんじゃないか」と語った。

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Kaori Sasagawa

「渋谷区の公立中学に通う子どもたちの約3割が就学支援を受けている。貧困格差は残念ながらあるという認識。行政としては学校で教育をしている。塾は学校外教育。学校外でのサポートに税金を使うことについては異論があるのも現状で、民間の資金で塾に行けない今困っている子どもたちのサポートをしてもらえるのは、素直にありがたい話だなと思った。寄付の呼びかけも積極的にして、いい検証ができるように取り組んでいきたい」

新公益連盟・代表理事の駒崎弘樹さんは、「NPO業界一丸となって、この活動を支えていきたい。教育無償化といわれているが、学校外での塾のことが見逃されている。NPO、行政、市民。コレクティブ・インパクトというセクターの垣根を超える取り組みは、アメリカや諸外国では主流になっている。行政が声を上げづらいという声が区長からありましたが、民間から声を上げて、取り組みを全国に広げて行きたい」と語った。

■「親の所得で夢を諦めるのはやめてもらいたい」

支援する子どもの数は、寄付金がどれだけ集まるかによって変わるが、目標額の1000万円が集まれば、33名ほど支援し、毎月一人あたり約2万円を目安に合計20万円分のクーポンを支給できるという。

「子供たちをどう選考するのか」という質問に対し、今井さんは「まだ選考基準は議論していますが、基本的に学力は選考基準にしない。所得の低い家庭の子供たちになる。子供たちの学習意欲を見ていくことになると思っている。支援を通じて、より伸びて行くだろうという子に届けたい」と語った。

同じく同団体を運営するNPO法人キズキの理事、安田祐輔さんも「私もひとり親だった。(親の所得に関係なく)みんなに同じ選択肢を提供できることが大事」と語った。

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Kaori Sasagawa

最後に、長谷部区長は「親の所得で自分の夢を諦めるのはやめてもらいたい。そうならないサポートをしていきたい。私も子育て中ですが、子どもたちが夢に向かって進んでいくことが成長段階で大事だと思う。やりたいことを想像する、というのが大切だと思うので、その夢に向かって進んでいってもらいたい」と呼びかけた。

■スタディクーポンとは

学習塾や教育支援のNPOなどの提携教育機関で利用できるクーポン券。子どもたちは、クーポンを利用して教育支援を受けることができる。クーポンを受け取った教育機関に対して、事務局からサービス料金を支払う仕組み。現金給付と異なり使い道を限定できる。大学生など地域のボランティアが毎月、子どもに定期的な進路相談を行うという。

・クーポン利用対象者:渋谷区内に居住する低所得世帯の高校受験生(2018年4月時点の中学3年生)

・クーポン提供額:一人当たり20万円分

・クーポン利用者人数:33 名程度(寄付金額によって変動)

・クーポン利用期間:2018年4月~2019年3月

■スタディクーポン・イニシアティブ構成団体

〈事業運営〉

公益財団法人 チャンス・フォー・チルドレン:寄付金の受け入れ、スタディクーポンの箱う、利用者の募集選定、提携教育機関の登録審査などを行う

NPO法人キズキ:スタディクーポンを利用する子どもの進路相談・メンタリングを行うボランティアへの研修などを実施

〈パートナー〉

新公益連盟

NPO法人エティック

〈サポーター〉

スマートニュース株式会社:500万円の広告枠を無償提供、情報発信のサポート

株式会社CAMPFIRE:クラウドファンディングのサポート