薬のインターネット販売について話し合う「一般用医薬品のインターネット販売等の新たなルールに関する検討会」の第10回目の会合が24日厚生労働省で開かれた。今回議題となったのは、「偽造医薬品販売者への対応」や「ネットでの"薬”の検索結果は広告か、陳列か」「一般医薬品の購買時に、臭いを確認する必用があるのか?」などの議論が行われた。傍聴していたかたのツイッターを交えて紹介する…
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Medicine,vitamins,antioxidant pills.
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薬のインターネット販売について話し合う「一般用医薬品のインターネット販売等の新たなルールに関する検討会」の第10回目の会合が24日厚生労働省で開かれた。

医薬品の通信販売は、2009年の薬事法改正で、一部の薬品がインターネットを含む通信販売できなくなったが、2012年4月に東京高等裁判所が判決を出し、事実上、ルール無しで解禁となっていた。「一般用医薬品のインターネット販売等の新たなルールに関する検討会は」、このルールをどのように定めればよいのかという議論をするためにもうけられてており、今年2月から開催されている。

これまでは、インターネットで販売できる一般医薬品をどこまで認めるかという点などを議論しており、一般医薬品の種類に応じて副作用のリスクが違うことから、どのようにそのリスクを取り除くべきかなどのテーマで話し合いが進められてきた。

なお、この検討会であるが、第8回より事務局によって「たたき台」とよばれる資料が作成され、その資料及び、検討会に参加する構成員が持ち寄った資料などを使って議論を行うという形になっている。その会の検討会で議論された内容が、次回のたたき台などに反映される。(※第10回会合の資料一覧はこちら

内容は、「一般用医薬品の意義」「インターネット販売等のニーズ」「一般用医薬品のインターネット販売等のルールについて」「偽造医薬品・偽販売サイトへの対応」と大きく4つの項目からなり、それぞれの項目をブラッシュアップして行くという進め方をとっているようである。

このたたき台の資料は、第8回は「議論を進めるための事務局たたき台(案)」、第9回では「議論を進めるための事務局たたき台(修正案)」、第10回では「検討会の意見を取りまとめるためのたたき台」という名称と変化してきている。というのも、安倍首相が、医薬品のインターネット販売を成長産業戦略の一環として位置づけており、6月に公表予定の成長戦略に盛り込むため、今月中に結論を出すよう求められているからである。

たたき台の内容も、前回の会合での資料ではたとえば、「一般用医薬品の意義」の項目について、「一般用医薬品の重要性は、専門家の適切なアドバイスの下、身体の軽微な不調や軽度な症状を自ら手当てするという、いわゆる「セルフメディケーション」の観点からも、引き続き重要なものではないか。」などと疑問形になっていたところが、第10回の資料では、「一般用医薬品の重要性は、専門家の適切なアドバイスの下、身体の軽微な不調や軽度な症状を自ら手当てするという、いわゆる「セルフメディケーション」の観点からも、引き続き重要なものである。」というように、断定的な文調に変更されてきている。

5月はこの第10回の会合と、残りのあと1回しか期日が残っていない状態であり、議論をし尽くすことができるのか、という点を心配しながらの進行となっている。それでも、第10回目の会合も、賛成派と反対派の間で激しくやりあう結果となっている。

例えば今回の会合では、インターネットで薬を検索した時に表示されるのは、「陳列」と「広告」とでいうとどちらなのか、という議論がおこなわれた。

医薬品の広告は薬事法等において、規制がされている。たとえば、第1類医薬品にあたるものの商品には広告中に使用上の注意の記載が必要となっている。

また、日本OTC医薬品協会では、広告審査会を設け、テレビや新聞等の広告の表現について、審議を行なっている。例えば「指定医薬部外品」の文字が読みにくいのではないかといったことや、「希望小売価格 値下げ」の文字をキャッチコピー的に利用することは、乱用助長にもつながるなどの指摘を行なっている。

ここで検索結果が広告となると、これらの規制の対象に含まれる可能性も出てくる。

インターネットで、ものを検索することは、すぐに知りたいことを知ることができるという、ユーザーにとっての利点もあるが、検索サービス提供側は、検索結果に対して一定のアルゴリズムで表示を行うことが可能である。実際グーグルの検索結果も、グーグルの定めるところのサイトの人気順などの観点から、表示が行われる。

陳列か広告かについて、検討会を傍聴したかたのツイートによると、下記のように発言する検討会出席者もいたようである。

09:33 中川構成員:「陳列」と「広告」はまったく違う。「陳列」は消費者が買いたいものを探す、「広告」は売りたいものを並べる。~~(後半メモとれず) #医薬品ネット販売

— 江口秀治 Hideharu Eguchiさん (@hideharus) 2013年5月24日

検索結果が「最適化」された状態は、ユーザーが自信で必要な物を探すための「陳列」にあたるのか、それとも、売りたい側が売りたいように並べる「広告」なのか頭を悩ますことになる。はたまたインターネット検索結果ではなく、店頭における「陳列」も、売りたい側が売りたいように並べているわけではないのかと問えば、そうとも言えないのではないのか、とも思えてくる。

議論は、インターネットの強みである、購入履歴を参照しての「レコメンド」機能についても発展する。この検討会の構成員の一人である、國重惇史氏は、第3回の会合の際に資料として提出した資料の中で、インターネットでの医薬品の販売の強みを「トレーサビリティ」という言葉で表現した。トレーサビリティーとは「モノがいつ、どこで作られ、どのような経路で消費者まで届いたかという経路が明らかになっている状態」のことである。

インターネットを使えば、どこに住むなんという消費者がどの商品を購入したということを把握できるが、それらの購入履歴を元に、同じ地域、同じ年代や性別などの状況から商品を表示させることは、消費者の利便性と考えるよりも広告と捉えられるのか、などまだはっきりとしたとりきめはない。

このような議論が行われ、まとめられた結果、インターネットにおける一般医薬品のルールが決まってゆく。ブラッシュアップされるたたたき台や資料を元に、方向がなされることになる。検討会を傍聴したかたのツイートによると、たたき台の中に自分の意見が反映されていないと感じる討論会出席者もいたようである。

10:17 後藤構成員:繰り返し述べていることであっても、まだ結論が出ていないことについて、事務局が一方の意見のみを拾っている個所もある。少なくとも意見を記載して、結論は出ていないと書くべき。 #医薬品ネット販売

— 江口秀治 Hideharu Eguchi (@hideharus) May 24, 2013

次回の討論会は5月31日と案内が出ている。11回目の資料となるたたき台には、どのような内容が反映されているのか、また、その内容についてどこまで議論が展開されるのか、注意して確認したいところである。

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※2013年5月27日 23時47分:引用の主従関係に関する指摘を受け、「偽造医薬品・偽販売サイトへの対応」「一般医薬品の購入時に、薬のにおいや色を確認する必要があるのか」の項目を削除し、「ネットでの「薬」の検索結果は広告か、陳列か」、討論会におけるたたき台のアップデートに関する内容を加筆した。

新経連と産業競争力会議、一般医薬品のインターネットネット販売に関するニュース画像集
笑顔を見せる安倍首相と三木谷会長(01 of23)
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「新経済サミット2013」の前夜祭で笑顔を見せる、楽天の三木谷浩史会長兼社長(左)と安倍晋三首相=15日、東京都千代田区\n\n撮影日:2013年04月15日 (credit:時事通信社)
産業競争力会議 (02 of23)
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産業競争力会議であいさつする安倍晋三首相(左手前から2人目)=23日午後、東京・首相官邸\n撮影日:2013年06月05日 (credit:時事通信社)
産業競争力会議であいさつする安倍首相(03 of23)
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産業競争力会議であいさつする安倍晋三首相(右)。左は甘利明経済再生担当相=5日午後、首相官邸\n撮影日:2013年06月05日 (credit:時事通信社)
JAPAN-US-IT(04 of23)
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Japanese electronic commerce giant Rakuten president Hiroshi Mikitani delivers the opening speech at a conference of the New Economy Summit 2013 in Tokyo on April 16, 2013. Entrepreneurs of information technology (IT) and online business on April 16 gathered at a one-day conference, hosted by Japan Association of New Economy (JANE), led by Japanese electronic commerce giant Rakuten\'s Hiroshi Mikitani. AFP PHOTO / Yoshikazu TSUNO\n\n撮影日:2013年04月16日 (credit:AFP=時事)
JAPAN-US-IT(05 of23)
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Japanese electronic commerce giant Rakuten president Hiroshi Mikitani delivers the opening speech at a conference of the New Economy Summit 2013 in Tokyo on April 16, 2013. Entrepreneurs of information technology (IT) and online business on April 16 gathered at a one-day conference, hosted by Japan Association of New Economy (JANE), led by Japanese electronic commerce giant Rakuten\'s Hiroshi Mikitani. AFP PHOTO / Yoshikazu TSUNO\n\n撮影日:2013年04月16日 (credit:AFP=時事)
三木谷会長と握手する安倍首相(06 of23)
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「新経済サミット2013」の前夜祭で、楽天の三木谷浩史会長兼社長(左)と握手する安倍晋三首相=15日、東京都千代田区\n\n撮影日:2013年04月15日 (credit:時事通信社)
あいさつする安倍首相 (07 of23)
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新経済サミット2013の前夜祭で、笑顔であいさつする安倍晋三首相(右)。左は楽天の三木谷浩史会長兼社長=15日午後、東京都千代田区\n\n撮影日:2013年04月15日 (credit:時事通信社)
握手する安倍首相と三木谷氏(08 of23)
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「新経済サミット2013」の前夜祭で、握手する安倍晋三首相(右)と楽天の三木谷浩史会長兼社長=15日、東京都千代田区\n\n撮影日:2013年04月15日 (credit:時事通信社)
あいさつする安倍首相(09 of23)
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新経済サミット2013関係者にあいさつする安倍晋三首相(中央)。左から2人目は新経済連盟代表理事の三木谷浩史楽天会長兼社長=15日午後、首相官邸\n撮影日:2013年04月15日 (credit:時事通信社)
新経済サミット関係者と安倍首相(10 of23)
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三木谷浩史楽天会長兼社長(右から2人目)から「新経済サミット2013」の関係者を紹介される安倍晋三首相(右端)=15日、東京・首相官邸\n撮影日:2013年04月15日 (credit:時事通信社)
新経済サミット関係者を紹介される安倍首相(11 of23)
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三木谷浩史楽天会長兼社長(右から2人目)から新経済サミット2013の関係者を紹介される安倍晋三首相(右端)=15日午後、首相官邸\n撮影日:2013年04月15日 (credit:時事通信社)
競争力会議・産業競争力会議に臨む竹中氏と三木谷氏(12 of23)
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産業競争力会議に臨む竹中平蔵慶応大学教授(右端)と楽天の三木谷浩史会長兼社長(左端)ら=18日午後、東京・首相官邸\n撮影日:2013年02月18日 (credit:時事通信社)
記者の質問に答える三木谷会長兼社長(13 of23)
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産業競争力会議の初会合後、記者の質問に答える三木谷浩史楽天会長兼社長=23日午前、首相官邸\n\n撮影日:2013年01月23日 (credit:時事通信社)
産業競争力会議の初会合(14 of23)
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産業競争力会議の初会合であいさつする安倍晋三首相(左)。右側奥は三木谷浩史楽天会長兼社長=23日午前、首相官邸\n\n撮影日:2013年01月23日 (credit:時事通信社)
安倍総裁が新経連と意見交換(15 of23)
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新経済連盟の三木谷浩史代表理事(左手前から2人目)らとの意見交換に臨む自民党の安倍晋三総裁(右手前から3人目)=21日午前、東京都内のホテル\n\n撮影日:2012年12月21日 (credit:時事通信社)
安倍総裁が新経連と意見交換(16 of23)
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新経済連盟の三木谷浩史代表理事(左手前から3人目)らとの意見交換に臨む自民党の安倍晋三総裁(右手前から3人目)=21日午前、東京都内のホテル\n\n撮影日:2012年12月21日 (credit:時事通信社)
三木谷氏と握手する安倍総裁(17 of23)
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会談前に、新経済連盟の三木谷浩史代表理事(右)と握手する自民党の安倍晋三総裁=21日午前、東京都内のホテル\n\n撮影日\n2012年12月21日 (credit:時事通信社)
新経連との意見交換会に臨む安倍総裁(18 of23)
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新経済連盟との意見交換会に臨む自民党の安倍晋三総裁(左から3人目)。左端は三木谷浩史代表理事=21日午前、東京都内のホテル\n\n撮影日:2012年12月21日 (credit:時事通信社)
新経連の藤田理事 (19 of23)
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安倍晋三自民党総裁との意見交換に臨む新経済連盟の藤田晋理事(サイバーエージェント社長)=21日午前、東京都内のホテル\n\n撮影日:2012年12月21日 (credit:時事通信社)
新経連幹部(20 of23)
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安倍晋三自民党総裁との意見交換に臨む新経済連盟の(左)から三木谷浩史代表理事(楽天会長兼社長)、金丸恭文理事(フューチャーアーキテクト会長兼社長)、熊谷正寿理事(GMOインターネット会長兼社長)、藤田晋理事(サイバーエージェント社長)、岩瀬大輔理事(ライフネット生命副社長)、石田宏樹監査役(フリービット社長)=21日午前、東京都内のホテル \n\n撮影日:2012年12月21日 (credit:時事通信社)
署名を渡す楽天の三木谷浩史社長 (21 of23)
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医薬品のネット販売継続を求める署名を甘利明規制改革担当相(左)に渡す楽天の三木谷浩史社長(東京・永田町の内閣府)\n\n撮影日:2009年04月14日 (credit:時事通信社)
楽天社長が署名提出 (22 of23)
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厚生労働省医薬食品局長に、薬のネット販売維持を求める100万人分の署名の内容を説明する楽天の三木谷浩史社長(右)(東京・厚労省) \n\n撮影日:2009年04月10日 (credit:時事通信社)
薬ネット販売禁止・市販薬ネット販売禁止で検討会 (23 of23)
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一般用医薬品(市販薬)のネット販売禁止の是非を話し合う厚生労働省の有識者検討会。奥中央は舛添要一厚生労働相、手前は委員の三木谷浩史楽天社長(東京・霞が関の同省)\n撮影日:2009年02月24日 (credit:時事通信社)