SHOWROOMって何?前田裕二社長に聞いた。アイドルの"やる気"にファンが"投げ銭"

生放送動画配信プラットフォームSHOWROOMを率いる代表取締役社長の前田裕二さん。変化する視聴者のニーズを捉えたビジネスモデルは?また、小中学生の若年アイドルの動画配信についてなど、今後の課題も聞いた。
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Huffpost Japan

「第9回AKB総選挙」の投票期間中に、実際の「総選挙」とは違う事態が起きている場所があった。インターネットの生放送配信プラットフォーム「SHOWROOM(ショールーム)」だ。

総選挙の投票期間中に、SHOWROOM上ではAKBメンバーがそれぞれ生放送配信を行い、最終日に人気ランキングとして発表された。結果は、総選挙で優勝した指原莉乃が68位。一方、1位は総選挙「圏外」の大西桃香だった。

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<SHOWROOM提供データに基づき作成>

SHOWROOMは、ネット上の生放送配信でアイドルとファンをマッチングさせるサービスだ。物やサービスなどの資産を所有者が提供し、利用者が必要に応じて対価を払って利用する「シェアリングエコノミー」の仕組みに基づいて、「アイドル」の時間を収益に変えているように見える。アイドルビジネス業界における"Uber"になるのだろうか。

SHOWROOMを率いる代表取締役の前田裕二さんに話を聞いた。

前田さんは、大西桃香の活躍を「SHOWROOMが目指すことの典型だ」と話す。

大西は、朝5時半という時間を設定し、2016年6月の登録後から毎朝生配信を開始した。3000〜5000人のファンが朝5時半にスマホの前で彼女の配信を待っていた。寝坊して泣きながら謝った時には、ファンから多くの励ましコメントが寄せられた。そして、SHOWROOM内のランキング企画で、1位を獲得した。

SHOWROOMは、誰でも簡単に「演者(アイドル)」としてパソコンやスマートフォンから生放送配信ができるプラットフォームだ。

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「ルーム」と呼ばれるアイドルの生放送配信中の空間を訪れると、視聴者のアバターがアイドルを取り囲むように配置されている。視聴者はアバターを通じてアイドルとリアルタイムのやりとりを楽しむことができる。視聴者からのコメントをアイドルが拾って読み上げるシーンもよく見られる。

また、視聴者はアイドルに対して、無料の仮想アイテムである「星」や、有料で購入できる「ギフト」を"投げ銭(ギフティング)"する。そのギフトが、アイドルの稼ぎになり、SHOWROOMの収益になっている。

最も高い仮想アイテムは、なんと1万円。画面上では「東京タワー」の絵で表現されている。

「売り上げは気持ちよく伸びています」と前田さん。現在、演者の配信登録者数は15万〜20万ユーザー。視聴者として利用登録している人の数は130万以上にのぼる。ちなみに、利用登録すると「ギフト」を贈ることができるようになるが、生放送配信を視聴するだけであれば、登録は必要ない。

演者(アイドル)には、オーガナイザーと呼ばれる芸能事務所などの組織に所属する「公式アイドル」と、所属しないで配信している「アマチュアアイドル」がいる。「公式アイドル」への「ギフティング」は、一定の割合で同社とオーガナイザーで分配される。「アマチュアアイドル」の場合は、収益を同社とアイドル本人とで分配するという仕組みだ。

ちなみに、大西が1位になったAKBランキングイベントは、無料の「星」のみがギフティングできるルールだった。

ほとんど無名だった大西桃香が活躍できるSHOWROOMという場所。アイドル業界の一般的な成功の方程式とは異なる、別の成功の論理があるようだ。

SHOWROOMでアイドルの生放送を楽しむファンのモチベーションは何だろうか。

前田さんは、「視聴者が今求めているのは"甲子園"のようなリアルドラマである」と分析する。「テレビ番組に嘘っぽさを感じてしまい、編集の手が加わっていない、よりリアリティーのあるものを好むユーザーが増えているのではないか」と話す。

また、作り手と受け手が、コメントのやり取りなど双方向のコミュニケーションをする「インタラクション」も、新しいコンテンツ価値として見逃せないという。

「SHOWROOMではファンの『前髪も巻いてみたら?』のアドバイスに、アイドルが素直に応じたりすることで、ファンとアイドルの絆が強まっていくケースがよくあります。今のユーザーはそういうインタラクションにお金や時間を使う感覚なのではないでしょうか」と前田さんは話した。

「ギフティング」してくれるファンのアドバイスには、アイドルも従順に耳を傾けてしまうという事情もあるかもしれない。

インターネットが可能にした「生放送配信」と「ギフティング」という仕組みは、自分の声に対して即時にアイドルが反応してくれる、という充足感を得られる場所になっているのだろう。

SHOWROOMではどんなアイドルが成功するのだろうか。

前田さんは、「SHOWROOMはスナックみたいな場所なんです」と話す。お店のママのファンになって、たとえ料理やお酒がとびきり美味しくなくても、つい通ってしまうスナック。このビジネスモデルは、"機能"ではなく"人"にお金が支払われるので、より長く愛され、消費され続けやすいのだという。

アイドルビジネスは、CDや関連グッズの売り上げに加えて、テレビスポンサーからの収益によって支えられている。トップクラスのアイドルがいる一方で大多数は売れていない。トップがテレビやCMに出て稼いで、大多数の売れていないアイドルを含むピラミッド構造全体を支えているような構図だ。

しかしながら今、方程式が揺らいでしまう可能性が出てきている。

博報堂DYメディアパートナーズが発表した「メディア定点調査2017年度版」によると、人々がテレビを視聴する時間は年々短くなっている。2006年には、週平均で1日あたり171.8分だったのが2017年には147.3分になった。一方、スマートフォンを見る時間は、11.0分から90.2分と劇的に増えている。

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このようなメディア視聴状況の変化は、テレビのスポンサーになる広告主の減少をもたらす可能性もある。そうなれば、今のモデルは必ずしも磐石とは言えない。このような背景の中で、SHOWROOMは新しいビジネスモデルを築こうとしている。

「ピラミッドの上にのぼっていかなければお金を稼げないようなモデルではなく、個々のアイドルが、ピラミッドのどの位置にいようが、そこにいる状態のままでお金を稼げるモデルを作った」と前田さんは話した。

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大西はルール上、無料アイテムの「星」しか得ていないが、有料ギフトも受け取ることができるルールだったら、大西個人が莫大なお金を手にしていた可能性もある。

SHOWROOMは、アイドルがたとえ広く「認知」されていなくても、自分自身の「人気」を得ることで稼ぐことができる場所なのだ。

スマホを使って空き時間で稼げる、「認知」や「権威」がなくても、個人の価値で収益が生まれる新しい市場をつくっている...。どこかで聞いたことがあるようなビジネスモデルだ。

SHOWROOMは、「私はアイドルとして愛されたい、稼ぎたい」という人と、「私が充足感を得られるコンテンツを見たい」という人を結びつけ、小さな経済圏をたくさん発生させている。タクシー業界に革命を起こしているUberや民泊を普及させているAirbnbなどの「シェアリングエコノミー」を基盤としたサービスの、アイドルビジネス版と言えるかもしれない。

一般的に「シェアリングエコノミー」とは、ある資産を所有している人が、その資産を所有することなく利用だけしたい人に対して、価値を提供することで対価を得る経済活動を指す。また、所有者と利用者を仲介するサービスを含むこともある。

Uberでは、「車」の所有者が、"空き時間"に「人を運ぶ」というサービスを提供してお金を稼ぐ。そして個々のドライバーと乗客の間の金銭のやり取りの総体がUber社の収益になる。

その構図で考えてみると、SHOWROOMは「アイドルとしてのやる気と資質」の所有者が、"空き時間"に「ファンの欲求を満たす」というサービスを提供してお金を稼いでいる、と見ることができる。そして、アイドルとファンとの間の金銭のやり取りの総体がSHOWROOM社の収益になる。

Uberはただの車の持ち主だった人たちを、収益の源泉に変えた。SHOWROOMも同様だ。これまでのアイドルビジネス業界において十分に収益化されていなかった「ピラミッドの下層部にいるアイドルの時間とやる気」という資源で、新たな市場を作ろうとしている。

異なる点もある。Uberは車と輸送、Airbnbは部屋と宿泊、といったように有形の価値を収益の源泉としている。一方でSHOWROOMは「アイドルになりたい気持ち」「ファンとして満たされたい気持ち」という無形の価値を現金化している。

シェアリングエコノミーという概念を世界に知らしめた『シェア<共有>からビジネスを生み出す新戦略』という本を書いたレイチェル・ボッツマンは以下のように書いている。

世の中にいらないものなんてない。

使えるものが、ただ間違った場所にあるだけ。

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SHOWROOMは"間違った場所にある"アイドルのやる気を、"正しい場所"へマッチングさせるサービスとして成功を収めるのだろうか。

今後、アジア諸国を皮切りに海外展開していく計画があるというSHOWROOM。そのためには解決しなければならない課題や、コントロールすべきリスクもある。

SHOWROOMを見ていると、10歳以下の演者(アイドル)の生配信に対し、次々と視聴者のアバターがギフティングしている光景が広がっていた。このギフティングによってSHOWROOMも収益をあげている。倫理上の問題はないのか。

現状、配信者が未成年の場合には親の同意を得ることが義務付けられているが、許可なく配信していたとしても完全に取り締まることはできていない。

「オーガナイザー」が間に入っている「公式アイドル」の場合には、オーガナイザーに親の同意取得を義務付けている。一方、オーガナイザーを介さない「アマチュアアイドル」の場合には、SHOWROOM側で人力パトロールをして、親の同意を取ったり、オーガナイザーを紹介したりしているという。海外展開も見据え、今後より一層の強化を図るとしている。

また、配信されるコンテンツの中には、生放送中の大部分がギフティングに関する内容になっているものも多い。「○○さんが〇〇をギフティングしてくれたよ、ありがとう〜。あ、▲▲さんも▲▲くれた〜、ありがとう〜」といったギフティングとお礼の応酬が延々と続くような質の悪いコンテンツだ。

前田さんは、「(上記のようなコンテンツ配信は)ルール上、禁止している」とした上で、対応を協議していると話した。

配信コンテンツの質の維持・向上、個々のアイドルの管理などを考えると、「守りと攻め、両方の観点で」ゆくゆくは、「アマチュアアイドル」をなくし、全員をオーガナイザーの管理下にある「公式アイドル」化していくつもりだという。

児童ポルノや著作権など、法的・倫理的な観点でのリスク管理には、多くのコストを割いていると前田さん。

SHOWROOMの親会社であるDeNAは2012年5月、希少性の高い仮想アイテムでユーザーの射幸心を煽る「コンプリートガチャ」の仕組みで莫大な収益を上げながら、大きな批判と違法性の指摘を受けて廃止したこともあった。

また2016年末には、医療系情報サイト「WELQ」に端を発するキュレーションメディア問題も起こしている。コンテンツの質を軽視し、収益を重視したことによって著作権侵害などの違法行為が横行したことが要因となった。

前田さんは、こういった親会社の「収益重視でリスク管理を怠る事例」を目の当たりにしてきた。そのため、児童ポルノや著作権など、法的・倫理的な観点でのリスク管理には多くのコストを割いているという。「世間の皆さんが想像されている何倍も(リスク管理に)リソースを割いています」と主張した。

■前田裕二さんプロフィール

1987年東京生まれ。2010年に早稲田大学政治経済学部を卒業後、外資系投資銀行に入社。2011年からニューヨークで金融商品のアドバイザリーを行う。その後、2013年5月にDeNAに入社。同年11月に仮想ライブ空間「SHOWROOM」を立ち上げる。2015年8月に当該事業をスピンオフさせて、SHOWROOM株式会社を設立。同月末にソニー・ミュージックエンタテインメントからの出資を受け、合弁会社化。現在は、SHOWROOM株式会社・代表取締役社長として、SHOWROOM事業を率いる。