米国最大級ニュースサイトの「編集力」【cakes加藤×ハフポスト松浦】

出版社でベストセラーを手がけた後、自らデジタルコンテンツ・プラットフォーム「cakes」を立ち上げた加藤貞顕さんとハフィントン・ポスト日本版の松浦茂樹編集長が、ハフポスト日本版オープン目前の4月30日に緊急対談。思想家の東浩紀さんがプロデュースする知的空間「ゲンロンカフェ」(東京・五反田)を舞台に、これからのメディアに求められる「編集力」とは何かを徹底的に話し合いました。その論点をまとめてご紹介します。
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Chika Igaya

「cakes」CEO加藤貞顕さんと松浦茂樹ハフィントン・ポスト日本版編集長が徹底対談

出版社でベストセラーを手がけた後、自らデジタルコンテンツ・プラットフォーム「cakes」を立ち上げた加藤貞顕さんとハフィントン・ポスト日本版の松浦茂樹編集長が、ハフポスト日本版オープン目前の4月30日に緊急対談。思想家の東浩紀さんがプロデュースする知的空間「ゲンロンカフェ」(東京・五反田)を舞台に、これからのメディアに求められる「編集力」とは何かを徹底的に話し合いました。その論点をまとめてご紹介します。

ピューリッツァー賞受賞したハフィトン・ポスト

松浦編集長(以下、松浦):まず私の自己紹介ですが、ライブドアでポータルサイトの統括や「BLOGOS」のプロデューサーをやったあと、「WIRED」編集を経て、グリーで「GREEニュース」を統括していました。今年の3月からハフィントン・ポスト日本版の編集長です。

加藤さん(以下、加藤):「cakes」というウェブサイトをやってる加藤と申します。僕はもともとアスキーという出版社でコンピュータの雑誌や書籍をやって、ダイヤモンド社に移籍してからはずっと書籍をやってました。「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」とかですね。最後のほうは電子書籍をやってました。iPhoneとiPad、アンドロイドでアプリの形式で電子書籍を出して売ることを経験して、色々と思うところがあって「cakes」というサイトを立ち上げました。

ハフポストっていうのは、僕はそもそもあまりよく知らない。アメリカでなんかすごいらしいくらいの知識なんですけど、簡単に説明してもらっていいですか?

松浦:全米でナンバーワンのウェブメディアで、ニューヨークタイムズを抜いて今ユニークユーザーで月間4,600万人です。もともとは2008年、オバマ大統領が勝った選挙の時にブロガーの声をどんどん集めたっていうのがサイトが大きくなる出発点なんですよ。

加藤:ブロガー側のメリットは集客?

松浦:そうですね。あとはまず立ち位置でいうとブロガー側のメリットというよりは、ユーザー側のメリットですね。一つのサイトで全部見られる。ブログにユーザーからのコメントがついて、どんどん大きくなっていきました。

加藤:ブロガー側の許諾を取って載せているんですか?

松浦:もちろん。

加藤:コメントをつけて、それが綺麗な形で盛り上がるもんなんですか?

松浦:そのためにアメリカのハフポストには「ジュリア」っていう人工知能が働いていて、コメントを精査して、3件に1件はネガティブなコメントを削除するくらいの勢いで、ポジティブな意見なんかを残すような形で編集してるんですよ。

加藤:じゃあ、ハフポストのオリジナルの記事っていうのはないんですか?

松浦:ブログで大きく成長してきたので、オリジナルのニュース記事を社内の記者が書き始めたんです。2012年にまた大統領選があって、さらに膨れ上がった。途中にAOLで買収されて、その資金も使って、どんどん大きくなってきた。

加藤:日本だとヤフーニュース、ヤフートピックスか、それに近い機能を提供してる面があるというか。あ、ヤフトピはオリジナルの記事がないのか。だから、かなり似たものはあるけど、そのものずばりは日本にないんですね。

松浦:僕は日本のウェブメディアを色々やってきたんですけど、ハフポストはその延長線上にいます。

加藤:日本ではどうしていこうと思ってらっしゃるんですか?

松浦:それを判断するのは僕たちというよりユーザーだと思ってるので。ユーザーが見たいものを提供していった結果として、ブログのほうが増えることがあるかもしれないですし、オリジナル記事のほうが増えるかもしれないです。

加藤:アメリカではピューリッツァー賞をとってましたよね。あれはオリジナル記事の記者が書いたものなんですか?

松浦:そうです。

加藤:新聞社の人たちと会うと、それぞれは皆すごい頑張ってらっしゃると思うんですけど、そういう何かすごい調べてがっとやったって話ってあんまり聞かない。例えば、立花隆さんが「田中角栄研究」の時にやったとか、そういう話になっちゃいますよね。

松浦:そこまで日本のウェブメディアでもやれたらいいんじゃないかと。なかなか今のウェブメディアだと、そこまで到達できてない気がしてます。

(この連載のバックナンバーはフォトギャラリーよりご確認ください)

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