「オバマ大敗」でも足並み揃わない共和党【アメリカ中間選挙】

米中間選挙で上下両院を制した共和党は、この勝利を今後にどう生かすかをめぐって内部の足並みがそろっていないように見受けられる。
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Reuters

[ワシントン 5日 ロイター] - 米中間選挙で上下両院を制した共和党は、この勝利を今後にどう生かすかをめぐって内部の足並みがそろっていないように見受けられる。一部の議員はオバマ大統領への攻撃を強める機会としたい考えだが、滅多に実現しない超党派の法案成立につながるような民主党との妥協に期待をかける声もある。

党内意見の非常に大きなばらつきは、ジョン・ベイナー下院議長と新たに上院多数党の院内総務に就任する見通しのミッチ・マコネル氏に突きつけられた課題を早速浮き彫りにしている。両氏は今後、党内の保守派と穏健派を1つにまとめる方法を探り当てて、共和党が単にオバマ氏の政策課題の邪魔立てをしているだけでなく統治能力があるのだと国民に証明しなければならない。

もしも共和党保守派が、政府機関閉鎖や市場の動揺を招く政治的行き詰まりにつながるオバマ政権との対立を求めれば、2016年の大統領選で勝利して議会も再び支配したいという同党のもくろみがついえる恐れがある。

マコネル氏は5日、連邦債務上限の引き上げ問題をめぐり、政府機関の閉鎖やデフォルトは引き起こさないと明言した。ただ債務上限を引き上げる代わりに、来年度の予算編成過程でより多くの歳出を削減することに含みを残した。

一方で最も保守的なグループに属するマイク・リー上院議員は、債務上限問題に歳出削減を絡めるという議論の分かれる戦術も排除しない意向を表明。ロイターに対して「これは検討可能な多くの選択肢の1つだと思う。すべての選択肢は俎上に乗せられるべきだ」と語った。

来年から始まる新議会で共和党がどのように議会を掌握していくのかを探る上での最初の手掛かりは、12月半ばまでに得られそうだ。この時期には今回の選挙前の勢力図の議会が、あらためて財政資金手当てに関する法案を可決しなければ、再び政府機関が閉鎖に追い込まれることになる。

■強硬派と交渉支持派

中間選挙で国民は民主党に厳しい審判を下したとはいえ、各種出口調査では議会の党派対立にはうんざりしていて、こうした醜態の責任は民主・共和両党にあるとの見方が示された。

それでも共和党の中には、歩み寄ろうとする気配を見せない人々も存在する。

草の根保守運動「ティーパーティー(茶会)」系のラウル・ラブラドル下院議員はインタビューで「多数派を獲得しながら、妥協しなければならないという話は聞いたことがない」と言い切る。同議員らのグループは昨年、ベイナー下院議長の追い落としを図った。

これに対してベイナー氏の側近であるトム・コール下院議員は、対決よりも交渉を支持するとの考えを示した。

コール氏は「希望的観測では、今後はオバマ氏が偉大な業績を残そうという態勢に入り、共和党も2016年の選挙勝利につなげるため何らかの実績を作る必要があると認識しているので、かなり生産的な政治局面になり得る」とみている。

逆にコール氏が懸念するのは、民主党の次期大統領候補が「議会で多数派となった共和党は何も仕事をしなかった」と批判できるよう、民主党があらゆる法案成立の足を引っ張る事態だという。

■悲観論も

ベイナー氏は、マコネル氏とともに新議会では雇用や経済に関する問題に迅速に取り組み、手始めに下院で以前可決されている多くの雇用関連とエネルギー関連の法案を推進していく方針を表明したとされる。

民主党にとっては、これらのうち一部の雇用関連法案には賛成できるとしても、医療保険改革(オバマケア)の全面的もしくは部分的な撤回や気候変動問題に関する規制適用の停止など多くは反感を呼ぶものだ。

オバマ氏はこうした共和党の試みには拒否権を発動しながら、気候変動や移民の問題では大統領令を駆使して突破する見通しで、そうなれば今後は共和党側が激怒する可能性が大きい。

かつてハリー・リード民主党上院院内総務の側近だったジム・マンリー氏は、最近の経緯を踏まえると、今回の共和党の勝利によって政治の膠着状態はこれから悪化してく一方になるとの悲観的な見通しを示した。

■法案提出

共和党のジョン・ホーベン上院議員はインタビューで、同党は来年第1・四半期にカナダとメキシコ湾岸を結ぶ「キーストーンXL」パイプライン計画を承認する法案を早急提出すると発言。この法案は、オバマ氏が議会と一緒に仕事をするつもりがあるかどうかの試金石になるとしている。オバマ氏はこれまで、環境団体が反対しているキーストーンXL承認に関する判断を下すことを拒んできた。

また共和党は来年、人気のないオバマケアの医療機器課税の撤廃や大統領への貿易促進権限(TPA)付与、天然ガス輸出促進といった分野で採決を行う可能性もある。

こうした中で一部の共和党議員側近は、オバマ氏がリード院内総務を介さずに直接マコネル氏やベイナー氏に話をしなければならなくなるので、ある程度の信頼関係が築かれ、来年中により大きな政治的妥協に向けた交渉に弾みがつく展開もあり得るとみている。

だがこうした協議が常に生産的な仕事につながるわけではないことは政界の人間ならだれもが重々承知している。昨年もオバマ氏と共和党上院議員グループが数回にわたって話し合ったが、大規模な予算合意は成立しなかった。

(Richard Cowan and David Lawder記者)

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