シリコンバレー最強のVCが語る「こんなプロダクトマネージャーは嫌だ」

良いプロダクトマネージャーは製品のCEOと言える。
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シリコンバレーで最強のベンチャーキャピタリストの一人、との呼び声が高いベン・ホロウィッツ。共同創業者でゼネラル・パートナーを務めるベンチャーキャピタル「アンドリーセン・ホロウィッツ」は、FacebookやTwitter、Instagramをはじめとする企業に早期から投資し、巨額のリターンを得ていることでも有名です。

ベン・ホロウィッツは技術バックグラウンドを持つ起業家としても知られています。ベンチャー経営者時代、大きな組織の経営者となって資金難に眠れぬ夜を過ごし、競合との戦いに勝ち抜くために大変な苦労を重ねて来たことを書いた『HARD THINGS 答えがない難問と困難にきみはどう立ち向かうか』(ベン・ホロウィッツ 著、滑川海彦・高橋信夫訳、日経BP社、2015年)は、いま日本のスタートアップ関係者の間でも話題の1冊となっています。

そんなベン・ホロウィッツがNetscapeでプロダクトマネージャーだった頃に「Good Product Manager/Bad Product Manager」というドキュメントを執筆し、2012年6月に公開しました。自身は「15年前に書いたものなので今は参考にならないかもしれない」と謙遜していますが、現在でも大いに参考になる文章なので、日本語訳を紹介します。

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製品のCEOたるPMと多くの言い訳をするPM

良いプロダクトマネージャーは製品のCEOと言える。良いプロダクトマネージャーは全責任を負い、製品の成功という尺度だけで自身を評価する。彼らは最適な製品を最適な時期に届けること、そしてそれにまつわる全ての要素の責任を担う。良いプロダクトマネージャーは、置かれている状況を理解している。(自社の状況、収支と資金繰り、市場での競争などだ。)市場で勝てる作戦を練って、実行する。そして、言い訳をしない。

悪いプロダクトマネージャーは、多くの言い訳を用意する。資金が十分ではなく、エンジニアのマネージャーが凡庸で、競合のMicrosoftは自社の10倍のエンジニアを持って開発を行っていると嘆き、長時間労働を強いられていて、十分な指示をもらっていないと言う。NetscapeのBarksdaleはそのような言い訳は一切しないし、製品のCEOもすべきではない。

良いプロダクトマネージャーは、最適な製品を最適な時期に届けるために、協力する必要のある複数の部署を調整するのに余分な時間をかけない。全てのプロダクトチームとのやりとりの議事録を取ったり、多様な機能の開発のプロジェクト管理を行ったり、エンジニアの使い走りになったりはしないのだ。彼らは、プロダクトチームの一部ではない。彼らは、プロダクトチームを管理する立場にある。

エンジニアチームは良いプロダクトマネージャーを「マーケティングのリソース」の一部として捉えてはいない。良いプロダクトマネージャーは、エンジニアのマネージャーとマーケティングにおいて対となる立場だ。良いプロダクトマネージャーは、ターゲット層を明確に定義する。「どのように」ではなく、「何を」届けるかを明確にし、それを実際に届けるための管理を行う。

悪いプロダクトマネージャーは「どのように」を立案することで活躍したと満足する。良いプロダクトマネージャーは、エンジニアに文章で伝えるとともに直接話すことで、的確なコミュニケーションを取る。良いプロダクトマネージャーは、気軽な形で指示を出したりしない。良いプロダクトマネージャーは、情報集めを気軽な形で行うのだ。

良いプロダクトマネージャーは、広く使える副次的な資料、FAQ、プレゼンテーション、プロダクトの説明資料を作成する。悪いプロダクトマネージャーは、一日中営業部門の質問に答えることに忙しく、仕事が多すぎると嘆く。良いプロダクトマネージャーは、深刻なプロダクトの欠陥に備え、本物のソリューションを構築する。

悪いPMはMicrosoftの機能の数に対抗したがる

悪いプロダクトマネージャーは、火種を消すことに躍起になる。良いプロダクトマネージャーは、重要な問題に対して立場を表明する。(魅力的な機能、判断することが困難な設計上の選択やプロダクト判断、あるいは挑む市場や開拓する市場の決定に関してなどだ。)悪いプロダクトマネージャーは自分の意見を口にし、「権力者」が彼らの目標を阻んでいると批判する。悪いプロダクトマネージャーは失敗すると、失敗することは分かっていたと訴えるのだ。

良いプロダクトマネージャーは、チームが利益とカスタマーに集中するように促す。悪いプロダクトマネージャーは、Microsoftが着手している機能の数にチームを集中させる。良いプロダクトマネージャーは、多くの努力をかければ実現可能な良い製品を計画する。悪いプロダクトマネージャーは製品を計画するが実現可能ではなかったり、あるいはエンジニアが好き勝手構築したりすることを許す。(つまり、難しい問題を解決してもらおうとするのだ。)

良いプロダクトマネージャーは、社内の計画段階で市場に素晴らしい価値を届けることを中心に計画を立て、製品が市場に出した後はマーケットシェアの獲得と収益目標を達成する方法を立案する。悪いプロダクトマネージャーは価値を届けること、競合他社に匹敵する機能、価値、ユビキタス性を構築することを混同して、混乱に陥る。良いプロダクトマネージャーは問題を細分化するが、悪いプロダクトマネージャーは全ての問題を一緒にしてしまう。

良いPMはメディアにストーリーを伝え、悪いPMはメディアが全ての機能を伝えることを望む

良いプロダクトマネージャーはメディアに彼らのストーリーをどのように伝えてほしいかについて考える。悪いプロダクトマネージャーはメディアが全ての機能を取り上げ、技術的な詳細まで的確に伝えることを望む。良いプロダクトマネージャーはメディアに質問をするが、悪いプロダクトマネージャーはメディアの全ての質問に答える。良いプロダクトマネージャーはメディアやアナリストは賢い人達であると考えるが、悪いプロダクトマネージャーは彼らを「プッシュ通知」と「シミュレーションプッシュ通知」の違いを知らないだけで頭が悪いと考える。

良いプロダクトマネージャーは安全策をとって、物事を明確にしたり、明らかなことでも説明したりする。悪いプロダクトマネージャーは、明らかなことは説明しない。良いプロダクトマネージャーは自分の仕事とその成果で自身を評価する。悪いプロダクトマネージャーは何をすべきかの指示を常に待っている。

良いプロダクトマネージャーは自律しているため、毎週、時間通りに現状報告を行う。悪いプロダクトマネージャーは現状報告を時間通りに送ることを忘れがちだ。自律することを重要視していないのだ。

(2015年8月20日掲載「HRナビ」より転載)

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