アマゾンはVODを日本で日常化させるか?

アマゾンが映像配信サービスを日本でも開始すると報じられた。しかも月内にスタートするという。これはえらいことだと思っていたら、26日に実際にスタートしていた。さらにこんなニュースもあった。 「米アマゾン制作のオリジナルドラマ、ストリーミングサービスで視聴回数No.1」
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アマゾンが映像配信サービスを日本でも開始すると報じられた。しかも月内にスタートするという。これはえらいことだと思っていたら、26日に実際にスタートしていた。

さらにこんなニュースもあった。 「米アマゾン制作のオリジナルドラマ、ストリーミングサービスで視聴回数No.1」 米国のアマゾンの映像配信で、オリジナルドラマが好評だと。 ということは、月内にアマゾンが映像配信を始めたらいきなりオリジナルドラマも配信するかもしれないと思ったけど、さすがにこのドラマは26日の時点では置いてなかった。政治コメディだから日本で受けるタイプでもないだろうしね。

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アマゾンのサイトにアクセスすると、ジェフ・ベゾスの名前でこんなコメントが掲載されていた。 映像配信のサービス名は、インスタントビデオというそうだ。ハリウッドコンテンツだけでなく、日本の映画やドラマ、アニメも十分揃っている。

PCではそのまま視聴できるけど、iPhoneやiPadで見ようとすると、作品を選ぶところまでは進めるものの、視聴するには至れなかった。iPadだと専用アプリをダウンロードしろと言われ、でもそれは日本には対応していないとアラートが出た。 PC以外で見たいならKindleを買いなさいということなのだろう。

ラインナップはいきなりかなり揃っている。でもiTunesなど既存の映像配信サービスと比べて何か優位性があるわけではない。iTunesではテレビドラマを扱ってないのでそこは優位性があるかもしれないが、huluにあるのがほとんどだった。だったらhuluの方が定額制の分お得感がある。

とは言え、ほかならぬアマゾンが映像配信サービスを始めた意義は大きい。

ぼくはずいぶん前からVODに注目してきて、このブログでも書いてきた。「VODに未来はあるのか」というカテゴリーを見てもらうと、その一連の記事が読める。

ほんの少し前、2000年代後半までは、VODは「まともな映像を見せる場ではない」と捉えられていた。えー?そうだっけ?という人は、その頃の感覚を忘れているのだと思う。

「VODって言ったって、オタクなアニメと、あとはエロ動画しかないじゃないか。そんな場でちゃんとしたドラマや映画を見せられないし、見る人もいないよ」業界のあちこちからそんな声ばかり聞こえていた。当時のVODサービスはそういう、"場末の小汚い店"だったのだ。

GyaOが映像配信をはじめたけれどなかなかいいコンテンツが集まらず、そのうち事業として失敗ということになってYahooに引き取られた。徐々にコンテンツも増えたが、なーんだかマイナーな場だった。場のイメージがマイナーだと、コンテンツもマイナーなものしか集まらない。そういうものなのだ。

それを変えたのは、AppleTVとhuluだった。 AppleTVは2010年に「普通に使えるVOD端末」として登場した。日本でも11月に突然発売されて驚いた。その時のことをこのブログで「テレビに未来がやって来た!〜AppleTV即買い記〜」と題して記事を書いている。TechWaveにも転載してもらったので読んだ人もいるかもしれない。

そして翌年、2011年の2月に、『踊る大捜査線』の3作目が、DVD発売と同時にAppleTVで配信を開始した。"潮目"がはっきり変わったのはこの時だった。この時をきっかけに、DVD発売と同時にVODサービスでも配信するのが当たり前になった。それまでは、ちょっと時間を置いてから配信されるのが普通だったので、早く見たい作品は店舗でレンタルしていたが、もうその必要はほとんどなくなった。最新の作品がいつも並んでいる、実に素晴らしいサービスになった。

ただ、AppleTVは決してポピュラーなサービスとは言えない。ちょっと"わかってる"人がAppleStoreで買ってきて、テレビとネットとつないで使う。少しだけどハードルがある。

そういう、別の端末をテレビにつなぐタイプにしろ、PCで見るタイプにしろ、VODサービスはどこかハードルがあるものだった。ところがアマゾンはかなりの人がすでにアカウントを持っており、とくに本を買う時は日常的に使うサービスだ。

そんなアマゾンにアクセスすると、さっきのメッセージが出てビデオレンタルがPC上でできますよ、と言うのだ。ビデオオンデマンドを使ってみたかったけど、実際にどうやればいいのかなーともやもや思っていた人に、大きなきっかけをもたらすだろう。これを機に、映像配信の普及率はかなり高まるに違いない。

2000年代半ばに、VODについてよく言われたのが、ネットの映像にお金を払う文化はない、というものだ。だが、実際は少し違うのだ。ネットにお金を払わないのではなく、お金を払う手続きが面倒だったのだ。アマゾンですでにアカウントを持っている人なら、ふらりとこのインスタントビデオサービスを使ってしまうだろう。作品を選んで購入ボタンをクリックするだけなのだから。

VODが日常的なサービスとして普及することは、今後の映像文化にとって、あるいは放送事業にとって大きな意味を持つし、これをどう利用するかが分かれ道になると言ってもいいと思う。これについてはまた書いていこうかな。

コミュニケーションディレクター/コピーライター/メディア戦略家

境 治

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