ダーバンで起きたゼノフォビア(外国人恐怖症)襲撃

私の住む南アフリカのダーバンが日本のメディアに登場する頻度はあまり高くありません。が、2015年4月は外国人が襲撃されたことが大きく報道されました。
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私の住む南アフリカのダーバンが日本のメディアに登場する頻度はあまり高くありません。が、2015年4月は外国人が襲撃されたことが大きく報道されました。

その襲撃のことを説明する前に、そもそも南アフリカとはどんな人種が住んでいるか、ということを説明させてください。

南アフリカのファーストフードのお店、Nandosは、グリルチキンがメインで、南ア人には絶大な人気があります。このお店、ファーストフードのチェーン店とはいえ、各店舗で丸ごとチキンをその場でグリルしているので、とっても美味しいのです。

私がNandosを「結構やるな~」と思っているのは本来の味だけではありません。このNandosのコマーシャルが面白いのです。でも、その中身、かなり政治的な際どいもので、TVでの放送禁止は何回も受けています。大統領や政治家をおちょくるなんてお茶の子さいさい......。でも、毎年、これでもか、これでもか、と新しいものが出てくることを見ていると、Nandosの会社もコマーシャルの制作会社も一向にめげていないことがわかります。

まあ、放送禁止になると、メディアやソーシャルメディアで話題沸騰になりますから、実際にTVで放映できなくても宣伝効果は絶大なのでしょう。でも、嬉しいことに、南アのメディアと政治の関係は全うです。少なくとも政局の意にそぐわないからといって、どこかに呼ばれてお仕置きなどはされていない様子......。

さて、そのコマーシャルの中でも特に膝を打ったのは、数年前のもので、いま大変なことになっている外国人排斥主義のことを逆手に取ったものでした。

「南アの問題はね、外国人が嫌いなことさ!」と言う男性の声、そして南アにいるいろいろな国籍の人を登場させて、「ジンバブウェ人!」"プシュ!"という効果音と共にその人物が画面から消える、というもの。ここでは不法移民がどうか、など問題にしません。ジンバブウェ人の後に続くのは、ナイジェリア人や他のア フリカ人、パキスタン人、中国人、インド人、ヨーロッパ人、アフリカーナと呼ばれる南アの白人、それになんと、南アの黒人部族ズール族ややコサ族など、ほぼ全部の人種?が対象でした。で、最後に残ったのは、南アの元々の住人であるコイサン族の男性一人。

つまり現在の南アの社会を構成する私たちほとんどが祖先を遡れば、"外国人"ということなのです。

最後のオチは、「まあ、皆さん、いろいろな好みがあるので、また新しいメニューを二品追加しました!」というものです。

いつの段階で南アに来たか、で選別されることの滑稽さを笑えるのがNandosのコマーシャルなのです。

繰り返しますが、現在南アに住む人々は、圧倒的少数の原住民を除けばみんなが"移民"なのです。それゆえ、2008年に続いて再発した今回の外国人排斥運動が残念です。

発端は、南アの黒人最大民族のZULU族の王様Zulu King Goodwill Zwelithiniが地方で演説したときに行ったスピーチで触れた「外国人は国へ帰れ」とう発言、と多くの人が言及しています。

この南アの王様たち、政治的は何の権限も持ちません。が、南アにはなんと地域別に7王族もいて、その存在が国費で維持されているのです。ちなみに王様の年間給料?は日本円にして1億円ほど。その他にいろいろな維持費もすべて税金から支払われます。ちなみに、年間にすると、70億円ほどの税金が彼らに使われているようです。

さて、彼らの存在意義はさておき、私は、今回の襲撃事件のすべての理由と責任をこのZulu King Goodwill Zwelithiniに押し付けるのも間違っていると思います。もちろん、こんなことを言う王様を擁護するつもりはないのですが、やはりこの暴動は、1994年の故マンデラ氏が選挙に勝って、黒人政権になってからも相変わらず続く苦しい生活や、1994年以前からの白人が富を集中的に掌握している、という図式から一向に抜け出せない多くの黒人層の不満が爆発したからだと思うのです。

さて、ゼノフォビアの話題に戻ると、実は日本人の私と子どもたちは南アでは外国人。普段から危険な地域に立ち入ることは極力避けていますが、今回、"外国人"だから、と言って危害が及ぶような事態にはなっていません。

暴力の対象になっているのは、残念なことに、アフリカ系の移民たちです。ダーバンで始まった今回の外国人排斥騒動は、ダーバンの市街地の二箇所に難民キャン プを設立しなくてはいけない事態にまで発展しました。2015年6月現在、自宅から避難した外国人は総計8000~10,000人にも上り、現在もキャン プに留まっている人は400名になります。

ダーバンにある難民キャンプのひとつはチャッツワースというインド系南ア人が多く住む地域にあります。このキャンプには、私がボランティアに行っていた時には約2000人の難民が避難していました。

国籍はジンバブウェ、コンゴ、モーザンビーク、ナイジェリア、エチオピアなど、本国にまだまだ問題がある国々ばかりでした。

そして、外国人排斥運動をしている人たちは、ほとんどが貧しい黒人層です。彼らの言い分を聞くと、こういった声が拾えました。

「外国人たちが治安を悪くしている」

「外国人たちが安く仕事を請け負うから、地元の自分たちに仕事がこない」

「ドラッグとか悪いことは全部外国人が持ち込んでいる」

「外国人が無制限に南アに移り住んで南アの資源を使い果たしている」

残念ながら、これらの言い分の殆どが根拠のないものなのですが、「外国人たちが安く仕事を請け負うから、地元の自分たちに仕事がこない」という意見をもう少し掘り下げてみましょう。

これは、例えば、南アの家事労働に従事する人たちの最低賃金は時給約100円です。一日8時間、週6日、月26日労働で月給は約2万円というところです。南アは決して物価が安いわけではないので、これで生活していくのは極めて難しい。が、これが政府が保証したい"最低賃金"なのです。

が、ちょっと前のことになりますが、ケープタウンの高級住宅地キャンプス・ベイでこんな広告が地元のフリーペーパーに掲載されて多くの人の怒りを買いました。

急募通いの家政婦(子どもの世話を含む)、週5日勤務一日7時間労働、月給1万5千円(交通費込み)、南ア人か正規の移民のみ対象。

この住宅地は南アでも有数の富裕層が住む地域で、この人たちの年収は数千万円を下らないはずです。だた皮肉なことに、もともとこういう広告を出す人たちは、ドメスティックワーカーと呼ばれる人たちに"最低賃金"があることさえ知らないでしょう。

なぜか。それは、このような労働条件で人を雇おうとしている南アに住む富裕層は、彼らの人権とか生活に無頓着だからです。ここに南アが抱える人種間の問題の根っこがある、と言っても過言ではないのです。

でも、問題は、こんな待遇で働く人などいないだろう、と思いきや、仕事がない人たちはこんな待遇でも仕事にありつければ、という思いで仕事を受けてしまうのです。そして、この最低限の賃金を下回る仕事を受ける人たちは、圧倒的に南ア人ではなくて、ほかのアフリカの国から出稼ぎのために南アに来ている人たちなのです。

これは家政婦という職種に限らず、すべての特定の技能を必要としない職種に渡ります。

ダーバンにもタウンシップと呼ばれる黒人が多く住む地域に、外国人が経営するお店がたくさんあります。これは、多くの途上国にある日用雑貨や食料品を大変小さい単位で販売して、細かく細かく売り上げを重ねていくお店です。一日の利益が1000円に満たない、というお店もあるのです。

ただ、他に生きていく糧がないとしたら、祖国を追われて、何をしてでもその生活を立て直していかない状況に追われていたら、こういう条件の悪い仕事でさえ受け入れてしまうことを理解するのは難しくないです。

外国人を排斥する人を擁護する気持ちはありません。が、排斥する人たちの側の不満もよく理解できるのです。南アの失業率は、人種層によってかなり差がありますが、一説によると黒人系南ア人の失業率は2014年の統計で40%近くにも上るのです。

以下の表を見てください。これは、南ア政府の発表する雇用統計(2013年版)の数字をMomentum Asset Managementという会社が人種によって再構成したものです。

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出典:

2008年~2014年の人種間の失業率の差が一目瞭然にわかります。黒人系が2013年28.8%、白人系が7.2%ということは、人種間で4倍の開きがあるということになります。

自分の目の前で、人種によって、これほどの差が存在する事実を日々突きつけられたとしたらどうでしょう。そのうっぷんを晴らすために、さらに社会的弱者である外国人移民を排除するような行動に走る人がいたとしても、これもまた想像に難くない南アの現実の一つでしょう。

この事件は政府が警官を多数動員して鎮静化に努めました。いま、一応、その動きは鈍くなっています。が、上にあげた社会的要因が改善されない限り、またいつゼノフォビアの動きが再発するかは時間の問題でしょう。

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私たちボランティアは寄付された品物を買い物バッグに入れたり、食事の分配を

手伝ったり。

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ジンバブウェから来ている両親と一緒にキャンプに

いたジョセフ君。3歳です。

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チャッツワースにある難民キャンプなので、食事も

もちろん、ブリヤニです。

(2015年6月2日「空の続きはアフリカ」より転載)