「戦う八重」に感情移入出来ないのはなぜ?―テレビドラマの楽しみ方 その4

NHK大河「八重の桜」が、福島を舞台に鳴り物入りでスタートして半年。思うように視聴率が伸びないのはなぜなのかと話題になっています。
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NHK大河「八重の桜」が、福島を舞台に鳴り物入りでスタートして半年。思うように視聴率が伸びないのはなぜなのかと話題になっています。このテーマについて書いたコラムに、たくさんのツイートをいただきました。その後の放送を見ても依然として、「戦う八重」に感情移入出来ない自分がいます。

NHKの予告CMでは「八重の闘志を目撃せよ」という大きなコピーが画面に躍り、こちらにむかって銃を構える八重の姿が。ドキリとします。

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6月30日の平均視聴率は14.0%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。制作陣は頭を抱え、後半にむかってテコ入れ中、との情報も。

「"オダジョーを告知映像に使うな"という命令が出ていたんです」「脚本が書き直されました。大幅にカットされたのが彼(オダギリジョー)の登場シーンでした。上層部の指示は男優メインのシーンを大幅に減らし、これからは、綾瀬はるかの出演シーンをもっと増やせというものでした」(「女性自身」2013.6.29)

別にオダジョーのせいではないと思うんだけれど......。

当初、ヒット間違いなし、と思われた「八重の桜」。たしかに主人公・八重を演じる綾瀬はるかは人気度抜群。今年の「タレント人気度ランキング」でも堂々の1位。ということはつまり、彼女自身の問題ではないということになる?

では、いったいなぜ盛り上がらないの? 首をひねりたくなりますが、大きく3つほどの要因が考えうるのではないでしょうか?

●二足のわらじ

ドラマの中では会津藩主・松平容保の葛藤や苦悩が浮き彫りになっています。松平容保を演じる綾野剛の力の入れ加減はすごい。「体に容保がしみ込んでいくようで、本当につらい。普通の精神状態ではできません。眉間には力が入るし、不思議な重力がかかってきます。現場に入ると病んでいる状態ですね」(週刊朝日 2013.6.21日号)と、本人も語っているほど。

しかし、本来なら主人公・八重に焦点を絞り、人生の紆余曲折を細かく丁寧に描くことがドラマの根幹となるはず。サイドストーリーであるべき藩主がフォーカスされすぎたのでは。

制作側が、「幕末」という時代と「会津」という場所にこだわり、「会津藩が置かれた時代状況」を伝えようと意識しすぎた。その結果、二足のわらじになってしまったかも。

●男優陣が充実しすぎ

二足のわらじとも関係しますが、主人公以外の脇の男優陣が充実しすぎています。容保役の綾野剛にはじまり、ムキムキの肉体が話題になった山本覚馬役・西島秀俊、八重の夫・川崎尚之助に「雲の階段」でブレイクの長谷川博己。神保修理役に爽やかな魅力の斎藤工、斎藤一役には大河初登場のドラゴンアッシュ・降谷建志。そして、西郷隆盛にぴたりはまった吉川晃司......。

旬の人、華のある人、色気のある人、異色の抜擢。ついつい目を惹きつけられてしまう、オーラを放つ男優陣。今をときめく男優陣を揃えれば揃えるほど、主人公への集中度は薄まってしまいませんか?

●「戦う八重」が、お茶の間の女たちの共感を呼んでいない

「男勝りの主人公」「女だてらにスペンサー銃」など、制作側が「新鮮な魅力」と踏んだ要素が、お茶の間の女たちの共感を呼んでいないのでは? 一言でいえば、「戦う八重」に感情移入出来ないのです。

勇ましく鉄砲隊の指揮官に志願し、軍服に身を包んで銃で敵を撃つ。そんな戦いのシーンを見せられ、どこかついていけない。このとまどいは何なの? 綾瀬はるかの凛とした横顔は、たしかに美しくカッコイイのに。

「強い女」と、「銃を撃つ女」とはどこか違う、ということではないでしょうか? この計算違いが、盛り上がらない要因の一つかもしれません。

会津藩が引き受けざるをえなかった矛盾や悲劇は、もちろん理解できます。でも総じて、「主君のため藩のため」に銃を撃つ八重、その兵士的な側面や戦う気持ちばかりが強調されて描かれすぎてはいないでしょうか?

また、会津の女・子どもや白虎隊が自ら死を選ばねばならない状況に追い込まれたのは、仕方のないことだったのかもしれません。だからといって、主君や藩のために自らの子や孫を殺める悲惨なシーンが、「それによって官軍がひるんだ」と肯定的な出来事としてしか描かれなかったことに、違和感を覚えたのは私だけでしょうか?

日常の中で、ならぬことはならぬ、という哲学をしっかり持ちつつ、女として苦悩しながら強く生きる。そうした八重の魅力を細やかに描き出せば、女性視聴者の共感はきっと集まるはず。戦いや銃のシーンへのこだわりよりも。後半に期待したいと思います。

NHK画像集
大河ドラマ「花燃ゆ」主演の井上さん (01 of34)
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2015年のNHK大河ドラマ「花燃ゆ」で、幕末の思想家、吉田松陰の妹・文を演じる井上真央さん=3日午後、東京都渋谷区 撮影日:2013年12月03日 (credit:時事通信)
NHK朝ドラのバトンタッチセレモニー(02 of34)
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NHK連続テレビ小説「花子とアン」から「マッサン」へのバトンタッチセレモニーが行われた。「花子とアン」の村岡花子役の吉高由里子さん(右)からは山梨県の伝統工芸品である和紙で作られたおそろいの帽子が、「マッサン」の亀山政春(マッサン)役の玉山鉄二さんと亀山エリー役のシャーロット・ケイト・フォックスさんからはスコットランド伝統のタータンチェックのストールが贈られた=18日、大阪市のNHK大阪放送局 撮影日:2014年09月18日 (credit:時事通信社)
NHK朝ドラのバトンタッチセレモニー(03 of34)
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NHK連続テレビ小説「花子とアン」から「マッサン」へのバトンタッチセレモニーが行われ、笑顔を見せる「マッサン」の亀山政春(マッサン)役の玉山鉄二さん(左)と亀山エリー役のシャーロット・ケイト・フォックスさん=18日、大阪市のNHK大阪放送局 撮影日:2014年09月18日 (credit:時事通信社)
NHK朝ドラ「マッサン」主役コンビ(04 of34)
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NHK連続テレビ小説「マッサン」の主役に決まった夫・亀山政春(マッサン)役の玉山鉄二さん(左、俳優)と妻・エリー役のシャーロット・ケイト・フォックスさん(米国人女優)=4日、大阪市中央区 撮影日:2014年03月04日 (credit:時事通信社)
NHK朝ドラのヒロインにフォックスさん(05 of34)
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NHK連続テレビ小説「マッサン」のヒロイン、エリー役に決まった米国人女優のシャーロット・ケイト・フォックスさん=4日、大阪市中央区 撮影日:2014年03月04日 (credit:時事通信社)
NHK大河ドラマ「軍師官兵衛」の中谷美紀さん (06 of34)
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来年のNHK大河ドラマ「軍師官兵衛」のスタジオ収録が始まり扮装(ふんそう)姿で会見する官兵衛の正室・光役の中谷美紀さん=27日、東京都渋谷区のNHK放送センター 撮影日:2013年08月27日 (credit:時事通信社)
HK大河ドラマ「軍師官兵衛」スタジオ撮影始まる(07 of34)
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来年のNHK大河ドラマ「軍師官兵衛」のスタジオ収録が始まり、主演の岡田准一さんのほか、黒田職隆役の柴田恭兵さん、光役の中谷美紀さん、小寺政職役の片岡鶴太郎さんが衣装姿を披露した=27日、東京都内 撮影日:2013年08月27日 (credit:時事通信社)
NHK朝ドラのヒロインにフォックスさん (08 of34)
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NHK連続テレビ小説「マッサン」のヒロイン、エリー役に決まった米国人女優のシャーロット・ケイト・フォックスさん=4日、大阪市中央区 撮影日:2014年03月04日 (credit:時事通信社)
NHK「あまちゃん」・能年玲奈さん (09 of34)
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NHKの連続テレビ小説「あまちゃん」出演者発表会に出席した能年玲奈さん=6日、東京都渋谷区のNHK放送センター 撮影日:2012年09月06日 (credit:時事通信社)
能年玲奈(10 of34)
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NHK朝の連続テレビ小説「あまちゃん」(東京編)の出演者発表記者会見=1月18日、東京都渋谷区のNHK (credit:時事通信社)
連続テレビ小説「ごちそうさん」撮影に臨む杏さん(11 of34)
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5月17日にクランクインしたNHK連続テレビ小説「ごちそうさん」の収録に臨むヒロイン卯野め以子役の杏さん(右)と堀之端桜子役の前田亜季さん(左)=24日、奈良市の奈良女子大学 (credit:時事通信社)
有村架純さん「私は昭和顔」(12 of34)
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求人情報サイト「フロム・エーナビ」新CMに出演した女優の有村架純さん。朝ドラ「あまちゃん」で話題の髪形について「顔が昭和顔なのでうまくなじむことができたのかな」とまんざらでもない様子=30日、東京都内 \n\n撮影日: 2013/07/30 (credit:時事通信社)
有村架純「小泉さんにあごが似ている」(13 of34)
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求人情報サイト「フロム・エーナビ」の新CMに出演の有村架純さん。朝ドラ「あまちゃん」で演じている若き日の天野春子役について「小泉今日子さん本人から『あごのシュッとしたところが似ているかも』といわれた」とうれしそうに話す=30日、東京都内 \n\n撮影日: 2013/07/30 (credit:時事通信社)
NHK「あまちゃん」出演者発表(14 of34)
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NHKの連続テレビ小説「あまちゃん」の出演者。(前列左から)尾美としのりさん、小泉今日子さん、能年玲奈さん、宮本信子さん、杉本哲太さん、(後列左から)有村架純さん、吹越満さん、渡辺えりさん、小池徹平さん、橋本愛さん、福士蒼汰さん=6日、東京都渋谷区のNHK放送センター \n\n撮影日: 2012/09/06 (credit:時事通信社)
NHK朝の連続テレビ小説「あまちゃん」(東京編)の出演者 (15 of34)
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4月から放送が始まるNHK朝の連続テレビ小説「あまちゃん」(東京編)に出演する(左から)古田新太、薬師丸ひろ子、能年玲奈、松田龍平、松岡茉優=1月18日、東京都渋谷区のNHK (credit:時事通信社)
ドラマ「あまちゃん」の舞台(16 of34)
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NHKの連続テレビ小説「あまちゃん」のロケ地となった 小袖漁港。「北限の海女」の素潜り実演会場にはドラマのヒットで多くの観光客が訪れている=6日午前、岩手県久慈市の小袖海岸 \n\n撮影日: 2013/08/06 (credit:時事通信社)
ドラマ「あまちゃん」の舞台(17 of34)
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NHKの連続テレビ小説「あまちゃん」のロケ地となった 小袖漁港に設置された「北限の海女」の石碑。ドラマのヒットで多くの観光客が訪れている=6日午前、岩手県久慈市の小袖海岸 \n\n撮影日: 2013/08/06 (credit:時事通信社)
ドラマ「あまちゃん」の舞台(18 of34)
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NHKの連続テレビ小説「あまちゃん」の舞台となった 小袖漁港に設置されたドラマのロケ地を説明した看板。同漁港内にある「北限の海女」の実演会場には多くの観光客が訪れている=6日午前、岩手県久慈市の小袖海岸 \n\n撮影日: 2013/08/06 (credit:時事通信社)
ドラマ「あまちゃん」の舞台(19 of34)
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NHKの連続テレビ小説「あまちゃん」のロケ地となった 小袖漁港。「北限の海女」の素潜り実演会場にはドラマのヒットで多くの観光客が訪れている=6日午前、岩手県久慈市の小袖海岸 \n\n撮影日: 2013/08/06 (credit:時事通信社)
ドラマ「あまちゃん」の舞台(20 of34)
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NHKの連続テレビ小説「あまちゃん」のロケ地となった 小袖漁港で行われる「北限の海女」の素潜り実演。ドラマのヒットで多くの観光客が訪れている=6日午前、岩手県久慈市の小袖海岸 \n\n撮影日: 2013/08/06 (credit:時事通信社)
ドラマ「あまちゃん」の舞台(21 of34)
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NHKの連続テレビ小説「あまちゃん」のロケ地となった 小袖漁港で行われる「北限の海女」の素潜り実演で活躍する高校生海女クラブのメンバー。ドラマのヒットで多くの観光客が訪れている=6日午前、岩手県久慈市の小袖海岸 \n\n撮影日: 2013/08/06 (credit:時事通信社)
愛媛のご当地アイドル(22 of34)
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愛媛のご当地アイドルユニット「ひめキュンフルーツ缶」の新曲イベントが7日、都内で行われた。NHKの「全国『あまちゃん』マップ!」にも選ばれ「地元のアピールではどのグループにも負けない」と自信を見せる。 \n\n撮影日: 2013/08/07 (credit:時事通信社)
上半期ヒット商品ベスト30を発表(23 of34)
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「日経トレンディ」誌の「2013年上半期ヒット商品ベスト30」が発表され、「ゆるキャラ」や「あまちゃん」などがランクイン。ゲストで登壇した福士蒼汰さんと山岸舞彩さんがそろって「くまモン」ポーズ=3日、東京・赤坂 \n\n撮影日: 2013/06/03 (credit:時事通信社)
スポーツを語り尽くそう (24 of34)
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多彩なゲストを迎えてスポーツをマニアックに語り尽くすNHKBSの新番組「スポーツ酒場 語り亭」の取材会が4月15日、東京都内で行われ、「今、断トツに日本ハムの大谷翔平君に会いたい」とバーのママさんに扮したタレントのミッツ・マングローブさん(右手前)。(左端から)漫画家のやくみつるさんとプロ野球解説者の牛島和彦さん、大野豊さん、古田敦也さん、小宮山悟さん。 (credit:時事通信社)
NHK・BS「にっぽん縦断 こころ旅2013」(25 of34)
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視聴者から寄せられた手紙に書かれた「こころの風景」を、自転車で訪ねるNHK・BSプレミアムの番組「にっぽん縦断 こころ旅2013」をPRする火野正平さん。今年で3年目を迎え、走行距離は4000キロ弱、36道府県を走破したという。放送は4月1日から=8日、東京都渋谷区のNHK放送センター (credit:時事通信社)
平成25年度NHK・BS放送の出演者&キャスター記者会見(26 of34)
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平成25年度NHK衛星放送の出演者&キャスター記者会見。BS1は「生放送にこだわったスポーツ」「世界の今を伝える国際情報」「報道の背景を深く掘り下げる」番組にこだわる。BSプレミアムは「本物志向の教養・娯楽チャンネル」の路線を強化し、話題性のある魅力的な番組を伝える=2月26日、東京都渋谷区のNHK放送センター (credit:時事通信社)
AKB大島さんがNHKで司会(27 of34)
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NHK「第19回家族で選ぶにっぽんの歌」で伊東四朗さん、宮崎美子さんと司会を務めるAKB48の大島優子さん(左)。リハーサルを終え「ピンピンです」とインフルエンザからの回復ぶりをアピール=2月8日、東京都渋谷区 (credit:時事通信社)
第63回NHK紅白歌合戦/きゃりーぱみゅぱみゅ (28 of34)
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「紅白2012きゃりーぱみゅぱみゅメドレー」を熱唱するきゃりーぱみゅぱみゅ=2012年12月31日、東京都渋谷区のNHKホール \n (credit:時事通信社)
「おかあさんといっしょ」の歌のお兄さん、お姉さんが交代 (29 of34)
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NHK教育テレビ「おかあさんといっしょ」の歌のお兄さんとお姉さんが4年ぶりに交代。10代目歌のお兄さんに決まった今井ゆうぞうさん(左端)と19代目歌のお姉さんに決まったはいだしょうこさん(右端)から花束を贈呈される、4月で歌のお兄さんを卒業する杉田あきひろさん(中央左)と歌のお姉さんのつのだりょうこさん(中央右)=東京都渋谷区のNHK (credit:時事通信社)
サカナクション(30 of34)
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第64回NHK紅白歌合戦の初出場歌手による記者会見でポーズをとるサカナクション=25日、東京都渋谷区のNHK 撮影日:2013年11月25日 (credit:時事通信社)
泉谷しげる (31 of34)
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第64回NHK紅白歌合戦の初出場歌手による記者会見でポーズをとる泉谷しげる=25日、東京都渋谷区のNHK 撮影日:2013年11月25日 (credit:時事通信社)
あさが来た(32 of34)
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朝ドラ「あさが来た」スタジオ収録スタート(33 of34)
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朝ドラ「あさが来た」スタジオ収録スタート(34 of34)
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