Amazon Goの仕組み 「カメラとマイク」で実現するレジなしスーパー

Amazon面白すぎます。興味が尽きません。

最近はこのブログでAmazonのことばかり書いている気がしますが、今回もAmazonネタです。

先週ラスベガスで開催された開発者イベント re:Inventでは、クラウド、分析、AIなど圧倒されるくらい数多くの新しい機能やサービスが発表されました。

re:Inventに関しては、公式から詳細な日本語レポートが出ているのでぜひそちらをご参照ください。

数多くの新サービスの中で、今回のポストのテーマであるAmazon Goに最も関係があるのが、人工知能のサービス Amazon AIです。

これまでAmazon Echoなどの自社製品で利用してきた自然言語認識(Amazon LEX)、画像認識(Amazon Rekognition)、音声合成(Amazon Polly)などのAI系機能が、今後サービスとして誰でも利用できるようになりました。

貯める(AWS)から識る(AI)へ。そして使う(Go)へ

さて、本題のAmazon Goです。

先月のブログで「Amazonは「リアル」にもやってくる」と、内部文書から分かったAmazonの2,000店舗の食品スーパー参入計画の噂について書きましたが、それがAmazon Goだったというわけです。

すでにご覧になった方も多いとは思いますが、まずはAmazonが発表したAmazon Goの動画を御覧ください。

  1. まずは専用のアプリで入店用のバーコードを表示します。
  2. そして、入り口にあるゲートにそのバーコードをかざして入店します。
  3. そして次は買い物です。棚から欲しい商品を持ち上げるだけで、アプリのカートに商品が自動的に追加されます。
  4. 購入を辞めたい場合は、一度選んだ商品を棚に戻すだけで、その商品はアプリのカートから自動的に削除されます。
  5. あとは、入店の際に通ったゲートを通って外に出るだけ。

UBERと同じようにアプリにレシートがきて、お買い物完了です。レジは全くありませんし、人とのやりとりも一切ありません。

来年本社があるシアトルで一号店がオープンする予定だというAmazon Goに関しては、Amazonから提供されている情報は、この動画と少ないQ&Aだけで詳細は分かっていません。

しかしながら、2014年に申請され2015年に公開されているこの特許を元に、USA Todayがその仕組みを推測しているので、ご紹介したいと思います。

「センサーの組み合わせ」で実現した完全レジなし体験

①入店

まずは入店です。入店時には専用のアプリで発行されるバーコードをスキャンします。加えて、カメラなどのセンサーで入店者を特定します。これは通常の利用者の決済に利用されると同時に、万引きなどの防止につながる仕組みになっています(店舗内での行動が常にトラッキングされているし、仮に店外に出てもクレジットカードから引き落とすことが可能)。

②商品選択 1

棚から商品を選択すると、カメラがその商品のパッケージを認識して商品を特定します。画像認識は今回のre:Inventでも発表されましたが、2年前にAmazonが発売したスマホ(全く売れなくてすでに発売中止されています)にFireflyという名称で、すでに画像認識機能が搭載されていました。このレジなしコンビニは4年前から計画されていたようですから、当時からこうした活用も想定されていたのでしょう。

③商品選択 2

また商品のパッケージだけでなく、「ユーザの手」も認識するようです。商品を手に取ったのか、戻したのかまで判別します。肌の色は個人でかなり違うということで、隣にいた人が同じ棚から商品を取り上げた時の識別などにも使われると想定されています。

④商品選択 3

また店内には「カメラ」だけでなく「マイク」も多数設置されており、詳細な位置を音から特定するようです。音声認識技術は、こ存じ300万台以上を売り上げた大ヒット商品Amazon Echoのコア技術の一つでもあり、Amazonが近年力を入れている技術です。カメラそしてマイクが何個設置されるのかは分かっていませんが、店内にいる間どこをどのように動いているのかというものすごく詳細な情報が蓄積されることになりそうです。

⑤商品選択 4

また、棚の側にも赤外線、圧力、重量センサーなど多数のセンサーが設置されており、商品の数や移動などを詳細にトラッキングしているようです。

⑥決済

そして、支払いは出口のゲートを通過するだけ。Amazonのアカウントから購入した分が自動で引き落とされます。

あくまでこれらは特許の内容をベースにした推測に過ぎませんが、確かに技術的には十分に実現できそうな仕組みになっていそうです。

通常こうした仕組みが議論される際にRFIDの利用が検討されますが、単価の低い商品全てにRFIDを貼るというアプローチではないようです。

ただ、気になるのはコストです。

センサーだけで処理をすると考えると精度を担保するためにもかなりの数のセンサーが必要なはずで、設置のコストはかなりかかりそうです。

ただでさえ利益率の決して高くない食品スーパーのカテゴリーで、本当にビジネスとして成り立つのかは疑問も残ります。

実際数ヶ月後にはお店がオープンするので、詳しくはそれからということになりそうです。

ECの王者Amazonが、小売の「残り90%」のリアルをなぎ倒しに来るのか?、それともAWSのようにAmazon Goの仕組みを他のスーパーにライセンスするというアプローチはあるのか

いずれにしてもついに街中でもAmazonのお店を見かけることになりそうです。

Amazon IDの経済圏はどこまで広がるのか?Amazon Prime会員だとリアルでどんないいことがあるのか?Echoとの連携は?Alexaとの連携は?

Amazon面白すぎます。興味が尽きません。