【AmazonがLGBTにコメント】CMへのゲイカップルの起用についてAudible担当者に直接話を聞いてみた

Amazon Japanという企業がLGBTを含めたダイバーシティを推し進めることによって、ほかの日本企業、そして日本社会全体にもいい影響を与えていければと思います。
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CMにゲイカップルを起用したAmazonに、直接インタビューしました!

ゲイカップルがとても自然な形で登場すると話題の、AmazonのAudible(オーディブル)のCM。スマートフォンでどこでも物語や本を『聴ける』、というサービスのCMにゲイカップルを起用したことついて、Audible事業部の吉森さんに直接お話を伺ってきました!

新サービス「Audible」について

まずは、今回のCMのコンセプトを教えてください。

― 本を「聴く」、オーディオブックというサービスは、欧米ではすでに浸透している文化なのですが、日本ではまだその認知度が低く、あまり馴染みがありません。2015年7月にサービスを開始し、日本ではまだ新しい文化であるAudibleを知っていただくためにも、私たちはブランディングムービーを作ることに決めました。なかなか本を開く時間のない現代の生活でも、Audibleなら毎日の通勤や、家事の最中、旅先への移動中など、いろんな場面で物語や本を体験できる機会を増やせます。ムービーでは、宮沢りえさんの朗読でAudibleのもつ「声の力」を疑似体験していただき、その映像によって、Audibleで私たちの生活スタイル、そして私たち自身が変わる可能性を表現したかったのです。

映像に出てくる人たちの多くは、みんな何かしらの問題や悩みを抱えています。それは子育ての大変さであったり、仕事での挫折であったり、また失恋や孤独だったり。多くの人が生きていく中でそれぞれの問題を抱えている。でも、そんな人たちがAudibleで「雨ニモマケズ」を聴いていくうちに、小さな変化が起こり、彼らの表情に少しずつ笑顔が戻り、顔を上に向けていける。

そんなAudibleの体験や感動が伝えられればと思って、ブランディングムービーを作りました。

このCMを見た人にどのような気持ちになってほしいと思っていますか?

― Audibleが提供する「声」の力、「声」でしか届けられない感動が多くの人に伝わればと思っています。その感動は読書とも、演劇とも、音楽とも違います。そんなとても独特で新しい文化を、皆さんと共有したいという気持ちがあります。日本でもこの文化が人々の生活に根付いて、「声」でしか伝わらないものがあるよね、と多くの人が感じてくれるようになれば、とても嬉しいです。

LGBTを登場させた理由について

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それでは、CMにゲイカップル、そしてポスターにレズビアンカップルのような女子高生2人を起用した理由を教えてください。

― 私たちが考えるAudibleというサービスのコンセプトやブランディングから、制作サイドが作成してくれたブランディングムービーの絵コンテはとても素晴らしいものでした。ですが、登場人物がたくさんいるにもかかわらず、「何かが足りない」、そう私たちは感じたのです。それが何なのかを考えていくうちに、高齢者、そしてLGBTが入っていないことに気づきました。そこで豆腐屋のおじいさんと、ゲイのカップルを登場させることを決めたのです。またポスターでも、レズビアンともとれるような雰囲気を持った2人の女子高生を扱うことにしました。

日本のLGBTに対する取り組みや見方は大きく次の段階へ進もうとしているように感じています。たとえば現在テレビドラマでも「偽装の夫婦」や、「トランジットガールズ」などLGBTをテーマとして扱ったものが2つも放送されています。しかしかつてのように単に物珍しい要素としてLGBTを扱うのではなく、ドラマはそれぞれ、その奥にある人間としての愛や友情、そしてストレートの若者と変わらない普通の甘酸っぱい青春の恋愛の喜びや苦悩を描こうとしているように思います。

そのように時代の流れが変わってきている中で、私たちがAudibleという新しい文化を打ち出すときに、LGBTを自らのブランディングに含めることはとても自然なことだと思いましたし、同時にAudible、そしてAmazon Japanがどんな企業であろうとしているかを世の中に示すものでもあると思います。

CMにゲイカップルを起用することについて、社内ではどのような反応がありましたか?

― Amazon Japanは、「ダイバーシティ構想」を掲げています。

ムービーや広告でLGBTを扱うことについては、意図しない表現とならないように、制作サイドとチームで何度も話し合いを持ちました。そして短いシーンですが、とても自然な形でゲイのカップルを登場させることができたと思っています。社内で「LGBTを起用するのをやめよう」などといったネガティブな反応を見せた人は一人もいませんでした。

Amazon Japanでは社内で半年に一度、全社員会議があります。そこで新しい事業部としてAudibleの紹介があり、全社員の前で初めてブランディングムービーが流されました。2分間のムービーが終わると、私たちも驚くほどの大きな拍手が起こり、「素晴らしい!」といった声がたくさん聞こえました。会議が終わったあとにも、いろんな人に「本当にクールだった」「感動した」という声をかけてもらいました。そのときは本当に嬉しかったですね。

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『雨ニモマケズ』の「南に死にそうな人あれば 行ってこわがらなくてもいいといい」の部分にゲイカップルの画を合わせた理由を教えてください。

― このムービーは、「雨ニモマケズ」の詩に即しながら、様々な人々や場面が入るように作られています。

これはゲイに限ったことではないですが、私たちが生活していくうえで「恐れ」というものはいろんな場面にあると思うのです。宮沢賢治が書いている「死」への恐れ、知らない「他者」への恐れ、まだ分からない「未来」への恐れ、そして「愛すること」への恐れ。でも多くの場合、恐れというものは単に「それを知らない」あるいは「分からない」という理由から来ている場合が多いと思うのです。

マイノリティであるLGBTの人々にとって、その存在を無視する社会は「恐れ」であったと思います。しかし、その存在を身近に感じられなかった人々にとっても、LGBTという存在は一つの「恐れ」であったのかもしれないと思うのです。でも先ほどお話ししたように現在、様々な人たちがゲイやレズビアンというものをとても自然な形でドラマや作品に取り入れ始めています。それはもしかしたら少しずつ、人々にとってLGBTが知らない存在ではなくなってきているということなのかもしれません。

ですから、怖がらなくていいという言葉は、ゲイカップル自身と、そしてそれを見ている多くのストレートの人々に同時に向けられています。

お互いにもう恐れる必要はないのではないか。そういう意味で、「こわがらなくていい」という言葉にゲイカップルのシーンを合わせました。

Amazonの今後の取組みについて

最後に、Amazon Japan、あるいはAudible事業部として今後、どのようにLGBTに力を入れていきたいと考えていますか?

― Amazonは米国ではLGBTフレンドリーな企業として評価されています。先ほどもお話ししたように、日本においてもAmazon Japanはダイバーシティに力を入れています。ダイバーシティはLGBTに限ったことではありませんが、企業としてダイバーシティ構想を掲げることで、社内の人間がより良い環境で働けることにつながっていると感じています。

また、社内環境だけではなく、Amazon Japanという企業がLGBTを含めたダイバーシティを推し進めることによって、ほかの日本企業、そして日本社会全体にもいい影響を与えていければと思います。Audible事業部としても、そこに貢献していきたいと思っています。

インタビューを終えて

企業として、LGBTについてのお話をしてくださったAmazon Japan。インタビューでは、CMでのゲイカップルの登場するシーン「こわがらなくてもいいといい」という言葉が、ゲイカップルだけでなく、その映像を見る多くのストレートの人たちにも向けられたものである、というところがとても印象的でした。「ダイバーシティ構想」を掲げているAmazon Japanの今後の取り組みにもぜひ注目していきたいですね!