世界のスポーツ放送業界に訪れた避けられない大きな変化

消費者の習慣を変え、急成長を遂げているテクノロジーは、従来の放送局に新たなチャレンジを提示する一方、ライツホルダーに豊富なチャンスを提供しようとしています。
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消費者の習慣を変え、急成長を遂げているテクノロジーは従来の放送局に、新たなチャレンジを提示する一方、ライツホルダーに豊富なチャンスを提供しようとしています。

ご存知のようにTVや新聞など、既存のメディアは新たな局面を迎えており、これを今後どう利用するかが求められています。

視聴者や読者はインターネットなどにより多様化し、プラットフォームもすでに乱立状態にあります。このように消費者の行動が変化しているにもかかわらず、多くのスポーツでは、なおもテレビの放映権に収入源を頼っています。

確かにレピュコムの調査でも、78%の人がスポーツを"消費"する主な方法にテレビを挙げていますが、インターネットやモバイル、SNSでのアクティビティが活発なのは明白で、「第2のスクリーン」である、複数のデバイスを使うことが当たり前になりつつあります。

◆スポーツ関連の情報収集にはどのメディアを活用していますか?

  • テレビ:78%
  • インターネット:66%
  • 新聞:51%
  • モバイル(アプリ含む):49%
  • SNS:49%
  • ラジオ:44%
  • 雑誌:34%
  • メルマガ:30%

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◆テレビでのスポーツ観戦中に行っていることは?

  • インターネット:62%
  • 電話で誰かと話す:53%
  • SNSを使用:47%
  • アプリを使用:47%
  • メールチェック、メールを書く:47%
  • ネットゲームかモバイルでゲーム:37%

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【複雑化する放送コンテンツ】

インターネットが出現して以来、世界ではこの数十年のうちにオンラインストリーミングが大幅に増加しました。通信会社やインターネットを専門に事業を展開する会社、出版社といった新しい"プレーヤー(企業)"がスポーツ市場に参入しています。

従来の放送局やスポーツ関連のライツホルダーも、現代の消費者の習慣に対応することが求められています。あらゆるデバイスを使って、いつでもどこでも視聴ができることは不可欠になっているのです。

どのスポーツでも競争は激化し、マーケットは複雑化している上に、成長の度合いやデジタルへの傾倒度にはばらつきがあります。この傾向はスポーツだけでなくエンターテイメントやメディア界全てで起こっており、今後はさらに細分化され、企業は大きな変革を求められることになるでしょう。

【"プレイヤー"は誰か?】

コンテンツを届ける方法が増えるに従って、消費者にコンテンツを届ける"プレイヤー"も増加しました。オンラインストリーミングの増加により、新しい"プレイヤー"がスポーツ市場に参入しています。

◆従来の放送局

ほとんどの局が放映権に収入源を頼っています。「Discovery」(Eurosportを所有)など、多くは既存のコンテンツを拡大したり、大きなイベントの放映権を手にしています。例えば、「Eurosport」は2018年からのオリンピックで、欧州の大部分で放送される権利を保有しています。

◆新規参入の放送局

次々とチャンネルを立ち上げていますが、求めているのは目玉となるコンテンツの放送権です。イギリスなら2013年に始まった「BT Sport」はプレミアリーグ中継を柱に始動。「FOX」や「NBC」はここ数年のうちに、24時間スポーツを放送するチャンネルを加えています。ロシアでも同様の動き(24時間のスポーツ放送)が11月に起きています。

カタールの「beIN Sports」のような放送局では、有料テレビ放送やペイパービューのようなシステムが確立しています。他にも多くの放送局が、スポーツ放送を軸にストリーミング配信で成功していますが、その多くがあらゆるプラットフォームを今後もまとめて抱えています。

◆モバイル通信会社

自分たちのブロードバンドや電話サービスなどを支えるコンテンツを求めていますが、目玉となるスポーツを主軸に据えたいという傾向が増しています。

◆IT・デジタル企業

イギリスの「Perform」をはじめ、中国の「LeTV」や「Tencent」など多岐にわたるインターネットを専門に事業を展開する会社は、目玉となるスポーツの放映権獲得に成功。「Perform」はドイツで向こう3年間のプレミアリーグ放映権を獲得し、2月には「FIBA」(国際バスケットボール連盟)と17年契約を結びました。

中国では「NBA」が「LeTV」と放送契約を結び、昨10月には「Yahoo!」がロンドンのウェンブリースタジアムで「NFL」の試合中継をする権利を取得したことも話題になっています。

◆ライツホルダー

既存のコンテンツを拡張したサービスを提供しています。例えば、「MLBAM」「NFL Gamepass」「PGA Tour Live」など。「IOC」(国際オリンピック委員会)も、2016年のうちに独自のオリンピック専門チャンネルを立ち上げようとしています。

また、「Red Bull」や「GoPro」はオンラインチャンネルを作っていますし、エンターテイメント界ではキム・カーダシアンとカニエ・ウエスト夫妻が、「Whalerock」のような専門会社とパートナー契約を結んでウェブチャンネルを立ち上げています。

◆ユーザー作成型

テクノロジーの発展で、誰もが「Vine」や「Priscope」「Meerkat」などのモバイル動画サイトを通じて放送する側になれるようになりました。スポーツ界では、ライツホルダーやブランドが、そうしたコンテンツをオンラインでシェアするのに最適な方法を取るルールが設けられていますが、いくらかのケースで既存の放送権を侵す懸念があります。